「日本ユニセフ協会は集めた募金からピンハネして儲けている」「ユニセフと日本ユニセフ協会は別組織なので募金するならユニセフへ」こんな話を自分が最初に聞いたのは恐らく10年以上前だ。5/19のテレビ朝日・ファクトリサーチTVではこの件を取り上げていた。ファクトリサーチTVは2018年4月から放送が始まったばかりの番組で、主にマスコミ報道やSNS上などで流布している情報の真偽を検証する内容、誤解を恐れずかなりザックリ言えば、フェイクニュースの検証番組だ。今回番組は日本ユニセフ協会に直接取材を行い、日本ユニセフ協会はユニセフの直轄組織ではない民間団体であることを確認した上で、
- そもそもユニセフは民間企業や民間人からの募金を受け付けていない
- 募金額の約19%がより多くの募金を集める為の活動経費に充てられているが、ユニセフとの協定によって募金額の25%まで活動費に充てることが認められている
と紹介していた。
10年以上前に自分が聞いた噂では「ユニセフ協会=アグネス チャンさんが牛耳る組織でピンハネしている、ユニセフ親善大使の黒柳 徹子さんが個人名義で集めている募金なら100%ユニセフへ送金される」のような話だった。当時からどことなく、日本以外にルーツを持つアグネスさんへの差別的な側面があると感じていた。
今回気になって検索していたら、巨大掲示板2chの創設者・ひろゆきさんのブログがヒットした。日付は2013年11月になっているが、書かれている内容は自分の記憶とほぼ同じような話だ。そのブログからリンクが張られているサイトを見ると、黒柳さん個人が集めた募金の報告がされ、黒柳さんのコメントとされている文言の中にも、
わたくしの場合は、1円も事務費用などをいただかずにユニセフに募金を送っているので、全額を子どものために使うことができます。
とある。
ただ、黒柳さんが集めた募金額は、これまでの累計額で、2018年4/30の時点で約59億円、公式サイトによると日本ユニセフ協会は、2017年だけで約179億5千万円の募金を集めたそうだ。どちらの数字も集めた側の自己主張なので、事実に即しているのか否かは、厳密には送金先であるユニセフ本部に確認しなければならないだろうが、もし報告が虚偽ならば、ここまで数年以上にわたって話題がくすぶっていれば、ユニセフ本部か関係者からそのような指摘がなされて当然だろう。しかしそんな話は聞いたことがないのでそれらの数字は疑わないことにする。
全く経費もかけず、募金額を一切ロスなくそっくりそのまま寄付しているが何年もかけて集めた額は59億円。一方で募金額の約20%で活動経費を賄って1年に100億円以上の募金を集める。どちらの活動手法が望ましいかなんて、単に個人個人の受け止め方の差なのではないだろうか。言い換えれば、個人がどちらの活動を応援したいか、ということではないだろうか。
最近どうも過度に清廉潔白さを求める風潮が強くなり過ぎているように感じる。ボランティア活動に関しても以前からそのような見解を示す人はしばしばいた。しばしばどころか頻繁にいたと言った方が的確かもしれない。何故か「ボランティアは見返りを一切何も求めてはいけない、勿論活動費も全て自費で賄って当然」かのような主張をする人がいる。前述の黒柳さんの活動と日本ユニセフ協会の活動で言えば、黒柳さんの活動の方が素晴らしいというような考え方だ。しかし、活動規模・募金額で判断すれば、ある程度経費を掛けている日本ユニセフ協会の方が結果として多くの子どもを助けられているとも言える。
災害ボランティアなどに関しても、何故か「ボランティアを行う人は食事も寝床も一切誰にも頼らず自前で準備しなくてはならない」と考えている人が少なくない。確かに、出来る限り自前で準備することが望ましいだろうが、全く一切他人を頼ってはいけないのだったら、ボランティアに参加できる人は物凄く限定されてしまう。それでは人手が必要な場所に充分な人手が集まらなくなってしまうだろう。あまりにも杓子定規に考え過ぎてしまうと、逆に本来の目的から遠のいてしまう恐れもある。
番組では「その一方で、震災募金などで詐欺が横行した、という報道も多く、怪しい募金か否かを判断するのは難しい」という点にも注目していた。出演していた萩谷 麻衣子弁護士は「街頭募金などではジーっと観察すれば判断できることもある」と言っていた。自分はそのコメントについて「流石にジーっと観察していられる程暇じゃない」と思ってしまった。
自分の、街頭募金に応じるか否かの判断基準は、声をかけてきた人に「この募金は具体的にどのように使用されますか?」と聞くことだ。この問いに的確に答えられない人には募金しない。人から善意の寄付を募っているのだから、どのように使われるのか、少なくともどんな団体に寄付されるのかぐらいは答えられて当然だろう。しかし、これに応えられない人は案外多い。現場で募金を呼び掛けている人が怪しい人でなかったとしても、彼ら自身が募金を集めている団体に騙されている恐れもある。
最も不快に感じるのは、前述のような質問をした際に、明確に答えられないどころか「何とか理由をつけて募金を断りたいんですね(笑)」のような態度で接してくる人の存在だ。そんな態度を示されて「じゃぁ募金しよう」なんて思う人が一体どれだけいるのだろうか。善意の活動をしている自分に酔いしれるのは構わないが、「善意を施せ」と他人に強制するような態度には悪意すら感じてしまう。