スキップしてメイン コンテンツに移動
 

短絡的な政権与党支持ありきの野党批判


 昨日は加計学園問題に関して、柳瀬元首相秘書官を参考人招致した国会審議が行われ、注目を集めていた。今朝のMXテレビ・モーニングCROSSでもこの件をトップニュースで取り上げていた。これについての視聴者ツイートの中には、

このツイートを始めとして、「拉致問題の方が重要なのに、取るに足らない加計問題を重視している」として野党側を批判するような主張が複数見られた。率直に言って、これまでにも見られた強引な論法の野党批判にしか見えない。これまでも外交安全保障などを引き合いにした「森友加計問題など些末な問題」という主張はあったが、北朝鮮に拘束されていたアメリカ人3人が昨日帰国を果たしたことを念頭に、今日は拉致問題が引き合いに出されたのだろう。

 一応言っておくと、森友問題での公文書改ざんや、森友加計両問題に関して文書が隠蔽されたり、官僚・閣僚に虚偽答弁の疑いがあることに関しては、些末な問題とは間違っても言えない。というか寧ろ、有耶無耶にすれば行政・政権への信頼を失墜させるような深刻な要素を含んでいる問題で、それは政権支持率にも表れていると言えるだろう。にもかかわらず、与党幹部や政権関係者、そして官僚らの認識の低さには辟易させられる。外交安全保障問題や拉致問題が重要ではないとは言わないが、どちらも共に重要な問題だ。
 確かに、自分も今の野党から拉致問題の解決に積極的な姿勢は一切感じないし、昨日の審議の中での、立民・蓮舫議員の「あなたの記憶は自在になくしたり思い出したりするものなのですか」、社民・福島議員の「記憶喪失が戻ったのはいつですか」のような質問は、感情的なニュアンスが強く感じられる為もっと冷静にならなければならないとも思うし、また、相応の記憶力しかないのに、仕事内容についてメモ書きすら残していないような柳瀬氏が何を言おうが、例えば万が一「昨年の国会での答弁は間違っていました」と言ったとしても、信憑性があると自分は思えないので、昨日の審議はもし参考人招致でなく証人喚問だったとしても有意義だったとは言えないのではないか?という思いもある。ただ、自分はそのように感じるので、そんな程度の記憶力しかないのに仕事内容に関するメモ書きすら残さない柳瀬氏を、首相が「彼を信じる」と言っていたことも、側近として取り立て外遊にまで同行させていることも全く理解出来ないし、それについて疑問を示さない与党の姿勢も疑問だ。
 また拉致問題に関しても、もし昨日の柳瀬氏を招致した加計学園問題に関する集中審議が開かれなかったとしても、与党側がその時間を拉致問題解決の為の審議に当てたと思うか?と問われたら、全くそうは思わない。そして、最大限の圧力で日本政府と一致していた筈のアメリカが水面下では北朝鮮と交渉を進めており、その結果として拘束者3人の帰国が実現したことを考えれば、頑なまでに「対話の為の対話では意味がない」と繰り返している首相や現政権だって、拉致問題解決に積極的とは言えないだろう。

 5/7の投稿でも触れたように野党は5/7まで審議拒否を続けていた。これを産経新聞などは「審議拒否で“17連休”の6野党」などと揶揄し、ネット上でも一部で「審議拒否なんてしていないで仕事しろ、この税金泥棒」的な批判が繰り広げられていた。しかし野党が審議を拒否していた背景には、5/8の投稿にも書いたが、 官僚による虚偽の答弁や、その辻褄を合わせる為に改ざんされた文書に基づいた議論が1年も前から続けられていたり、文書の提出要求があったにも関わらず「存在しない」などと隠蔽された上で審議が行われたり、杜撰なデータ、というか恣意的に改変を行っていた疑いもあるデータを基にした議論が行われていたり、そんな深刻な状況であるにも関わらず、政権や与党が積極的な再発防止策を講じていないと判断し、そもそも議論自体が成立する状況ではないと考えたからで、野党6党は合理的な理由もなく審議拒否している訳ではなく、与党側に適切な審議環境を積極的に実現することを求めたが、与党側が応じなかったから審議拒否に至ったのだろう。
 ただ、今回の審議拒否で相応の与党側の対応を引き出せたのか、と言えば、与党側は麻生大臣の辞任にも、柳瀬氏の証人喚問にも結局応じず、建設的な交渉手法だったとは言えない結果になったことは事実だ。

 自分がこの流れを見ていて感じたのは、北朝鮮問題、というか拉致問題解決に関しても「対話の為の対話では意味がない、必要なのは対話ではなく圧力だ」と言い続ける現政権は、なぜ審議拒否を続けていた野党同様の批判を受けないのか、ということだ。野党6党は、与党側そして麻生大臣の対応・発言などに不信感を抱き、審議という対話ではなく、審議拒否という圧力を重視した対応を選んで批判を浴び、更に自分たちの要求も通せなかったという結果を招いた。現政権も北朝鮮問題・拉致問題に関して「これまで何度も騙されてきた」と不信感を前面に押し出して、「必要なのは対話ではなく圧力だ」と言い続けている結果、現状では拉致被害者の帰国実現には到達出来ていない。
 勿論数日前までなら「まだ結果が出ていないだけで、結果はこれから付いてくる。だから野党の審議拒否とは話が違う」という主張もある程度は理解できただろう。しかし日本同様に圧力重視という姿勢だったアメリカ政府が、水面下では交渉を進めており、その結果拘束者3人の帰国を実現したのを目の当たりにすれば、「対話の為の対話では意味がない圧力こそ最良の選択と言い続ける現政権は、拉致問題解決を実現する為の仕事をサボっている、対話なしに拉致被害者が帰国できるとは思えない」という批判が起きてもよさそうなものだ。野党の審議拒否を”ズル休み”などと揶揄していた人たちからは特に。

 自分も、今の野党には全く頼りがいを感じないし、政権を任せたいとも思わない。ただ、与党・政権支持ありきでの野党批判が大腕を振って歩いているような状況が好ましいとも思わない。そのような批判をしている人達は、独裁者や独裁政権に踊らされているような者、もしくは彼らと利害を共にしている者のどちらかとしか自分には思えない。

このブログの人気の投稿

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。