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憲法改正?改悪?改定?


 今日・5/3は憲法記念日だ。憲法改正議論が国会レベルで行われるようになってから、5/3だけではなくその周辺のゴールデンウィークは、関連した集会も多く、政治団体や市民団体などが意見・見解を表明することなどが多くなるタイミングだ。元来・日本の憲法記念日は「日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する」日という観点で設定されたようなので、本来の趣旨からは少し離れているかもしれないが、憲法の内容を変える必要があるのかないのか、を議論するきっかけに憲法記念日がなっていることは、単なる休日ではなく意味のある祝日として機能しているようにも思う。
 政治的な団体や市民団体だけでなく、近年ではメディアも憲法記念日周辺に関連した記事などを、この時期は普段より多く掲載する傾向にある。テレビでも特集が組まれることが多い。今朝のMXテレビ・モーニングCROSSでも「「憲法改正」は必要だと思いますか?」という設問で視聴者投票を募っていた。自分はこの設問での視聴者投票の意義は薄い、という視点で見ていた。


 確かに、若い世代などは特に、まだまだ憲法改正の可否について一人ひとりが真剣に考える傾向、要するに興味が薄く、全く興味を持っていないような人達の興味を喚起する為には「「憲法改正」は必要だと思いますか?」という設問での視聴者投票でもそれなりの意義はあるかもしれない。ただ、何をどう変えるのかを指定せずに漠然と「憲法改正」と聞くと、答える側の「何をどう変えるか」についての基準が定まらず、同じ条件での回答は得られない。それでは、議論や興味を得るきっかけにはなり得ても、それなりに意義のある結果が得られるとは思えない。何より、聞いている側がまるで「憲法改正自体が目的である」と考えているようにも思えてしまう。
 このような設問でアンケート・世論調査を行っているのはモーニングCROSSに限った話ではない。ただ最近は、例えばこの毎日新聞の調査・「憲法9条の1項(戦争放棄)と2項(戦力不保持)を維持しつつ自衛隊の存在を明記した「9条の2」を新設する自民党の憲法改正案についての賛否」のように、どこをどう変えるのかついて明示したアンケート・調査も行われているのを見かけるようにはなった。
 しかしそれでも「どこをどう変えるか」を明示せず、ただ漠然と「憲法改正」と、政治団体や市民団体だけでなく、特にメディアが煽っている傾向であると言って間違いないと思う。これでは、議論を加速させよう、興味を喚起しようとしているはずなのに、「憲法改正って具体的に何をどうするのかよく分からない」という受け止めを広げかねず、寧ろ積極的な議論、興味を抱くことをけん制していしまっている側面もある、と自分は感じる。

 現在、憲法改正議論の中心は紛れもなく自衛隊・9条に関してだ。これを真摯に受け止めるなら、漠然と憲法改正とするのではなく「憲法9条改正は必要だと思いますか?」という設問でアンケートを行うのが、今のタイミングでは妥当だろう。他の部分の改定に関する議論が、9条の改変に関する議論と同じくらい盛り上がっているのなら「憲法改正の必要性」について聞くこともありかもしれないが、確実にそんな状況にあるとは言えないのだから、9条の改変についての議論が現在の憲法改正議論の中心であることをぼかす必要などない、厳しく言えば、ぼかしたい理由がそこにあるからぼかしているのではないか?という疑念すら感じてしまう。

 また、自分は憲法”改正”という表現にも違和感を感じている。内容が良くなるなら改正だろうが、内容が実質的に後退するような改変なら”改悪”になる恐れもある。改変という表現だとややネガティブなイメージもあるだろうから、”改定”という表現が丁度よいのではないか?と考えている。「憲法改正」という表現は、提案されている変更内容が必ず今より良い内容であるという、優良誤認をさせてしまう恐れがあると考える。そんな観点で言えば、憲法改正ではなく憲法改定議論などと表現したほうが良いのではないだろうか。

 以上の話をまとめると、憲法について、今優先的に意識する必要があるのは、漠然として優良誤認を招きかねない憲法改正でなく、憲法9条改定についてなのではないだろうか。メディアにはそれをしっかりと明示し、伝えて欲しい。

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