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組織的隠蔽行為はなかった


 イラク日報隠蔽問題に関する内部調査の報告を、今日午前に小野寺防衛大臣が行ったようで報道各社が一斉にそれを伝えている。毎日新聞の記事「イラク日報 防衛相「文民統制に関わりかねず」17人処分」」によると、

  • 昨年3月に発見された日報が報告されなかったのは当時の稲田朋美防衛相の探索指示が徹底されなかったから
  • また、現場の不適切な事務処理が原因 
  • しかし、組織的隠蔽行為はなかった 
  • 指揮監督責任として河野克俊統合幕僚長を訓戒、豊田硬事務次官を口頭注意とするなど一連の問題に関して計17人を処分

などの、調査結果とそれに伴う処分を報告したそうだ。


 率直に言って「よくもこんな調査を誇らしげに報告出来たものだ」としか思えない。まず何より、昨年来「ない」と断言している文書などが後々見つかるという事態が、現政権下では何件もたて続けに発生している。しかも、大臣や官房長官なども一緒になって「ない」という発言を繰り返し、追随していても、嘘が発覚すると急に「官僚・部下の報告をそのまま述べただけ」のような事を言い始める。要するに彼らに管理監督責任者としての自覚がほぼない事を、自ら証明して見せているようなものだ。このようなことが頻発する中では、現政権下で請求のあった文書・事案の鍵になる文書に関して、調査の結果「ない」と報告されても全く信用出来ない。要するに”調査”に関する能力にも大きな疑問がある中で行われる内部調査にどれだけの説得力が感じられるだろうか。

 百歩譲って今回小野寺大臣が主導して行った内部調査が適切に行われたとする。しかし、統合幕僚長ら幹部を含め17名もの処分が必要な事態だったのに、これを「組織的隠蔽行為はなかった」と言えるのなら、どんなことが起ころうが個人の責任と言えるだろう。要するに小野寺大臣は組織的な隠蔽が行われたことになると都合が悪いので、無理矢理「組織的隠蔽行為はなかった」ことにしようとしているようにしか思えない。稲田 前防衛大臣が「事実行為としての殺傷行為はあったが、憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、武力衝突という言葉を使っている」と発言したのと五十歩百歩ではないだろうか。
 さらに千歩譲ってイラク日報隠蔽が、自衛隊・防衛省で起きた初めての隠蔽問題だったのなら、とても苦しいが「組織的隠蔽行為はなかった」という見解も容認できる余地は微かにあったかもしれない。しかし、この隠蔽が発生した数か月前に南スーダン日報の隠蔽が既に明らかになっていたにも関わらず、再発防止が出来なかったということは、確かに当時の稲田大臣の指示が徹底出来ていなかった側面もあるだろうが、自衛隊・防衛省内に「次はバレないようにやらないとね」という意識があったのだろう。しかも南スーダン日報で幹部が処分を受け、内部で新たな体制になったにも関わらずそれが全く変わっていなかったということは、稲田大臣だけでなく、その下に位置していた幹部たちにも大きな責任はある。要するに組織的に隠蔽体質だったことは明白だと言えるだろう。

 結局、2度も隠蔽を繰り返した自衛隊・防衛省の内部調査自体に信憑性を感じられないし、幹部を含め17名もの処分が必要だったという結果にもかかわらず「組織的な隠蔽はなかった」なんて言われたところで、全然「そうですね」なんて思えない。小野寺大臣も自身や政権、そして防衛省・自衛隊の保身が最も重要で、再発防止を最も重視するとか、首相の言葉を借りれば「膿を出し切ろう」なんて思っていないんだろうとしか思えない。
 多分また防衛省・自衛隊内では隠蔽が繰り返されるんだろう。2度の経験から巧妙さだけが増して国民の目をゴマかす能力が向上した結果、すぐには発覚しない恐れはあるだろうけど。

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