スキップしてメイン コンテンツに移動
 

アメリカでも日本でもなくならない差別意識


 「スタバが商品を購入していなくても座席やトイレを利用できるようにすると発表」、ブログ系ニュースサイト・Gigazin・5/21の記事の一つだ。記事によると、

アメリカのスターバックスは2018年5月19日(土)に「商品購入前であっても座席またはトイレを利用可能にする」として、商品を購入していない人であっても顧客として扱う規則を追加すると発表しました。

 とのことた。 記述の通り日本での話ではなく本国アメリカでの話なのだが、多くのコンビニがトイレを事実上無料開放している日本に住んでいると「今更こんなことを何故宣言したの?」と思うかもしれない。商品を購入していない人でも顧客として扱うという話も、日本に住んでいれば、概ねごく当たり前の感覚だろう。勿論、日本でも客として扱う必要のない程奇妙な行動に出る人ほど「お客は神様だろうが!」なんて態度を示すことは決して少なくないので、歪曲して解釈されたら困るし、日本以上に契約を重視する文化が進んでいるであろうアメリカで、原則的な意味合いだとしても、そのように明言することには一定の意義があるとも思う。


 しかしスターバックスがこのような宣言をした背景には、4/14に発生した事件の存在がある。ハフポストの記事「スタバ客席で「友達を待っていた」黒人男性2人が逮捕 差別だと物議」によれば、スターバックスのある店舗で友人と待ち合わせをして、友達が来てから一緒に注文しようと座席で待っていた2人の黒人男性に対して、店員が「注文をしないなら不法侵入だ」として警察に通報し、警察官によって逮捕されたとのことだ。
 この件に関して当該店員は、

逮捕された2人は、トイレを使わせてくれと店員に尋ねた。店員はトイレはお金を払った客向けなので、出ていってくれと告げたが、2人はそれに従わなかった。逮捕された男性は店員に、それなら警察を呼べと言った。

と説明したそうで、今回冒頭のような宣言をスターバックスが示した背景はこの発言に集約されていると言えそうだ。

 ハフポストの記事「スタバ8000店で人種差別研修 友人を待っていた黒人男性逮捕への批判を受けて」によれば、4/14の事件を受けて、スターバックスは5/29にアメリカ国内の全ての直営店を一時的に閉店にして、17万人以上の従業員に対して人権教育する方針を示していたそうだが、5/17にはまた「スタバのカップに「差別用語を書かれた」と写真投稿。アメリカで波紋」(ハフポスト)このような記事が報じられている。自分はこの記事で問題視されているメキシコ出身者への蔑称とされる「Beaner(ビーナー)」という表現が、どの程度の表現なのか詳しくは分からないので、この件を詳しく評価することは出来ないが、それでも4/14の事件があったばかりなのに意識の低さは変わっていないんだな、としか思えない。

 ただ、このような風潮をスターバックス特有のものと捉えるのは適切ではないと思う。例えば、BuzzFeed Japanでは「アメリカの弁護士、レストランでスペイン語を話す人に「英語を話せ」と脅迫→自宅前でラテンパーティーが開かれる」という昨日の記事で、弁護士の白人男性がレストランでスタッフと客がスペイン語で話していたのを見て、

「スタッフが客にスペイン語で話している。英語で話すべきだ」
「多分、不法移民だろうから、自分の国から追い出してもらうよう、移民税関執行当局(ICE)に今から電話する」
「ここはアメリカだ!ここに来て私の金で生活する度胸があるんだったら…私が彼らの福祉のために払っているんだぞ…彼らがここにいられるのは私が払っているからだ。せめて英語を話せ」

などと偏見に満ち溢れた差別的な発言を行い、問題視する人達がその弁護士の自宅前でラテンパーティーを開いて抗議したという件を伝えている。

 このような記事を目の当たりにすると「アメリカは相変わらず人種間の対立、特に白人による非白人差別が深刻だな」と思うかもしれない。「日本には深刻な問題がなくてよかった」と思う人もいるかもしれない。しかし、日本でも人種・民族・出自を根拠にした偏見・差別は確実にある。嫌韓嫌中の極端な主張は恥ずかしげもなくネット上を中心に平然と行われている現実が確実にある。また、嫌韓嫌中に限らず、外国人自体を見下すような人も確実存在している。今朝のMXテレビ・モーニングCROSSを見ていて目に飛び込んできた視聴者ツイートに、


という主張があった。これに対して自分は強烈な違和感を感じ、


と引用リツイートをした。「外人が増えれば、治安が悪くなる。」こんな差別の懸念が強い主張をテレビ画面に流す必要は一体どこにあるのだろうか、番組内で出演者の誰かが懸念を示したのなら、不適切な例として取り上げたとも言えるだろうが、いつものようにそんなことは一切なく、悪く言えば、番組がヘイトスピーチにも該当しそうな主張を流布する手伝いをしているようにすら見える。
 そのようなツイートをする人は当然の事、自分にはそんなツイートを画面に表示させて一切問題性に触れない番組も同様に差別に鈍感なのではないか?と疑ってしまう。もう何度もこのブログでは同じことを書いているが、モーニングCROSSにはもう少し差別偏見に満ちた視聴者ツイートを画面に表示することの意味を真剣に考えて貰いたい。

このブログの人気の投稿

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになる

 攻殻機動隊、特に押井 守監督の映画2本が好きで、これまでにも何度かこのブログでは台詞などを引用したり紹介したりしている( 攻殻機動隊 - 独見と偏談 )。今日触れるのはトップ画像の通り、「 戦闘単位としてどんなに優秀でも同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになるわ。組織も人も特殊化の果てにあるものは緩やかな死 」という台詞だ。

フランス人権宣言から230年、未だに続く搾取

 これは「 Karikatur Das Verhältnis Arbeiter Unternehmer 」、1896年ドイツの、 資本家が労働者を搾取する様子を描いた風刺画 である。労働者から搾り取った金を貯める容器には、Sammel becken des Kapitalismus / 資本主義の収集用盆 と書かれている。1700年代後半に英国で産業革命が起こり、それ以降労働者は低賃金/長時間労働を強いられることになる。1890年代は8時間労働制を求める動きが欧米で活発だった頃だ。因みに日本で初めて8時間労働制が導入されたのは1919年のことである( 八時間労働制 - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

馬鹿に鋏は持たせるな

 日本語には「馬鹿と鋏は使いよう」という慣用表現がある。 その意味は、  切れない鋏でも、使い方によっては切れるように、愚かな者でも、仕事の与え方によっては役に立つ( コトバンク/大辞林 ) で、言い換えれば、能力のある人は、一見利用価値がないと切り捨てた方が良さそうなものや人でも上手く使いこなす、のようなニュアンスだ。「馬鹿と鋏は使いよう」ほど流通している表現ではないが、似たような慣用表現に「 馬鹿に鋏は持たせるな 」がある。これは「気違いに刃物」( コトバンク/大辞林 :非常に危険なことのたとえ)と同義なのだが、昨今「気違い」は差別表現に当たると指摘されることが多く、それを避ける為に「馬鹿と鋏は使いよう」をもじって使われ始めたのではないか?、と個人的に想像している。あくまで個人的な推測であって、その発祥等の詳細は分からない。