財務事務次官セクハラ案件について、セクハラ自体が問題なのは当然のことだが、その後の財務省・財務大臣が、被害者は名乗り出てて自分たちの顧問弁護士に話をしろ、と言い出したことの方がセクハラ自体よりも深刻な事だと自分は思っている。このような対応に対して批判が高まっても尚、そのような姿勢を示した財務大臣や官房長は「対応が不適切だった」とは積極的に認めず明確な謝罪もしていないし、どう見ても有耶無耶にしようとしているようにしか思えない。
更に悪い事に与党議員の、財務省・財務大臣に負けるとも劣らないような、セクハラに対する正しい認識を欠いた発言が相次いだ。まず長尾敬衆院議員が、セクハラ事案そのものや財務省の対応に抗議の姿勢を示した、主に女性の野党議員らを自身のツイッターで「こちらの方々は少なくとも私にとってセクハラとは縁遠い方々です。私は皆さんに絶対セクハラはいたしませんことを宣言いたします」などと揶揄した。言い換えれば「こんなおばさんにセクハラしたいなんて思うわけないでしょ」と言っている。おばさんじゃなけりゃセクハラするのか?ということにもなるし、セクハラしたい対象ではないという表現自体が性的な揶揄に該当し、その発言こそセクハラそのものであるという批判を盛大に浴び、当該ツイートを削除し謝罪という不細工な結果に至った。(TBSニュースの記事)
また下村元文科大臣も4/22の講演会の中で「福田事務次官がとんでもない発言しているかもしれないけれども、そんなもの隠しテープでとっておいてね、そしてテレビ局の人がですね、週刊誌に売るっていうこと自体が、ハメられてますよね。ある意味で犯罪だと思うけど」などと発言したと、TBSニュースなど多くのメディアで報じられている。セクハラ被害者に対する配慮を著しく欠いた発言、というよりも寧ろ中傷するような発言だし、ではどうやって、そのとんでもない発言を問い正すべきと考えているのか理解に苦しむ。彼も結局謝罪はしているようだが、長尾議員にしろ下村元大臣にしろ、そして麻生大臣にしろ、たて続けに著しく適切な認識を欠いた発言を堂々とする議員が続出するということは、自民党の数百人いる内のたった3人の議員ではあるが、「他の議員も口にしないだけで同じ様な考えを持っているのではないか?」と疑いたくなるし、財務省・財務大臣の対応について「うみを出し切る」としか言わず、厳正な態度を示さない首相も「同じ穴の狢なのではないか?」という疑念を自分は感じてしまう。
昨日ロイターは「ロイター企業調査:安倍首相続投「望ましい」73%、安定重視」という記事を掲載した。簡単に言えばロイターによる企業への調査の結果では、安倍政権の支持率が73%だったという記事だ。新聞各社・通信社などが一般家庭・携帯電話を対象に行っている電話での調査、要するに一般人への支持率調査とは明らかにことなる、というか寧ろ全く逆と言っても過言ではないような結果だ。例えば、直近の産経とフジテレビ系の合同調査でも支持率は38%だ。
企業調査というと、日本中の企業を対象に行われた調査のように感じる人もいるかもしれないが、この調査の結果は、資本金10億円以上の中堅・大企業400社を対象に4/4-17に実施し、220社程度の回答から得た結果だ。安倍政権になってから企業の業績は好調だそうで、一部にはバブル期を超えているというデータも示されている。確かに自分もリーマンショックの影響や東日本大震災・原発事故などの影響を勘案したとしても、前民主政権よりは経済状況は良くなっているとは感じる。しかしその一方で、仕事量は多少増えたが自分の収入は殆ど増えていない。物価だけが少しずつ上がっており、労働者層の実質賃金は寧ろ減っているというデータもある。大企業の内部留保が過去最高になっているのに、その恩恵は未だに労働者まで回ってこないという視点もある。
そのような事を踏まえて考えれば、所謂中の上以上の、特に大企業などは安倍政権の経済政策の恩恵を最も受けている層であり、一般人とは違う調査結果になるのはある意味当然だろう。ただ、経済的な視点だけで政権を支持するような企業で働きたいか?と考えると自分は全然働きたくないし、安倍首相続投が望ましいと答えた企業には不信感すら覚える。確かに経済面だけで言えば、安倍政権の成果は充分とは到底いえないが、相応の評価はできる。しかし冒頭で書いたセクハラ問題への消極的、というか全く適切な認識に基づかない対応、そして働き方改革法案でいい加減なデータに基づいて”裁量労働制の拡大”を進めようとしていたこと、責任追及を逃れる為としか思えない公文書などの改ざん・隠蔽・官僚の虚偽答弁が多発し、行政機関の運営・管理能力に著しく欠けている疑いがあることは決して無視できない。無視できないどころか、一部の経済政策での評価など簡単に吹き飛ぶようなお粗末すぎる状態だ。
そんなことには目を伏せて、経済面でのメリットのみを理由に「現政権が望ましい」と主張出来るような企業は、利益偏重の空気が支配し、従業員の働く環境や女性の働きやすい環境作りよりも利益の方を重視する、要するに労働者を蔑ろにするタイプの企業なんだろうと思えてしまう。また、文書の改ざん・隠蔽への懸念よりも経済政策を理由に指示するという事であれば、その手の企業は利益の為ならデータを改ざんするような、昨年までにいくつかそのような企業が発覚したが、それらと同じ穴の狢、バレなければ問題ないという誠実さに欠ける企業だろうと想像する。虚偽の疑いがある官僚の答弁に対しても同様で、何か問題が起きてもむりくり言い訳してやり過ごせればそれでOKという判断を下すような企業姿勢なのだろうと感じてしまう。
そのような観点から、公開は勿論無理だろうが、自分はロイターの調査に首相続投が望ましいと答えた企業を是非とも知りたい。働きたくないのは当然だし、取引先にもしたくない。企業にとって利益が重要であることは当然理解しているが、それを大義名分に利益偏重を正当化し労働者を搾取したから、働き方の見直しが必要だと言われているのが今の状況でもある。にもかかわらず、政権の経済面だけしか評価しないのは、到底適切な判断とは考えられない。