昨日は気になるニュースがいくつもあった。まず大相撲の春巡業で取組前に挨拶をしていた市長が土俵上で突然倒れ、救命処置のために土俵に上がった観客の女性が数名いたのだが、これに対して、相撲協会の行事が
女性は土俵から下りてください
というアナウンスを数回繰り返した件だ。まさに昨日の投稿で指摘した伝統に基づくルールの妄信だ。自分も相撲は神事の一つであり、伝統的に土俵の上は女人禁制とされていることは知っているが、咄嗟に駆け付けて救急処置をしている女性に「土俵から下りろ」なんて言える人の気が知れない。市長はその後病院に搬送されて意識を回復したそうだが、市長の容態がその後悪化していたら、その行事は「伝統の方が大事だから万が一があっても仕方がない」と言っていることにもなってしまっただろうし、また、市長の容態に関わらず、女性に対する差別が懸念される事態だと思う。
更にこれを受けての八角理事長のコメントも不可解だ。理事長は、「咄嗟の応急処置をしてくださった女性に深く感謝申し上げます」としたが、そのようなアナウンスがされた理由について、
行事が動転して呼びかけたものだが、人命にかかわる状況では不適切な対応でした。深くお詫び致します。
と述べたそうだ。謝罪の意思が前面に出ているように感じるので、それ程批判する必要はないのかもしれないが、個人的には「行事が動転して」云々というのは蛇足だと思う。まるで「酒に酔っていたのでやってしまった」的な、ついうっかりという印象を強く感じる。その行事に「場違いじゃないか?」と指摘するような関係者は一切いなかったようだから、相撲協会の体質と言われても仕方がない。現政権と同様に不祥事続きの相撲協会だが、こうも不祥事が続いているのを見ると、おかしな感覚・認識が蔓延しており、立て直しは厳しいんじゃないかとさえ思えてしまう。
立て直しが厳しそうなのは、現政権も同様だ。昨日は4/3の投稿で「1月という話や2月という話もあり、いつ明確に存在が確認されたのかはまだまだ不透明」と書いたイラク派遣の日報は、昨年の3月にはその存在を確認していたようで、要するに1年以上も隠蔽されていたことになる。これに関しては、当時の稲田大臣にも、現職の小野寺防衛大臣にも報告が全くされていなかったそうで、ある意味では現政権の大臣らは官僚(というか、この件については陸上自衛隊)に騙された立場でもあるだろうが、稲田氏は「徹底的に調査を行い信頼回復に努める」という姿勢を示していたのに、それを徹底出来なかった、要するに大臣として能力が根本的に欠けていたことが証明されたようなものだ。
現職の小野寺防衛大臣については、概ね彼の管理下で起きた事案ではないのだから、彼には稲田氏程の責任は無いのかもしれない。しかし、大臣らに報告がされていなかったことについて、担当部署の課長は
当時は南スーダンのPKO活動の日報を調査しており、イラク派遣の日報まで報告する必要性を認識していなかった
などと説明しているそうだ。更に小野寺氏は今日午前中の国会審議の中で、「隠蔽にあたるかどうかはこれから精査する」という旨の発言をしている。要するに小野寺氏は、意図的に隠されたのではなく不可抗力だった可能性を示唆したわけだ。
しかし、昨年の3月は、当時の稲田大臣が国会審議の中でイラク派遣時の日報について「調査の結果、見当たらなかった」という旨の発言をした後のタイミングなので、前述のような「報告の必要性があるとは思わなかった」なんて言い訳が通用するとは全く思えない。こんなのは、女性を騙して不倫を企む男性が「彼女いるんですか?」と聞かれ、「(結婚しており妻がいることを伏せて、彼女は)いないよ」と答えるようなものではないだろうか。その担当者は「国会で議論されていることを認識していなかった」などとも述べているそうだが、自衛隊員、しかも相応の部署にいる職員がそんな程度で本当に国防を任せられるかかなり心配だ。というのは勿論皮肉であまりにも不自然としか言いようがない。
昨年既に南スーダン日報が隠蔽されたことが明らかになっており、ほぼ同じ様なケースにもかかわらず、防衛大臣が「隠蔽にあたるかどうかはまだ分からない」という姿勢を示したことには強い違和感を覚える。自分には、彼も大事なのは保身を図ることだけにしか見えない。昨日は更に、イラク派遣の日報と同様に、これまで無いと説明されていた他のPKO活動など6つの海外派遣時の日報についても、見つかったと報じられているので尚更だ。
