NHKの記事「東京都 従業員がいる飲食店は原則禁煙へ」によると見出しの通り、東京都は、
飲食店では従業員がいる場合、店の規模にかかわらず原則禁煙にする
条例を検討しているそうだ。一応「 規制対象の店でも喫煙専用の部屋を設けた場合は、喫煙を認めることにしていて、都は改修や整備にかかる費用の一部を補助する」という案も一緒に検討されているようだが、個人的にはやりすぎ、そこまでするならいっそ都下全面禁煙条例を作った方がよいのではないか、中途半端に厳しすぎる条例を作れば、喫煙者差別という側面も出てきてしまうと感じる。
なぜそう感じるのかと言えば、確かに店舗の運営責任者の権力が強く、従業員が本当は受動喫煙が気になっているのに言い出せないというケースも決して少なくないだろうが、例えば小さな店舗で店主と従業員1-2名などの場合、全員が喫煙者であるという場合も少なくない。それなのに一律禁止では過剰に喫煙者が喫煙する権利を制限することになりそうだ。ならば、禁煙条例が必要な理由は健康被害の深刻さ・医療費が余計にかかる問題ということだろうから、都下では禁止薬物同様にタバコの販売も喫煙も全面禁止にするべきではないのか。
国が検討している「個人か資本金5000万円以下の中小企業などが経営する客席面積100平方メートル以下の既存の店は、喫煙や分煙の表示をすれば喫煙を可能にする」という法案は、自分も規制が緩すぎるのでもう少し厳しい規制が必要であると感じる。また、都が掲げる「健康影響を受けやすいとされる子どもを受動喫煙から守る」という方針は、受動喫煙対策として最も必要な視点だと思っている。ただ、建物内以外の屋外であっても幼稚園や小中学校、高校、また病院などでは敷地内を全面禁煙にするとか、従業員がいれば即禁煙なんて規制はやりすぎだろう。過剰な喫煙者迫害に思えて仕方がない。
奈良県の生駒市役所が「喫煙後45分間、エレベーターは使えません」(リンク先はハフポストの記事)と言い出したことが先月末話題になった。喫煙者の呼気は、喫煙後45分間程度、シックハウス症候群の原因にもなっている総揮発性有機化合物(TVOC)の濃度が高まるのだそうだ。また記事ではそれと口臭・要するにタバコ臭も関連付けて紹介されている。その根拠として、大和浩・産業医科大教授提供の「喫煙者3名が入室した時、および、屋外で喫煙後すぐに再入室した時の室内のTVOC濃度のリアルタイムモニタリング」というデータが示されているのだが、どの程度の広さの部屋で測定したのかも記載されていないし、喫煙者の呼気によってTVOC濃度が上がることが、非喫煙者にどの程度の健康的な悪影響をもたらすのかについても一切記載はない。要するに「総揮発性有機化合物(TVOC)の濃度が上がることが分かりました」という話以上の、「このような実害があります」という検証結果は提示されいない。
そんな点から考えると、自分には、生駒市役所のやっていることは「タバコ吸うやつはくせぇからエレベーター乗るなよ、迷惑なんだよ」に思えてしまう。4/18の投稿でスメルハラスメントについて書き、臭いに過度な嫌悪を示すことの副作用というか、ある種の自己中心的な思考について指摘した。人によっては「単ににおいというだけでなく、タバコは副流煙などによる健康被害がある」と反論する人もいるだろうが、スメルハラスメントの問題においても、柔軟剤や芳香剤、香水などに関して化学物質過敏症の人が苦しめられているという話があり、スメルハラスメントだってにおいの問題だけでなく、健康的な被害について論じられている側面がある。ということは、生駒市役所が喫煙者に「喫煙後45分間はエレベーターに乗るな」と言うのなら、その内「柔軟剤・香水を少しでも使っている人はエレベーターに乗るな」と言い出す者が現れた時に、同様に対応しなくてはならなくなると思う。そんな過敏すぎる状況は、自分には全く好ましいとは思えない。
再確認しておくが、受動喫煙対策が今のままでいいとも思っていないし、国が今検討している方針で充分だとも思っていない。しかし、都の検討する方針や生駒市役所が決めた方針はバランスを逆方向に欠いていると自分は感じる。屋内原則禁煙にしようという動きには同意するが、だったら屋外では原則喫煙可、学校などでも喫煙所の設置は認めるぐらいに喫煙者の喫煙する権利も尊重する必要があるのではないか。でなければ喫煙者への迫害という懸念が出てきてしまうし、喫煙場所を減らせば減らす程、喫煙場所を守らない喫煙者が増え、結局受動喫煙リスクを下げることが出来ないという結果にもなりかねない。
どうもこのような極端な動きは、迫害することで排除しようという、民族差別的にも似たような印象を自分は感じてしまう。本当に喫煙者も含めた健康被害を強く懸念しているのなら、タバコの販売も喫煙自体も全面禁止にしたらよいと思う。例えば、シンガポールは美化活動の為にチューインガムの販売も持ち込みも禁止だそうだから、他国がそのような施策を行っていなくても、強い信念があるなら日本が、若しくは都が最初の例になればよいのではないか。