昨日は「午後ティー女子」が大きな話題になった。BuzzFeed Japanでもハフポストでもこの件を取り上げていたし、今朝のMXテレビ・モーニングCROSSでも触れていた。BuzzFeed Japan・ハフポストどちらの記事も、勿論事の発端やその後の経緯について書かれているので、細かいことが分からなければ読んで欲しい。どちらかと言えば、BuzzFeed Japanの記事の方がフラットな視点に近いと言えそうだが、ハフポストの記事には問題視する声が上がったイラストがしっかり掲載されているので、その点はハフポストの記事の方が分かりやすい。
ただ、どちらの記事も、記者やそれらのサイトが肯定的に捉えているかどうかは分からないが、批判の声が上がったことは伝えているが、批判が強すぎるという声も上がっていることには殆ど触れていない。この傾向はハフポストの記事で特に顕著で、BuzzFeed Japanでは「『女性をバカにしている』など批判の声が上がっていた」とだけ書いているのに対し、ハフポストの記事では批判コメントの例を複数挙げて紹介している。ハフポストの記事を書いたライターは「イラストレーターへの批判はお門違いでは?」と思っているようで、一応イラストレーターへの擁護の声もあることは紹介しているが、表現を不適切とする批判は過剰過ぎる、という声もある事には触れていない。
モーニングCROSSでは、MCの堀潤さんも、今日のコメンテーター3人も概ね批判が過剰ではないか?という見解だった。コメンテーターの中には、20代のモデルでファッションプランナーである鎌田安里紗さんもいて、特に男性目線に偏った傾向があったとは思えなかった。
この件に関しては、ハフポストのコメント欄に多くの主張が集まっている。自分が最初にこの記事を見た時既に10件以上のコメント・リプライが寄せられていた。それを読んでいて感じたのは、この件を男尊女卑、男女格差の問題だと考えている人がそれなりにいるという事だ。そこで自分はこの記事に
どうも男はーーとか女はーーとか、 の問題と捉えている者が少なくないようだが、 男女間の問題にすり替えてはいけないと思う。
誰かを名指ししているわけでもない、 この程度の揶揄表現で不快だから止めろ という話が通ってしまうのなら、 日本のお笑い界は壊滅するだろう。 ブラックジョークなんて概念は無くなるだろう。 果たしてそんな社会は自然だろうか。
「私が不快だと思うんだから不適切、 だから止めろ、お前が不快に思わない方が変」 みたいな論法で気に食わないことを批判するのは、 セクハラ・いじめ問題において、 「俺は(又は私は)それくらい何ともない、 だからそれくらいセクハラ(いじめ)じゃない」 と言うような者と、方向性は逆だが大差ない。
どちらも自分の主観を押し付けようとする 自己中心的さ加減では似たり寄ったりだ。
とコメントを投稿した。コメントでは何故男女格差問題とするべきではないと考えるのかを詳しく書かなかったが、それは、問題視する声が上がったイラストを描いたのが女性だからだ。男女問題と考えている人、したい人は女性を皮肉るようなテイストのイラストを見て「女性蔑視だ」と感じたのだろう。そして、そのような主張に対して、売り言葉に買い言葉的に「男も同じ様に揶揄される。自分の感覚では男を揶揄する表現の方が遥かに多い」などと言っている人もいるのだろう。確かにこの件で問題視する声が上がったイラストは、一部の女性に対する蔑視と言えば蔑視かもしれない。ただ、全ての女性を一括りに蔑視しているわけではない。
また、「女性の中にも男尊女卑的な思想を持っている人もいるので、女性が書いたイラストだったとしても、それが男女格差という視点が適当でない理由にはならない」という反論もあるだろう。しかしよく考えて欲しい。このイラストを描いたつぼゆりさんが、女性から見てもイラっとする女を描くことを得意としていることは、これまでの経歴からも明らかだ。また、彼女の画風は、少し前に相応の人気を博した女性芸人・横澤夏子さんの芸風によく似ていると思う。自分は彼女らの芸風・画風を興味深いとも面白いと思わない。しかし一方で彼女たちの表現が差別的であるとも思わない。