先週、朝日新聞が森友学園問題に関する財務省の文書について、昨年国会に提出された時点のものと原本に異なる部分があり、改ざんされていた恐れがあると報じ、大きな波紋を呼んでいる。国会でも野党らが追及しているが、これまで政府・財務省側は、森友学園の国有地売却問題に関して大阪地検による捜査が行われていることなどを理由に、改ざんがあったかどうかについて答えず、明確な否定をしていない。勿論捜査への影響への懸念も理解は出来るし、省内での明確な調査がまだ出来ていないということもあるのだろう。しかし率直に言って、「改ざんされた恐れはない」と言いきれない時点で既に情けない状況だ。現在原本は大阪地検にあるという話だが、文書の作成と昨年の国会提出に関わった職員に対して、財務省内で独自に聞き取りを行えば改ざんがあったかどうかはすぐわかるのではないだろうか。
確かに、職員に聞き取りをしたところで、誰かが嘘をつく恐れはあり、最終的には国会に提出された文書と原本を突き合わせなければならないだろうが、それでも聞き取りを行えば、ひとまず財務省の聞き取り調査の結果としての発表は出来るだろう。大阪地検の捜査を理由にそれすらしないという態度は、全く不合理とは言えないかもしれないが、改ざんが行われたという疑いを強く否定できない・したくないということの裏返しにも思える。今日午前、「省内で聞き取り調査を行う」という方針を示したそうだが、そんな無意味な発表などしていないで、既に追及を受けているのだし、濡れ衣を着せられていると感じているなら今週明け早々に自発的に調査し、さっさと結果を示すべきだったのではないか。対応が後手後手だし、何より今日の発表でも調査結果を公表する時期の見通しにすら触れておらず、何らかの思惑の下で、のらりくらりと時間稼ぎをしているようにすら感じられる。
現政権下では、南スーダンの日報、官房長官が怪文書みたいなものと切り捨て、文科大臣が存在しないとした森友問題関連の文科省内の内部文書、佐川元理財局長が破棄しており既にないと国会で述べていた森友学園問題に関する記録など、ないとしたものが後から出てくる事態が繰り返されている。しかも、首相は昨年来「李下に冠を正さず」とか「真摯で丁寧な説明をする」などと言っているのにだ。もしこれらの不祥事がどれも故意による結果でなかったとしても、これだけ続けば、誰が見ても李下に冠を正しまくっているように見えるだろう。確かに、現時点では朝日新聞は記事の根拠になっている異なる文書を提示しているわけではないので、朝日新聞の報道が絶対的に事実に即していると断定できない。しかしそれでも、繰り返されている政府の不誠実な態度、言っていることとやっていることの不一致を考慮すれば、この問題に関して、例えば今後政府が「改ざんはなかった」と明言したところで、またいい加減なことを言っているんじゃないか?という気持ちになってしまうだろう。
個人的に残念なのは、与党もそうだが、それ以上に野党だ。こんなに不祥事が続いているのに、それでも現政権の支持率が50%程度を維持しているというのは、野党への評価が現政権以上に低いということでもある。ネット上での与党積極支持者であろう者の主張を見ていると、何があろうが現政権への支持をするであろう、最早政治と言うより「信じる者は救われる」のような感覚にも近い宗教染みた主張も多く、もしかしたら消極的支持者も含めて根本的に今の国民の多くには見る目がないと言えるかもしれない。しかし、宗教染みていたとしても、それより魅力的な教え(政治で言えば政策・理念)があれば多くの者は改宗する(支持政党を変える)だろうとも考えられる。
確かに、政府が国会で質問に対して適切に答弁しているとは自分には思えないし、だから森友問題にしても1年以上も長引いているとも言えるが、逆に言えば野党側の追及が下手だから1年以上も長引いているとも言えるかもしれない。世の中には「だらだらいつまでモリカケ言ってんだよ、飽きたし無駄」などと言う者もいるようだが、決して有耶無耶でいいような話でも、飽きたから止めていいような話でもない。長引かせている原因は、文書の提出や証人喚問に消極的な政府や与党にもある。要するにだらだらしているのは寧ろ政府側だ。
しかし、森友加計問題に限らず、南スーダン日報などに関しても、裁量労働制の拡大の根拠とされた不適切なデータの問題にしても、野党が追及に手一杯でそれ以上のことが出来ていないとも思える。政府に対する疑義追及・批判は確実に野党の役割の一つだが、それだけに専念していていいのは野党ではなくマスコミだ。その一歩先を踏み出せないから、これだけ政府・与党が酷い状態なのに、政権支持率が急落することもないし、野党の支持率が上がることもないのではないだろうか。