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わざわざ南北首脳会談の日に…


 昨日は初めて北朝鮮の指導者が韓国との軍事境界線をまたぎ、史上三回目の南北首脳会談が行われた。今年に入って、特に平昌オリンピック以降急激な変化の中でも、ある意味では一つの山場で注目も高く、報道・特にテレビはテレビ欄を見る限り平日・日中のレギュラー番組を一部変更してこの件を伝えていたようだ。この会談については、米韓と北朝鮮がお互いに直接的にではなく、場外乱闘的に罵り合うようなこれまでの状況に比べれば、大きな変化が起きた象徴で評価すべきことかもしれないが、合意の内容に関しては不明瞭な努力目標程度にしか思えず、勿論それで当然と言えば当然なのだが、まだまだスタートラインに立ったのかも定かでないような状況だと、自分には思えた。
 そんな日の夜に、いつものようにWebでニュースをチェックしていると「前次官のセクハラ認定 財務省処分 退職金141万円減」(東京新聞)など、財務省がセクハラ問題に関する会見を開き、前次官のセクハラ行為があったという見解を示し、減給処分を行うことを決めたという案件を多くのメディアが報じていた。


 まず自分が感じたのはタイトルにも書いたように、報道の目が南北首脳会談に集中することが事前から予測されていたその裏で、わざわざ会見を行ったことへの不信感だ。
 産経新聞が掲載した会見の文字おこし、

会見詳報(1)矢野官房長「福田氏から十分な反証反論はない」事実を認定 調査は打ち切り(見やすく1ページに収まる印刷用ページ
会見詳報(2)テレ朝女性社員以外の被害は「具体性なかった」(見やすく1ページに収まる印刷用ページ

によると、福田前次官への聴取は会見前日の26日にも行われたという発言が財務省側からあり、本当に調査結果の確定から最短で記者会見を行ったら、このタイミングだったのかもしれないが、それ以前に聴取を行ったのは4/17,21だったとのことで、南北首脳会談があることを見据えて、27日に会見を開くことから逆算して26日の聴取を行った、要するに26日まで調査結果を確定させなかったのではないか?などと勘繰ってしまう。

 また、東京新聞の記事によると、会見の日の朝、麻生大臣は閣議後記者会見で「セクハラ行為は断定できない」と述べていたのに、財務省は一転して夕方にセクハラを認める会見を行ったそうだ。この内容が事実なら、麻生氏は全く他人事のようにしか考えていないことが窺える。「はめられたという人もいる」発言や、それ以前からもそうとしか思えなかったが、少なくともこの日の朝には既にセクハラ行為があったと認定する方向性は決まっていただろうから、それを知っていたなら「断定できない」なんて言えない、少なくとも「調査中」とするのが被害者への配慮なのではないだろうか。要するに、麻生大臣は調査の経過報告を逐次受けておらず、言い換えれば自ら進んで経過を聞くようなことすらせず「さっさとなんとかしろ」と言っていた、もしくは思っていたようにしか思えない。そんな彼の考えが滲み出ているように見える。これでは問題が頻発している省庁のトップの姿勢としてあまりにも残念過ぎる。というか、こんな者がG20に参加していたのか、当然他の国からの参加者の中にはそれを知っている者もいたのだろうから、自分はハッキリいって彼は日本の恥を晒しにいったんだ、とすら思え、情けないやら憤りやらネガティブな気持ちでいっぱいにさせられる。

 また、会見の詳細を知ろうと思い、産経新聞の文字おこしを読んでみると、セクハラを認定したという事実だけなら評価は出来るものの、大臣だけでなくその調査結果、財務省事務方の会見での答弁にも、残念な気持ちにさせられる部分が幾つもあった。
 まず、 「(福田氏)本人には処分を伝えたのか」という質問に対して、伊藤豊秘書課長は

