2/4、産経新聞は「安倍晋三首相、文在寅大統領に五輪後の米韓軍事演習の実施要求へ 9日の日韓首脳会談」という記事を掲載した。記事の中には、
安倍晋三首相が9日に韓国・平昌で行う文在寅(ムンジェイン)大統領との首脳会談で、核・ミサイルによる挑発行動を続ける北朝鮮に圧力をかけるため、3月中旬に平昌パラリンピックが閉会した後に速やかに米韓合同軍事演習を実施するよう求めることが3日、分かった。
という記述がある。しかし安倍首相がこれについて具体的にコメントしたような内容も書かれていないし、政府関係者がそのような話を示したというような記述も一切ない。記事の内容が間違っている証拠もないので、誤報とは言わないが、内容を裏付けるような要素は記事の中には全く書かれておらず、何を根拠に、若しくはどうしてその話が判明したのかに関する記述がないのだから、話半分ぐらいで受け止めておかないと、足元をすくわれるような記事のようにも感じられる。それとも特定秘密に該当する恐れか何かがあり、”分かった”理由は書けないということなのだろうか。
記事の内容が適当かに関する疑問は、日本の首相が米韓合同軍事演習の実施を要求するのが適切とは思えない、という視点からも感じる。首相は現在、本人は認めないだろうが、憲法改正、特に9条への自衛隊明記にかなり躍起になっており、実現の為には細心の注意を払わなければならない時期でもあるし、それに関してマイナスに働く恐れもあるような発言を本当にするのだろうか。2015年に成立させ、翌年施行するに至った集団的自衛権を一部容認する安全保障関連法案によって、他国の軍隊との連携は確実にしやすい状況が作られてはいるし、米軍や韓国軍など、他国の軍隊と自衛隊の合同演習・訓練などは実際に行われているが、自衛隊が参加しない他国の軍事演習を、”要求”すると発言すれば、それなりの反発を招くことは、流石に首相や政府も認識しているのではないだろうか。
”米韓軍事演習を(消極的に、というスタンスで)支持”ならまだ分かるが、”要求”と表現できるような発言をするとは思えない。この記事を書いた記者の願望、若しくは誇張でしかないのではないか?と想像する。というか、そうであって欲しい。日本の首相には他国の軍事訓練を称賛するだとか、軍事的な活動を要求するなんてことをして欲しくない。何故なら、日本では憲法で武力による威嚇が禁じられているが、そんな発言をするなら、間接的にではあるが、武力による威嚇を行っているようにも思えるからだ。自衛隊の演習や活動だって、場合・程度によっては武力による威嚇なのか、正当な防衛活動の一環なのか明確な線引きが出来ない側面もあるのに、他国の軍や軍事的活動に口を出すようなことは確実に避けて欲しい。それは9条改憲を強く訴える指導者として最低限の態度ではないだろうか。
産経新聞の記事によれば、8日までに行われる予定のペンス米副大統領との会談で演習の実施に関して意見交換し、9日に予定されている日韓首脳会談で、米韓合同軍事演習の実施を要求するそうだから、記事内容が適切な認識かどうかは、9日、遅くとも10日になれば明白になる。