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昨日のニュース案件の価値順位を考える


 昨日は日米首脳会談の1日目、そして朝鮮戦争を休戦状態から終戦に向かわせることが検討されているなど、日本にも関連する国際情勢でいくつかの動きがあった。しかし、今朝のMXテレビ・モーニングCROSSによれば、全国紙各社の1面トップは軒並み”財務事務次官のセクハラ問題”だったようだ。6時台にいくつかのキー局のニュース番組を見てみたが、どの番組も日米首脳会談はそれなりに扱ってはいたものの、次官のセクハラ問題の方が大きく扱われていた印象だった。この傾向について、モーニングCROSSの放送中、画面に表示される視聴者ツイートを見ていると、相変わらず「国際的にもっと重要なことがあるのに、日本のマスコミはセクハラなんてどうしようもない問題で騒いでいてけしからん」というような見解を示す人が複数見受けられた。
 個人的にはセクハラ問題報道が過熱することによって、まだまだ責任の所在追及や実態の解明が充分でない公文書改ざんへの問題意識が薄れているように思え、似たような印象も感じる。要するに、セクハラ問題が重要ではないと言うつもりはないが、確かにセクハラ報道が過熱し過ぎているようにも思う。しかしその一方で、セクハラ問題がここまで加熱している理由は、財務省のセクハラに対する認識の低さ、福田次官の発言のいい加減さもあり、マスコミ側が過熱している側面と同時に、財務省側が火に油を注いでいる側面も確実に大きいだろう。


 国際的な情勢と比べてセクハラ問題は取るに足らない、というか、その手の人達は森友・加計問題すら、大したことない問題でマスコミや野党が政府に対して難癖をつけているというスタンスだろうから、全然そのような主張には賛同できない。森友学園問題は公文書改ざんという深刻な問題を含んでいるし、森友・加計問題のどちらも、官僚や首相秘書官など政府側の人間が国会で虚偽の発言をしていた懸念もあるような、というか加計問題に関しては首相自身の答弁も虚偽であるという疑いが浮上しており、日本の行政・国会運営に関わる重大な懸念がある問題で、大したことのない問題などとは間違っても言えない。そんな状況を考えれば、セクハラ問題に関しても、セクハラ加害者の疑いがある事務次官が理解に苦しむような発言をしたり、彼を財務大臣兼副総理大臣が擁護しようという姿勢を示しているのだから、それも”取るに足らないこと”とは言えないのではないのではないだろうか。

 確かに、日米首脳会談や朝鮮戦争の終結に向けた動きは、注目するべき大きな動きだろう。しかし朝鮮戦争の終結に向けた動きはまだまだ検討が始まったというレベルで、具体的な話はそれほど明らかにされていないようだし、日米首脳会談も2日ある内の1日目で、今朝の時点ではまだ途中経過が報告されているような状態で、それよりも昨夜大きな動きのあった財務事務次官のセクハラ問題に、メディア各社が紙面や放送時間を最も割いたのは妥当だったのではないかと考える。
 ここからはあくまで個人的な見解だが、TPPから永遠に離脱と言っていたのに、1年足らずで復帰検討を示唆してみたり、その一方であくまでも2国間交渉が重要と言ってみたり、シリアの問題はロシアに任せておけばよいと言っていたのに、その結果化学兵器が使用されるような事態になり、ロシアを激しく批判し武力行使に踏み切ったり、言うことがコロコロと変わる大統領が何を言おうが、そしてそんな大統領と、内政問題で信頼性を著しく欠いている日本の総理大臣が、何か話したところで話半分、要するに手放しで信用出来る・期待できるようなものではないのではないかという、そんな理由もあって注目度は相応なのだと感じている。大体、昨日の各社の報道によると、経済的な面でも北朝鮮問題に関しても、想像通りの話が伝えられただけで、何か意義のある話が行われたとは自分には思えない。今朝の時点の報道では、経済の問題では何一つ日本側が勝ち取れたことはなかったようだし、拉致被害者の件に米朝首脳会談で言及して欲しいという話も”最大限努力する”というような、大統領の表現しか得られなかったようだ。
 ”最大限の努力”と聞いて思い出すのは、昨年・12月に起きた米軍ヘリから窓が小学校に落下した事件を受けて、米軍は小学校上空の飛行を「最大限避ける」としたにもかかわらず、1か月かそこらで上空を飛行する必要性がありそうもないのに、小学校の上空を飛行するという事態が起きたことだ。要するに、”最大限の努力”とはその程度のことなんだろうと想像してしまう。そんな程度の発言しか引き出せなかったのだから、自分には、今回の首脳会談で大きな収穫があったとは思えない。

 そんな理由で今回の首脳会談、少なくとも会談後の声明がまだ出されていなかった今朝の段階では、財務次官のセクハラ問題に関する昨日の動きの方がニュースとしての価値はあったと自分は思う。そう感じる主な理由は、昨日の国会審議の中で財務省の矢野官房長官が、

中身がわからないことには処分に至らないのが世の常ですよ。それをこの方(被害者の女性)は、この報道が事実であれば、雑誌の中で「こんなことをされた、こんなことをされてとても不快だった」と、カギ括弧つきで書いておられますよ。であれば、その方が財務省でなく、(財務省の顧問)弁護士さんに名乗り出て、名前を伏せて仰るということが、そんなに苦痛なことなのか、という思いでありました

などと述べており、財務省はセクハラ事案に対する適切な認識が著しく欠けていることや、一昨日セクハラはしていないと意思表示した福田財務事務次官が突然辞任を発表し、それについての会見の中で、「週刊誌で報じられたセクハラ疑惑の音声は、福田次官自身のものと認めるか」という記者の問いに対して、

自分の声は自分の身体を通じて聞くので、私はずっと録音された声が自分のものかどうか、よく分からないのでそういうふうに申し上げた

と言っているにも関わらず、「自身があの録音のような発言をされた記憶はないということか」と問われると今度は、

あんなひどい会話をした記憶はない

などと発言している。また官僚は「記憶がない」で逃げるつもりかとしか思えないが、酷い会話をした記憶がないなら、公開された音声が自分のものか分からない、ではなく「自分はあんな酷い発言をした記憶はないから、音声も自分のものではない」と言えるはずだ。しかも、前日に示されたセクハラを否定する見解の中では、財務省の調査に対して、

 お店の女性と言葉遊びを楽しむようなことはある

と答えたとされている。「言葉遊びを楽しむことがある」は、当該音声データに関する調査に関して答えたのだから、誰としたかは別としても「会話をした記憶はない」という話とは矛盾するだろう。こんなに支離滅裂な事を言う人が、大臣に次ぐような地位の事務次官、しかも省庁の中で最も優秀な人材が集まると言われていた財務省の次官になっていたことはとても信じ難いし、且つ、当初大臣が「処分は考えていない」とし、結局今も処分が検討されていないのだから「大臣も含めて財務省は終わっている」としか言えない。勿論、この件だけでそう思うのではなく、佐川氏の虚偽答弁(厳密には、現状ではかなり黒に近いだろう疑惑)、そして公文書の改ざん、国有地の不適切な取引に関する口裏合わせ要求、そして彼らを任命・監督する立場の大臣が彼らを擁護していた、というか今でも”いる”こと。更にその大臣は事実と異なる内容で、新聞各社を誹謗中傷したりしていること。「大臣も含めて財務省は終わっている」と感じる理由は枚挙に暇がない。

このような状況が財務省・財務大臣にあることを考えれば、財務次官のセクハラ問題のニュースとしての価値が、同日に起こった国際情勢に関する事案と比べて低いとは到底思えない。

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