3/2に朝日新聞が報じた森友学園問題に関する決裁文書改ざん疑惑について、今日・3/12、財務省は改ざん前の文書を公表し疑惑でなく事実だったと認めた。3/10の投稿でも書いたが、この件に関して当時の財務省理財局長・佐川氏が現在の職務・国税庁長官を、国会を騒がせた・公文書管理に様々な指摘を受けたなどとして辞任している。現在複数のメディアによって伝えられている情報では、
- 改ざんを主体的に行ったのは当時の理財局長である佐川氏
- 佐川氏の国会答弁との整合性をとる為に改ざんが行われた
という見解が、財務省や大臣によって示されているようだ。個人的には、何とも不細工なシナリオで、政権・特に財務省の長である麻生大臣、又は政権全体に及ぶ影響を最小限にしようと画策しているのが見え見えで、何とも無様だと感じる。この個人的な見解には憶測による部分もあり、政権の積極的支持者からしたら侮辱にも見えるかもしれない。しかし、前述のような財務省・政府の見解がそう思わせる理由でもある。
注目するべきは、昨年2月に行われた佐川氏の国会答弁との整合性を保つ為に改ざんが行われたとする点だ。これは恐らく、改ざんを主体的に行ったのは佐川氏で、財務大臣や首相ら政権の関与についての疑惑を極力薄くしたい意図があるのだろう。しかし、ここで思い出して欲しいのは、昨年2月に明らかになった南スーダンの日報の隠蔽工作が自衛隊内で起こっていた件だ。
この隠蔽工作が起きる前、ジャーナリストによって開示請求のあった日報について、「既に破棄している為開示できない」という省内調査結果に基づく防衛大臣の答弁があり、この時隠蔽が画策された理由も答弁との整合性を保つ為とされていたように記憶している。大臣のその答弁の後、再調査によって日報のデジタルコピーの存在が自衛隊内で発覚したが、「答弁と食い違うのはまずい」などとして、自衛隊の制服組幹部の指示で隠蔽が検討されたという話だった。この件が発覚した際も政府は、防衛大臣は自分のあずかり知らぬところで起きた件として、制服組幹部の辞職解決を図っていた。もしかしたら本当にそうなのかもしれないが、そうだとしても、大臣の管理能力に問題があるということには変わりない。それは今回の財務省・財務大臣にしても同じことだ。
今回の財務省の事案については、整合性を図る為に改ざんが必要となった答弁を行ったのは財務大臣ではなく、当時の理財局長だが、財務大臣や首相は当時財務大臣の答弁を「よくやっている」などとして高く評価していたし、その後も国税庁長官へと出世させ、今でもまだその人事は「適材適所だった」と言い張っている。このようなことを勘案すると、答弁を行ったのは理財局長だが、理財局長の地位・名誉を保つ為の改ざんというより、その理財局長を高く評価していた財務大臣や首相の名誉を汚さない為に改ざんが行われたのではないかとも推測できる。確かに、この1件だけなら「そんなことはない」と言われても「そうなのかもしれない」と考える余地もあるだろうが、同時期に同じような公文書についての不適切な処理があったことを考えると、昨年の流行語にもなった政権への”忖度”があったから、不適切な処理が行われたという話の方の説得力が強くなる。
こんな状況では財務大臣の監督責任は限定的とは到底言えないと自分は思う。というか、稲田前防衛大臣が前述の件で最終的に辞任していることを考えると、担当省庁を監督する能力のない人物を任命している責任も問われるような事態でさえあるのではないだろうか。
政権の積極支持者らは「籠池という詐欺師に騙された政権こそ被害者」というような見解を強く主張する。確かにそのような側面も確実にある。しかし、なぜそれを政権が意固地になって隠そう隠そうとするのか、という視点が全く欠落している。騙された”だけ”なら、何をどう騙されたのかを積極的に明らかにすればよいだけで、何も隠そうとする必要はないのではないだろうか。被害者が被害を隠すことに合理性があるだろうか。理財局長が存在する文書を「ない」と言う必要もないだろうし、公文書偽造という犯罪行為になる改ざんなんて危ない橋を渡る必要なんて更にない。
しかも改ざんされた内容に関して、文書に書かれていた政治家の名前や首相夫人の名前、首相夫人の発言内容など、理財局長の答弁とは直接的に関係のなさそうな部分にまで及んでいるのだから、”騙されただけ”なんて話もおかしいし、佐川氏の答弁との整合性を図る為という話も不自然だ。
菅官房長官はこの件について、3/12午後の会見で、文書全体の内容については殆ど変わっておらず、「改ざん」ではなく「書き換え」であるという見解を示したそうだ。1項目全てだったり、約1ページ分以上に及ぶ文言が削除されていたり、記載のあった「本件の特殊性」という文言が全て削除されていたり、記述のあった政治家や首相夫人の名称などがごっそり削除されているのに「(内容は)ほとんど変わっていない」という見解を記者会見で堂々と示せる者が、官房長官というかなり重要な職を担っているのかと思うと、残念というか、最早強い憤りを感じる。これでは3/9の投稿で指摘した桜林さんと大差ない、自分が属する政権の責任逃れに偏った見解であると言わざるを得ない。というかそもそも書き換えだろうが改ざんだろうが、公文書の改変が許されるはずもなく、何の為にこんなすっとっぼけた見解を示しているのか、不可解ですらある。
3/12の夕方に首相はこの件に関して会見を行い「行政全体の信頼を揺るがしかねない」などと述べていたが、こんな状況になっても尚、彼はどこか他人事であるように見えた。ハッキリ言って、揺るがし”かねない”ではなく、公文書の改ざんが発覚した時点で既に信頼は揺らいでいる。
昨年国会での答弁で「私や妻が関わっていれば、首相も国会議員も辞める」と言っていしまったことも、自分は関係ないという姿勢を示さざるを得ない理由の一つだろう。そして政権存続の為にその影響を最小限に抑えたいという意図でそのような態度になっているのだろう。改ざんされた文書から首相夫人の名前や発言内容も消されているようで、率直に考えれば、首相夫人の関わりを隠そうという意図があるように思え、彼らを始めとした政権関係者の関与があった疑いは一層強まっている。
また、首相は国会審議の中で、籠池氏の発言に関する質問に対して、「籠池さんは詐欺師のような人」などとして発言に信憑性があるとは言えないという旨の答弁をしている。ということは、今回公文書改ざんに手を染めた財務省の提出する文書全般、省を束ねる財務大臣の発言、その大臣を任命した首相自身の発言の信憑性もあるとは言えないということになりそうだ。流石にそれは言い過ぎだとしても、公文書の改ざんを行ったことが明確になり、しかも昨年調査結果を発表した会計検査院にも改ざん後の書類を提出していた財務省が、今後どんな調査結果を示そうが、その結果だって改ざんされた文書によるもの・若しくは恣意的に解釈している恐れがあると疑われても仕方がない。
要するに財務省全体、というか、日報問題の防衛省、内部文書を隠匿しようとした文科省、いい加減なデータを抜け抜けと政策の根拠に提示していた厚労省などを勘案すれば、財務省全体どころか行政機関全般にとてつもなく大きな不信感が出来てしまっている、そんな深刻な状況になっていることを首相や官房長官・財務大臣らは本当に理解しているのだろうか。
彼らも自身の過去の発言との整合性を図る為に、嘘をついているなんてことがなければいいな、と思ってしまう。