3/1、ツイッターに新たな機能・ブックマークが追加された(engadget japanの記事)。新機能は一言で言えば、気になったツイートを後で探しやすくする為の機能で、他のサービスでは「後で読む」機能と呼ばれたりもしている。これまで利用者の一部には、いいね機能でこれを代用していた者もいた。しかし、気になったツイートと「いいね」と感じるツイートが完全に合致するとは限らないので、そのような使い方をすると、「いいね」と思っていないのに「いいね」しなければならないという矛盾した状況になってしまうし、自分が「いいね」したツイートは、クローズドなアカウントでない限り利用者全てに公開される形式の為、「いいね」をブックマーク的に使用すると、自分が賛同しないツイートなのに他人から見ると、まるで賛同しているように見えてしまうという弊害があった。
前述のような「いいね」機能の使用法をしていた人の中に、MXテレビ・モーニングCROSSでMCを務める堀潤さんがいる。彼はこの機能の公開を受けて、次のようにツイートし、
ブックマーク機能助かります。今まで番組で色々な意見を紹介する際に賛同するか否かに関わらず、メモがわりにいいねを押してストックしたので。ブックマーク機能助かります。今まで番組で色々な意見を紹介する際に賛同するか否かに関わらず、メモがわりにいいねを押してストックしたので。 https://t.co/Jtw7Jb4v5P— 堀 潤 JUN HORI (@8bit_HORIJUN) 2018年3月1日
機能追加を喜んでいた。しかし、このツイートにもリプライを付けたように、彼をフォローしている自分は、堀さんには、ブックマーク機能に移行せずこれからも賛同しないツイートにも「いいね」を付けて欲しいと感じた。ここからは、前述のような「いいね」の利用法をメモいいねと表現することにする。
SNSに限らずネット全般に関して、他のメディアよりも利用者が好む情報以外の情報に触れる機会が少なくなる懸念が指摘されている。SNSは元来自分が興味を抱く人を選んで繋がるサービスだし、気に入らない発信をする人を遮断する為のブロック機能も充実している。更に、ネット広告やGoogleニュースなど、検索履歴などにより利用者が興味を持っていそうな情報を選別して表示する仕組みも多く構築されている。大手通販サイトのおすすめ商品なども似たような仕組みだ。テレビや新聞なども、放送局や新聞社などによってそれぞれ傾向が違い、取り上げる情報・伝え方などで利用者は情報取得先を選ぶだろう。しかしネットではその傾向が、更に強く偏りがちである恐れがあるということだ。これを一般的に”フィルターバブル”と呼んでいる。
自分がなぜ堀潤さんにメモいいねを続けて欲しいのかと言えば、自分がフィルターバブルによって見落としているかもしれない、自分の意見とは異なる主張に触れる機会としてとても意義があると感じるからだ。前述の堀潤さんのツイートに次のようなリプライがある。
「え、これに堀さんがいいねしてるの!?」と思うことが多々ありました。「え、これに堀さんがいいねしてるの!?」と思うことが多々ありました。— ももきり (@yoko_n_s) 2018年3月1日
確かに、自分も堀潤さんをフォローし始めた頃は「え?堀潤はテレビじではあんなに中立の大事さを語っているのに、こんな偏ってるっぽいツイートを”いいね”しちゃうの?」と感じたこともあった。しかしそう時間はかからずに、堀さんの「いいね」は必ずしも額面通りの「いいね」という意味ではないことに気付けた。彼自身が今回ツイートしたような、彼の、自分が賛同できない主張にも目を向ける姿勢は、彼が番組の中などで語る中立な観点に基づく考え方なんだと感じた。それは自分も見習わなくてはならないとも感じた。
「だったら”いいね”ではない、例えば”ヤダね”のような機能があればいいのでは?、若しくは賛同出来ないツイートには”いいね”でなく引用ツイートで『ヤダねしました』とコメントを添えればいいのでは?」と考える人もいるかもしれない。確かにYoutubeは親指を下に向けた低評価機能を実装しているし、Facebookも絵文字で低評価・嫌悪感などを表明する機能を実装している。しかしそのようなネガティブな意思表示はタイムラインには表示され難くなっているので、他人に向けて自分と異なる主張を紹介する為にはあまり機能しない。「ヤダねしました」というコメントで引用ツイートするという方法なら、その為には機能するだろうが、必要以上にネガティブな意思表示をすることにもなりかねず、不要に軋轢を生みかねないとも思う。