彼女らが描いたり演じたりするのはほぼ女性で、男性を揶揄することは少ない。むしろ無いと言ってもいいかもしれない。横澤さんがネタを披露して「女性蔑視だ」という声が高まったことがあるだろうか?自分は全く記憶にない。 女性を揶揄することは、必ず女性蔑視に当てはまるとは限らないだろう。権威を持つ立場、政治家のような職業の男性が、自らこの件で問題視されたようなイラストを描いて、真面目な口調でツイートすれば、女性蔑視の懸念が出てくるかもしれないが、女性側からの発信且つこの程度の表現なのに「女性蔑視だ」などと言うのは極端で、それは、説得力を感じさせられそうな男女格差問題を大義名分に過剰な正義感を振りかざして、けしからん罪を訴えているに過ぎないと自分は感じる。
ただ、今回の件では、イラストをツイートしたのが描いた本人でなく、キリンのプロモーション用アカウントであることも考慮する必要はある。前段で権威ある立場の男性が真面目な口調で同じイラストをツイートをしていたら、女性蔑視の懸念にも合理性が出てくるかもしれないと書いた。午後の紅茶のプロモーション・キリンという、商品・企業名義でのツイートではどうなのかを考えてみたが、それでも清廉潔白さを求め過ぎていると自分は感じる。
結局この騒動の結果、キリンは
というツイートを投稿し、当該ツイートを削除した。個人的には、どう感じたのかを個人が表明することに大きな問題があるとは思わないが、結果的に当該ツイートの削除・謝罪に追い込んだことについては、やり過ぎ感を感じる。勿論キリン側が宣伝効果とダメージを天秤にかけて、早期に削除・謝罪する方が有効と考えて、自主的に対応を図っただけかもしれないが、その程度で取り下げるようなら最初からツイートするなとも思う。これでは、ごく一部の人が過剰に主観的な声を上げただけで、「不適切」と確定してしまうような風潮が高まってしまう。この度、キリンビバレッジ公式アカウントにおける午後の紅茶の投稿について、お客様にご不快な思いをおかけし大変申し訳ございませんでした。深くお詫び申し上げます。— キリンビバレッジ♪ (@Kirin_Company) 2018年5月1日
多くのお客様からのご意見を受け投稿を削除いたしました。今回いただいたご意見を真摯に受け止め、今後の活動に活かして参ります。
ただ、自分は、キリン側は元々こんな炎上騒ぎが起こることまで考慮した上でプロモーションを行った、言い換えれば、批判殺到から取り下げまで織り込み済みだった可能性もあると思う。フェイクニュースの見出しのようなセンセーショナルな表現を使えば、内容が適切だろうがなかろうが、拡散力が強いことは既に多くの学者が研究結果を発表している。要するに、話題になることが目的ならば、認知が広がりさえすれば、流石に全ての消費者にそっぽを向かれるような表現は不味いだろうが、一部の者が騒がしくすることは寧ろ話題に上る為には好都合と考えられそうだ。炎上しても内容が真っ黒でなければ、早期に対処したならば、対処も評価に変わる可能性もある。自分はキリンに対してはそんな視点から考察をしている。
勿論この記事で書いている自分の視点が絶対的に適切で、自分が批判している視点が絶対的に不適切なんて全く思っていない。しかしこの件を男女間格差の問題と捉える視点には賛同できない。以前にセクハラ問題に関する財務省の対応や大臣の態度を批判する見解を書いた際に、「つまり最初から差別主義者のネトウヨと決め付けたという事ですね。あなたのタイムラインを拝見しましたが、保守系の意見を言うユーザーに端から意見を言っているのを見ました」というリプライを頂いたことがある。要するに、セクハラ問題で官僚・政権幹部を批判することも思想の左右の話である、という視点だった。セクハラ問題と思想の左右は直接的に関係が強い問題とは全く思えない。極解が過ぎる。この件については、イラストの表現が取り下げさせなくてはならない程、差別的か否かという問題だろう。描いたのは女性なので(描かせたのは男性かもしれないという見解もあろうが、彼女のこれまでの画風から判断して描かされたとは考えにくい)、男性目線・女性目線などと捉えるのは、セクハラ問題を思想の左右の問題に落とし込もうとするのと似たような捉え方だと自分には思える。