スキップしてメイン コンテンツに移動
 

不倫は主婦の憧れ?




という堀潤さんのツイートで、NHK朝ドラ「半分、青い。」の5/25放送分の中のセリフ「不倫は主婦の憧れ」が批判を浴びていることを知った。自分はその本を読んでいないので詳しくは分からないが、堀潤さんは例えば「男は○○だから信じられない」とか「女は○○だから仕方ない」とか、もっと露骨に言えば「日本のマスコミは偏向している」とか、あまりにも大きすぎる括りでレッテル貼りをするようなことを指して、「大きな主語」が引き起こす事象と言っているんだろうし、彼が出演する番組でしばしば見せるその主張には、自分も共感する部分が大きいが、「不倫は主婦の憧れ」というドラマのセリフをその典型というのは少し言い過ぎだ、と感じた。


  5/25の時点でツイッターで「不倫は主婦の憧れ」を検索すると、批判的なツイートばかりが並んでいた。これについてサイゾーウーマンが「朝ドラ『半分、青い。』、「不倫は主婦の憧れ」台詞に「ワザと?」「NHKが炎上狙いか」の声」という見出しで記事化している。記事ではもっと詳しく解説されているが、5/25放送分では、ドラマの時代背景が80年代後半から90年代前半ということで、80年代に人気を博した不倫がテーマのドラマ「金曜日の妻たちへ」に夢中になる主人公の母を示唆し、「半分、青い」でナレーションを務めている風吹ジュンさんが「いつだって不倫は主婦の憧れです」というセリフを述べるという場面があった。これに対して「大半の主婦が不倫をしたがっているように言うなんて何事だ」のような批判が集まっていた。例えば、政治家がスピーチや国会答弁の中などで「いつだって不倫は主婦の憧れです」なんて発言をすれば、どんな流れがあっても一定の批判を受けるだろう。政治家や役人は限りなく誤解のない発言を求められる職業だろうから、ある程度は仕方ないかもしれない。しかし、「半分、青い。」というドラマのセリフに同じ様な意識で臨むのは、個人的には言い掛かりというか、過剰反応としか思えない。
 前述したように当時不倫をテーマにしたドラマが人気を博していたことは事実だし、それ以降も不倫がテーマのドラマは昼ドラなどでは定番だったし、ほんの数年前に、上戸彩さんや斎藤工さんが出演した「昼顔」が人気になったのは記憶に新しい。多くの主婦が実際に不倫をしたいと望んているわけではないだろうから、正確性を重視するなら「いつだって不倫ドラマは主婦を虜にしてきた」というセリフなどの方がよかったかもしれないが、実際に放送を見ればそんなニュアンスであることは、少なくとも自分には容易に想像がついたし、しかも「いつだって不倫は主婦の憧れです」というセリフの直後には「あっ、朝から失言」と続けられているのだから、演出上やや過激な表現を使ったことも示唆されていたにも関わらず、「不倫は主婦の憧れ」という部分だけを切り取って批判している人たちは、自分の目には、言い掛かりをつけているだけにしか見えなかった。

 サイゾーウーマンの記事を見ると更に言い掛かりのような批判が行われていることが分かる。記事では名前も明かさない芸能ライターのコメントとして、

 また、この日は視聴者の反感を買うシーンの連続だった。
「秋風のガン再発を心配した鈴愛は、周囲の協力を得ようと、事情を話して回っていたのですが、幼馴染の萩尾律(佐藤健)は『人に言いたくないことだって、知られたくないことだってあんだろ』と咎めます。しかし本人は『なんで言ったらアカン?』とわかっておらず、ネットユーザーから『他人のプライバシーをペラペラしゃべる主人公ウザい』『デリカシーなさすぎ』など批判が相次ぎました」(同)
 さらに、終盤には秋風の本名が「美濃権太」だということも明らかになり、ネット上ではペンネームとのギャップが話題に。同ドラマの脚本を手掛ける北川悦吏子氏も、話題になったことを受け、Twitterで「やったよ!」と歓喜したが……。
「一部ネットユーザーは『人の名前を笑いのネタやオチに使うって発想が悪趣味』と、指摘。今回の不倫やプライバシー問題も総合して、『あらゆる方面への配慮が足りない脚本』『脚本家が軽はずみすぎるのでは?』といった書き込みもみられます」(同)

という記述がある。率直に言ってこのような演出で問題なら、多くのドラマも映画も、そして小説もストーリーマンガも成立しないと自分は思う。NHKの朝ドラだから他より清廉潔白さが求められて然るべき、という考えの人もいるだろうが、NHKの朝ドラだって明治や大正が舞台ならば、当時の状況を反映して確実に現在より強い男尊女卑傾向、上司から部下へのパワハラ傾向など、現在の価値観に照らしてかなり理不尽に思える場面を描くだろう。要するに少なくとも5/25放送分を批判している人に関しては、サイゾーウーマンの記者を含めて難癖を付けたくて粗探しをしているだけと言えそうだ。

 また、冒頭で紹介した堀潤さんの「大きな主語」が引き起こす事象 という観点で考えれば、サイゾーウーマンの記事で使われている表現

 また、この日は視聴者の反感を買うシーンの連続だった。

の視聴者という括りも、主語としてはかなり大きすぎる。現にツイッターでこの記事を書いている5/26時点で「不倫は主婦の憧れ」を検索すると、




などが話題のツイートとしてヒットする。要するに反感を持つ者がいたのは確かだろうが、自分と同じように「そんな反感は難癖に近い」と感じている視聴者もいるにもかかわらず、大半の視聴者が反感を持ったかのように記事化するのは果たして適切だったろうか。勿論サイゾーウーマンというメディアは娯楽的な側面が強く、自分はゴシップ紙的な存在だと思っているので、大新聞がこの記事を掲載していたなら問題だろうが、このような状況を煽って盛り上げる記事をサイゾーウーマンに掲載されることが断じて許されないと言いたいわけではない。ただ、読み手はそのような側面も意識して読む必要があるとは言えそうだ。

 また、堀潤さんが「不倫は主婦の憧れ」というドラマ内のセリフ、これぞ「大きな主語」が引き起こす事象の典型 として自身の著書の宣伝に利用したことは、確かに誤解を生む余地のある表現だったことは確かだが、ドラマ内で何を示唆していたかが描かれていたことや、「あっ、朝から失言」というセリフが直後に続けられていたことを度外視して切り取ったようにしか思えず、個人的にはとても残念だった。

このブログの人気の投稿

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

フランス人権宣言から230年、未だに続く搾取

 これは「 Karikatur Das Verhältnis Arbeiter Unternehmer 」、1896年ドイツの、 資本家が労働者を搾取する様子を描いた風刺画 である。労働者から搾り取った金を貯める容器には、Sammel becken des Kapitalismus / 資本主義の収集用盆 と書かれている。1700年代後半に英国で産業革命が起こり、それ以降労働者は低賃金/長時間労働を強いられることになる。1890年代は8時間労働制を求める動きが欧米で活発だった頃だ。因みに日本で初めて8時間労働制が導入されたのは1919年のことである( 八時間労働制 - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになる

 攻殻機動隊、特に押井 守監督の映画2本が好きで、これまでにも何度かこのブログでは台詞などを引用したり紹介したりしている( 攻殻機動隊 - 独見と偏談 )。今日触れるのはトップ画像の通り、「 戦闘単位としてどんなに優秀でも同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになるわ。組織も人も特殊化の果てにあるものは緩やかな死 」という台詞だ。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。