G7・首脳会議が6/8-9にカナダ・シャルルボワで行われた。今回のG7は主にアメリカが検討している法外な関税をめぐって紛糾したようだ。トランプ米大統領は6/12にシンガポールで開催予定の米朝首脳会談を理由に、2日目には出席せずにカナダ・シャルルボワを後にしたようだ。読売新聞の記事「トランプ氏、首脳宣言の合意を「ちゃぶ台返し」」によると、トランプ氏は「ルールに基づく国際的な貿易体制の重要な役割を強調し、保護主義と戦い続ける」などと明記し、採択した首脳宣言について、カナダのトルドー首相が9日の記者会見で米国の関税措置を批判したことなどに反発し、首脳宣言を米国として承認しないよう現地の事務方に指示したそうだ。要するに自分が1度合意した首脳宣言を、1日も経たないうちに覆した格好だ。
昨年・2017年末から今年の初頭にかけて文大統領や韓国政府が、韓国・朴前大統領の政権と日本政府の間で結ばれた所謂日韓合意を、実質的に覆すような見解・態度を示したことについて、日本政府は当然「一度結んだ合意を一方的に覆すなどあり得ない」という姿勢を示していた。文大統領の言い分が全く分からない訳ではないが、それでも彼や現韓国政府が示している主張に高い整合性があるとは言えないと自分も感じ、この件に関しての日本政府の姿勢はある程度指示できるものだった。
今回のG7の首脳宣言に対するトランプ氏の、ある意味傲慢な姿勢について、日本政府や首相から苦言が呈されたという報道は一切ない。確かに米朝首脳会談を目前に控え、その内容によっては拉致問題に関して何らかの前進があるかもしれないという、一縷の望みがある状況を考えれば、このタイミングで苦言を呈するのは上手い振舞いではないかもしれない。しかしそれは視点を変えれば、日本政府はトランプ氏や米国に対して主張するべきことが主張出来ないということでもありそうだ。
G7に先駆けて安倍首相はトランプ氏と首脳会談を行い、鉄鋼関連・自動車に関する法外な関税を検討している米国側から、目立った成果を引き出せなかったにもかかわらず、勿論今回の主目的は来る米朝会談で拉致問題を取り上げさせることだったろうから、経済的な成果が得られるとは思っていなかったが、首相は相変わらず日米は「100%共にある」とアピールしていた。しかしトランプ氏が「米朝会談を中止する」と言えば「尊重する」とし、翌日に「やっぱり前向きに検討する」と言っても「尊重する」などと言ってしまう首相や日本政府を見ていると、「100%共にある」という首相のセリフは、実際には「日本はアメリカに100%Noと言わない」という腰巾着宣言なのだろう、と思えてしまう。それはTBSニュースが「G7でプラスチックごみの海洋汚染問題協議、日本署名せず」という記事で伝えた、G7でプラスチックごみによる海洋汚染問題が協議され、具体的な対策を各国に促す合意文書がとりまとられたが、日本とアメリカだけが署名しなかった、という件からも滲み出ているのではないだろうか。
AFP通信が「G7サミット、各国のイメージ戦略で繰り広げられた写真バトル」という記事を掲載している。自分がこの記事の件を初めて知ったのは荻上チキさんの
2018年6月、G7の写真。— 荻上チキ (@torakare) 2018年6月10日
1枚目はホワイトハウス報道担当。
2枚目はドイツ政府。
3枚目はカナダの首相担当。
4枚目は官邸および総理。
それぞれが公開した写真を並べるだけでも、メディア論の授業に使えそう。 pic.twitter.com/IjWWvkgeNY
というツイートだった。また、AFPの記事ではドイツ政府カメラマンの撮影した写真しか掲載していないが、ジャーナリストの藤代裕之さんが、AFPの記事で言及された各国の写真付きツイートを引用して記事化し、Yahoo!ニュースが「ソーシャルメディア時代のG7「写真バトル」一覧、勝ったのはドイツ?それとも…」という見出しで掲載している。
勿論荻上チキさんのツイートも藤代裕之さんの記事も、勿論AFPの記事も、ツイートするのに選んだ写真に各国の思惑が如実に現れていることを伝えているのだが、それらの写真を見ていると、日本の首相がまるでトランプ氏の子分であることを自認しているかのように見えてしまう。勿論写真から感じる印象なので「そんなのは言い掛かり」と感じる人もいるだろう。ただ、これらの写真は安倍首相の子分感を示唆するという意図でなく、各国がそれぞれの立場をアピールしやすいという意図で選んだ写真だ。そのような写真にもかかわらず、特にドイツの写真からは、もしかしたら単なる偶然なのかもしれないが、強い子分感が見て取れる。だから余計にそう感じてしまう。
朝日新聞の記事「安倍首相「北朝鮮と直接協議する決意」 日米首脳会談」によると、これまで馬鹿の一つ覚えのように「対話の為の対話では意味がない」とか「北朝鮮が自ら対話を望む姿勢を見せるまで最大限の圧力をかけ続ける」などとしていた安倍首相は、日米首脳会談後に
早期に解決するため、私は北朝鮮と直接向き合い、話し合いたい。あらゆる手段を尽くしていく決意だ
拉致問題の解決に資するものとなる首脳会談かということも当然考えていかなければならない
という姿勢を示したそうだ。首相もやっと「対話の為の対話に留まらない、
有意義な対話をする努力なくして拉致問題解決はない」ということに気付いたのだろうし、もしそうだったならば、やっと前進したとは思うが、その一方で気付くのがあまりにも遅すぎるとも思う。というか、米大統領に足並み合わせただけというのが事実ではないだろうか。こんなことからも、やはり「100%共にある」という首相のセリフは、実際には「日本はアメリカに100%Noと言わない」という腰巾着宣言なのだろうと思わされてしまう。
こんなに主体性のない外交では拉致問題の解決など夢のまた夢だろうし、日本と米国間にある経済問題も、勿論他の国との外交でも、大した成果など期待できないのではないだろうか。「安倍政権のウリの一つは外交」と評価する人をしばしば見かけるが、何がその根拠になっているのか全然理解出来ない。唯一、政権のその長さで他国政府に名前を憶えられていることだけは、安倍政権の外交上の利点かもしれないが。
何より、G7の首脳会議に先駆けて財務相会議も行われていたが、改ざんやセクハラ問題に関して首を傾げたくなるような発言ばかりしており、どちらの件も矮小化しようとし、さらにセクハラ問題に関しては被害者に対するセカンドレイプとしか思えないような主張を頑なに続けた人を、日本の代表として送り込む首相・政権に、適切な外交能力があるとはとても思えない。