伝えております。セクハラをしたということは否定しているが、処分全体、その考え方については、処分の程度も含めて承知している

と答えたようだが、財務省側は処分を受け入れたにもかかわらず行為を認めない福田氏を一体でのように思っているのだろうか。この会見では「財務省の調査でこれ以上、詳細を明らかにすることは困難」で、調査を打ち切ると明言している。自主的に辞任したから関係ない、後は個人の責任ということなのだろうか。何があったのかの厳密な調査を行いもせずに一体どうやって、矢野康治官房長が会見冒頭で示した「セクハラ・パワハラを決して許さない組織の在り方について、女性をはじめとする職員の意見を聞いて、速やかに対応を検討する」つもりなのだろう。女性職員の意見を聞くとしているが、被害者女性の声を尊重せずにおざなりな対応をした、というか、二次被害を与える加害者的な発言を国会審議の中で行った矢野氏の口からそんな話を聞いたところで、適切な対策が実現しそうだとは到底思えない。

 その、矢野氏の「被害者が名乗り出ることはそんなに苦痛なのか」発言についても、記者から「撤回する考えはあるか」と問われたようだが、彼は、

批判を頂いたと認識してます。ただ、私は答弁でそうは言っていません。財務省ではなくて弁護士、守秘義務がある弁護士、さらに名前を秘匿するという前提で聞くとした。全部申し上げて国会答弁させていただいた。『名乗り出ることが苦痛なのか』だけを聞いたら人でなしだと思われるだろうが、さすがにそこまでは言っていない。名乗り出なさいよ、といったつもりはない。それでも批判があることも分かりますので、繊細さを欠いたとすればおわび申し上げます

などと答えている。はっきり言って、やはり彼には未だに適切なセクハラ問題の理解が欠けているとしか言いようがない。 「財務省ではなく弁護士」と言っているが、その弁護士とは財務省が雇った弁護士であるという視点が欠落している。それを詰めなかった記者も記者だが、要するに矢野氏は、他人には「前後の話を無視しないで欲しい」と言っているにも関わらず、自分に都合の悪い点は無視した上で、遠回しに「自分の発言に問題はない、だから撤回するつもりもない」と言っているに等しい。このような事からも、今後財務省で充分な対策が行われるとは考え難い。

 このようなことから更に懸念するのは、セクハラ事案に限らず公文書の改ざんや不適切な国有地取引に組織的に向かったことに関しても、表向きだけ「反省してます、今後はちゃんとします」的な態度を見せているだけで、充分な再発防止策が行われないのではないかということだ。しかも、財務大臣がセクハラ問題について前述のように他人事であるようにしか思えない点も、彼が公文書改ざんやその他の不適切事案の再発防止に消極的、というか問題とすら思っていないのではないかという懸念も生まれる。

 産経新聞の文字おこしを全て読むと、他にも、財務省・財務大臣に適切な現状認識、セクハラに関する理解に著しく欠けていると感じることが幾つもある。一つ一つ指摘した方が本当はいいのかもしれないが、前述した2点だけでも彼らが勘違いしていることがよく分かるだろうし、そこから今後彼らが改善に向かうと思えるかどうかも分かるだろう。何より書いていてウンザリするのでこれだけにしておく。

 首相は昨日・一昨日の答弁の中で、いつものように殊勝な顔で反省の弁をいくつか述べていたが、彼の任命した防衛大臣の下で昨年南スーダン日報の隠蔽が発覚し、その際も再発防止云々などとしていたのに、今年になってまた隠蔽が発覚したり、森友・加計問題でも彼が信じるとか適材的所などとしてきた官僚の答弁の信憑性がほぼないことが発覚したり、しているのに、一体どうやったら彼の反省の弁を信用できるのだろう。こんな首相や副首相兼財務大臣の悪影響が財務省、というか、財務省以外の省庁、例えば厚労省、防衛省、文科省、国土交通省などにも及んでいる、もしかしたら他の省庁も、まだ発覚していないだけで似たようなことが起きているのではないか?などと思えてならない。

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