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非核化・ICBM>拉致問題・SRBM


 5/17の会見でトランプ大統領が、北朝鮮の非核化で所謂「リビア方式(一括で完全な核廃棄による経済制裁解除)」の適用は目指さない、という趣旨の発言をしたと複数のメディアが報じている。端的に言えば、日朝首脳会談にどのような姿勢で臨むのか、会談で相手に何を要求し見返りに何を提案するのか、という話だ。自分は5/14に「日本人拉致問題は日本が主導しなければ解決しない」というタイトルでブログ投稿を書いた。今回のニュースを見ていて感じたのは「大統領が示した経済制裁、要するに北朝鮮に対する圧力解除の条件には、拉致問題の”ら”の字もない」だった。毎日新聞の記事「トランプ氏「体制を保証」北朝鮮の非核化見返り」を見てもそのような感想を再確認させられる。ただ、AFPの記事「トランプ氏、北朝鮮非核化の「リビア方式」否定 会談成功なら「金氏は残る」では、
会談が成功すれば金委員長は「非常に強力な保護を受ける」ことになり、「自国に残り、自国を治めるだろう」とした。
という表現になっているので、”会談が成功すれば”という表現が正しいのならば、制裁解除の要件に拉致問題の解決が含まれているかもしれないという、かすかな希望はまだ残っているかもしれないとも感じる。だが、そこへの期待感は相当薄い。


 4/17-18に日米首脳会談が行われていた。4/18の産経新聞の記事「米朝首脳会談で拉致問題テーマに トランプ氏「ベストを尽くす」」によると、
トランプ氏が拉致問題を取り上げることを確認し、トランプ氏は「ベストを尽くす」と明言した。
とのことだ。ただ、よく読むと記事には「両首脳はまた米朝首脳会談を含めた北朝鮮問題に関する対応を綿密にすり合わせた。トランプ氏は「日本のために最善となるようにベストを尽くす」と強調したという」と書いてもあり、「北朝鮮問題にベストを尽くす」とは言っているが、記事が見出しや導入部で強調する「拉致問題にベストを尽くす」というニュアンスが大統領の認識を正しく反映しているかについて、必ずしも正しいとは言えないと自分は思う。
 記事の後半には、
 安倍首相は記者団に対し、「一対一」の会談について「ドナルド(トランプ氏)と二人きりで北朝鮮問題、経済について相当深い話をすることができた。それぞれ非常に重要な点で、認識を一致させることができた」と述べた。

 両首脳は「強固な日米同盟のもと、国際社会の平和と安定に向け連携していくこと」を確認した。
という表現がある。自分が注目するのは「北朝鮮問題ついて相当深い話した。非常に重要な点で(両首脳が)認識を一致させた」と安倍首相が述べている点だ。

 4/17の産経新聞の記事「安倍晋三首相訪米 北への圧力維持、拉致問題解決確認へ」によると、会談前に発つ前に首相は記者団に対して
 北朝鮮による完全、検証可能、不可逆的な方法による核・ミサイルの廃棄の実現に向けて最大限の圧力の維持を確認したい。米朝首脳会談に向け、拉致問題が解決に向かって前進するよう全力を尽くしたい。
と述べたそうだ。当時自分は「核・ミサイルの廃棄、拉致問題の解決の為に最大限の圧力を維持することを、トランプ大統領に確認してくる」と、首相は言っていると解釈していたが、トランプ大統領が、経済制裁解除条件で拉致問題の”ら”の字にも触れなかったことを勘案すると、当時の安倍首相も「核・ミサイルの廃棄の為に圧力を維持することと、それとは別に拉致問題の解決に努力することを確認してくる」と言っていたんだな、そしてその認識を会談で確認し「一致させることが出来た」と言っていたんだな、と感じた。厳しく言えば、「非核化・ICBM(大陸間弾道ミサイル)の廃棄>拉致問題・SRBM(短距離ミサイル)の廃棄、要するに”アメリカファースト”という認識を日本の代表として確認してきた」ということだったんだなと感じた。
 これを再確認できるのが、安倍首相が5/11にフジテレビ・プライムニュース イブニングに出演し、米朝首脳会談での核・ミサイル・拉致問題の見通しについて述べた、
大きなそれぞれの問題に前進があるのかどうか…つまり金正恩委員長がそこで決断するかどうかです。 
制裁解除見返りのタイミングを間違えると同じ過ちを繰り返すことになる。完全検証可能不可逆的CVIDというが、CVIDを達成した後です。
金正恩委員長に直接ということだろうと思います。我々は北京ルートであらゆる努力を行ってきているし今も行っている。見方によっては、それ(拉致問題協議に)には応じるかもしれないという分析もできると思う。
などの主張だ。これらの発言からも「制裁解除の条件は概ね核・ミサイル廃棄であって、拉致問題解決はその後でもよい」と言っているように思えてしまう。

 自分はこれまで首相が「対話の為の対話では意味がない、必要なのは圧力」と言い続けていたことが正しかったとはこれっぽっちも思っておらず、「圧力は必要だが、対話の為の対話になってしまわない対話を行う努力をする必要が確実にある」と思っていたので、どんなことの影響からだろうが、首相が直接協議に言及し始めたことは好ましいことだと思う。交渉なくして拉致問題が解決するはずがない。
 ただ冒頭で触れた、先週トランプ大統領が示した見解を踏まえた上で、先月の日米首脳会談に関する記事を読み返してみると、首相が演出しようとしている程、そして積極支持者らが評価する程、安倍首相は拉致問題の解決に積極的だとは思えないという、以前から持っていた受け止めを更に再確認させられた。言い換えれば「対話の為の対話では意味がない」というのは、単なるスローガンでしかなかったんだという受け止めを強く再確認させられた。 

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