「ヤダねしました」という短いコメントも、事細かに詳しく反論することも、どちらも反対の意思表示には変わりない。しかし、何がおかしいとかどこが不適当かを指摘することを怠っているとも言える「ヤダねしました」は、場合によっては誹謗中傷的に受け止められかねないし、個人的には「バーカ、バーカw」と言われるのと同じように感じてしまうかもしれないとも想像する。要するに、顔が見えないコミュニケーションが主流であるネットで、そのようなネガティブな意思表示を安易に・不用意に行うこと、若しくはそんな機能を実装することはあまり好ましいとも思えない。全ての異なる意見・不適切だと感じる主張に対して、自分の意見を事細かに説明している時間も余裕も多くの人は持てないだろうから、結果的に、堀潤さんには今後もメモいいねを継続して欲しいという結論に至る。
モーニングCROSSにちょくちょくコメンテーターとして出演する古谷経衡さんも、メモいいねをたまにしているように自分は感じている。あくまで自分の想像だが、彼の場合は、自分が賛同しないツイートに対して、多くの場合、反論を付けた引用ツイートをしているようだが、稀にメモいいね的に、恐らく反論するのさえ勿体無いと感じられるような、ツイッターの規約に違反している懸念さえあるツイートにいいねをすることがある。彼をフォローしている自分のタイムラインにはそんなツイートが、「古谷経衡さんが”いいね”しました」として表示されることがあり、堀さんの時と同様に当初は嫌悪感を、いいねした古谷さんにも抱いていたが、これも堀さん同様すぐに古谷さんがそんなツイートに賛同しているはずはないと確信出来るようになり、「これは、多くの人に自らの判断で、必要であると感じたら不適切なツイートとして運営に報告し欲しいという、古谷さんのメッセージなんだ」と勝手に解釈するようになった。
古谷さんは保守タカ派を自認する人物で、自分とは考え方が異なる部分も多い。保守と自称している事だけに注目する短絡的な人の中には、彼をネトウヨ扱いするような者もいる。しかし実際には彼のアカウントをフォローして眺めていれば分かるように、差別感情や偏見を撒き散らすような人達には完全にノーを突き付ける立場で、所謂ネトウヨとは異なる姿勢であることがよく分かる。確かにたまに「いや、ちょっと言い過ぎでしょ?」とか「極端でしょ」と言いたくなるようなツイートをしているのも見かけるが、完璧な人間など存在しないし、明らかに差別的で言語道断とまでは言えない範囲だ。しかしそんな彼のキャラクター性を考えれば、彼のメモいいねは堀潤さんのメモいいねより誤解を受ける恐れが高いような気もする。
ツイッターで明らかに不適切なツイートを見かけた際には複数の対応があるだろう。返信ツイートでストーカー的に個人攻撃のようなこと受けているなら、それから心理的に逃れる為に当該アカウントをブロックできる。しかし、個人的にはブロックはその場しのぎにしかならないと考える。以前は、ツイッターの運営はそのようなツイートへの対応に消極的で、ブロックする以外に有効な対処法がないとも言えるような状況だったが、昨今ヘイトスピーチに対する批判の高まりを受けて、運営側も積極的な対処をするように変わってきているし、また、差別・偏見・誹謗中傷にあたるツイートに関して、ツイートした本人だけでなく、リツイートして拡散するのに加担した者にも責任が問われるような司法の判断も下されている。要するに以前に比べれば、適切な主張であれば、不適切なツイートが不適切だと認められやすくなっている。
ということは、不適切なツイートを見かけた際に最も有効な対応は、相手のアカウントをブロックすることではなく、まず運営にそれを報告することだと言えそうだ。問題性のあるツイートをする者は、ブロックして目を背けたところで問題のあるツイートをし続けるだろう。そのようなツイートが続けば、影響される者も現れるだろうし、SNSの特性上、そのような志向を持っている者が少数であっても、彼らがお互いを見つけ合うことで、同士を得たと感じて更に増長する恐れもある。そうなれば差別・偏見の被害を受ける者は更に増えるかもしれない。果たして、そんなことにもなりかねないスルーは適切と言えるだろうか。自分にはそう思えない。報告する方が確実に有効で、同じ問題性を懸念する報告の数が多ければ、更に有効性は高まると考える。勿論ブロック機能の利用を全面的に否定するつもりはない。前述のように心理的に疲弊させられていれば、緊急避難的な対処は確実に必要であることも間違いない。
自分は昨年末、ブロック機能で実現できるような、スルースキルの有効性についての疑問に関する投稿をいくつか書いた。そのような観点からも、古谷さんにも、堀さん同様今後もメモいいね的な「いいね」機能の利用を続けて欲しいと感じる。