また、現在政権が抱える大問題のもう一つ、森友学園問題・財務省の公文書改ざん問題でも新たな疑惑が持ち上がった。国有地が8億円も値引きされた大量のごみについて、財務省理財局の職員が学園側に電話し「トラックを何千台も使ってごみを撤去したと言って欲しい」と口裏合わせを持ちかけていたと関係者が話し、それを裏付けるようなメールが存在していることも既に分かっているそうだ。森友学園の件については直近でも、何度も指摘しているので詳しくは説明しないが、これまで取引は適切だったと散々繰り返した理財局長を、政府首脳や財務大臣らはこれまでずっと「よくやっている」とし、国税庁長官への就任も「適材適所」と繰り返してきた。はっきり言ってそれだけで、既に官僚に騙されたのではなく、官僚と一緒になって国民を騙していたようなものだし、公文書から決して少なくない文言が削除されたにもかかわらず、未だに「改ざんではなく書き換え」なんて馬鹿げた認識を改めようとしないことなどからも、結局、彼らも重要なのは再発防止とか、再発防止策を考える為に不可欠な真相の究明ではなく、自分たちの保身で、政権維持の為にほころびを隠そう隠そう、過小評価しようとしているようにしか思えない。今の政権の下では、財務省に限らず、行政全体の立て直しは全く厳しそうだ。
このような事を踏まえた上で、昨日行われた国家公務員の合同研修での安倍首相の発言を見ていると、とても滑稽に見えてしまった。首相は、
先輩たちに負けないくらい気概を持って、これからの仕事に命一杯取り組んでほしい。国民の信頼を得、負託に応えるべく、高い倫理観のもと、細心の心持ちで仕事に臨んで欲しい。同時に行政のプロとして、日本の未来に責任を持つ高い誇りを持って、我が国の将来を大胆に構想し、批判を恐れず、大きく前に踏み出し、皆さんに挑戦して欲しい
と述べたそうだ。前半部分については「高い倫理観」なんて一体今の省庁のどこに存在しているのだろうか、とツッコミたくもなるが、それ以前に、「先輩たちに負けないくらい気概を持って」に違和感を覚える。確かに、不祥事に関与しているのは各省のごく一部の者で、大多数の官僚は問題なく、というか、寧ろ適切に職務遂行している者だろう。しかし、これほど深刻な、そしてバレなければ政府に有利に働く不祥事が頻発している状況では、「先輩に負けないくらい政府や私に忖度する気概を持て」と言っているようにも見えてしまう。
また、「批判を恐れず」という文言も同様だ。恐らく「正しいと思ったことを貫け」的な意味なのだろうが、今の状況では批判を真摯に受け止めることの方が余程重要だろう。防衛省の日報隠蔽、財務省の公文書改ざん、厚労省のいい加減なデータなどでも、批判を真摯に受け止めていないと感じる部分があるが、その最たる例が、3/16の投稿・3/20の投稿で触れた、前川・前文科事務次官が講演を行った中学校に対して、文科省が自民党の議員からの要請を受けて、高圧的な調査を行ったことに関して、未だに文科省・林文科大臣もは「問題はない」という姿勢を崩していないことだ。こんな状況下で「批判を恐れず」なんて、まるで「国民やメディアはあることないこと言うだけだから気にするな」と言っているようにも思えてしまう。
ハッキリ言って首相のスピーチへのこのような批判は、ある意味では揚げ足取り的だろうと自分も理解している。しかし、そう思えてしまう程の不祥事が頻発しているということでもある。これほど政府に有利な結果に繋がりえる隠蔽・改ざん・恣意的なデータ作成が起こっていることは紛れもない事実で、一部の人達は「政府は官僚に騙された被害者」という認識のようだが、逆に言えば、「官僚にまんまと騙される程度の能力しかない政権」ということにもなるだろう。要するに、もし政権側が積極的に不祥事に関与していなかったとしても、各省庁をコントロール出来ない大臣も大きな問題だし、それを任命した首相にもかなりの責任があると言えるだろう。特に、各問題の解消・解決に対する各大臣、官房長官、首相らの非積極的な態度を見ているとそう思えてならない。
昨年来、一体何度首相を始めとした政権・与党幹部らの「真摯な受け止め」とか「丁寧な説明」「事実の解明が必要」なんて言葉を聞いてきただろうか。その結果がこれか?と是非考えて貰いたい。