自分は自動車が好きなので、モーターショーがあるととりあえず情報収集してしまう。10年くらい前から中国でも急速に自動車が普及し始め、今では世界最大の市場となっている。中国でも90年代からモーターショーが行われており、毎年4月に北京か上海、11月に広州で大きなショーが開かれる。中国が市場として大きくなってからは、と言うかそれ以前から欧米や日本のメーカーもかなり力を入れており、かつてはアジアで最も権威あるモーターショーと言えば、東京モーターショーだったが、日本と中国ではあまりにも市場の大きさが違うし、成長の勢いも中国市場の方が確実に上で、近年では、特に日本以外のブランドは中国のモーターショーを重視している場合も少なくない。しかしその一方で、中国のモーターショーでは毎回、国外他社のデザインを丸パクリしたようなモデルを、中国企業が堂々と展示することが話題になる。
流石に数年前に比べればその傾向は減少しているように自分は感じる。と言っても現場に行ったことは一度もないので、日本や欧米のメディアを通じての感覚ではある。ただ、モーターショー絡みではないが、6/2にもautoblogジャパンが、ランボルギーニ・ウルスによく似たSUVを中国のブランドが発表した、と伝えている。
Huansu C60 Hyosow
AutoBlog ジャパン |
Lamborghini Urus
Lamborghini ジャパン |
Autoblogジャパン |
これがコピー商品なのかどうかは、見る人によっても判断が分かれるレベルかもしれないが、それでも全くの偶然で似通ったとは言えないレベルで似ていると言わざるを得ないだろう。勿論、中国の自動車ブランドの中にはあからさまなコピー商品を作るレベルから既に脱しているブランドもある。ただ、ほかの分野でも未だに著作権を無視したコピーが指摘されているように、まだまだ著作権に関する感覚が成熟しているとは間違っても言えないだろう。
ただ、このような傾向は日本にも70年代-80年代初頭まで、台湾・韓国では90年代後半頃まで確実にあった。だから中国の現状は仕方ないということではないが、自分たちが通ってきた過去を全く無視したような批判を向けるのも、それはそれで滑稽だ。
メルセデスベンツUK(イギリス)の商用車部門のYoutubeチャンネルが、5/24に「Fort William World Cup 2018」というタイトルのプロモーションムービーを公開した。このムービーは 6/2-3に開催された マウンテンバイクの世界選手権 と、メルセデスベンツのピックアップトラック・X-クラスのタイアップムービーで、メルセデスベンツは大会スポンサーになっていた。
一方、韓国の自動車ブランド・雙龍(サンヨン)は、6/13に「[렉스턴 스포츠 x BMX]([Rexon Sports x BMX])」というムービーを公開した。レクストンスポーツは、サンヨンが1月に発表したピックアップトラックのモデル名だ。
Fort William World Cup 2018
[렉스턴 스포츠 x BMX]
2つのムービーを比べると、
- MTBとBMXという自転車の違いはあるが、自転車のトリックとピックアップトラックの組み合わせである
- 撮影場所が共に倉庫内のような場所である
- 遂になっているキッカーの間にピックアップトラックが停車し、その上を自転車が飛び越える表現
- 最後にピックアップトラックの荷台に飛び乗るという表現
など、類似性が複数あり、映像制作が同じ人間、もしくは同じ集団によって行われたのでなければ、個人的にはアイディアの盗用・模倣、もしくはイミテーションである恐れがかなり高いと感じる。偶然の一致である可能性は絶対にない、とまでは言えないかもしれない。しかし、公開日時に約20日ほどラグがあること、酷似と言っても過言でない程の類似点が複数あることを考えると、その可能性は著しく低いと言わざるを得ない。ハングルでタイトルが付けられていることから推測すると、韓国国内向けのムービーだろうから、模倣について許される範囲という判断があったのかもしれない、とも想像してしまう。
中国のコピー商品まがいの自動車や、韓国のこのような盗用まがいのムービーなどを指摘すると、日本の一部に存在する、過剰にナショナリズムを煽り、嫌韓嫌中をあからさまに叫ぶ人々、特にヘイトスピーチを恥ずかしげもなく行うような人達は、鬼の首をとったかのように「中韓は民度が低い」などと言いだすのだろうと自分は思う。確かに、この記事で指摘した件だけを見たら「両国ともまだまだ民度が成熟していない」とも感じられる。これらの件だけに注目すれば、そのような判断が明らかにおかしいとまでは言えないかもしれない。
しかし日本の自動車デザインも、少なくとも70年代までは明らかに欧米の模倣である側面が強かった。勿論欧米のデザイナーにデザインを発注し、同一人物によるデザインだから似通っていたモデルも存在していたが、全てがそうではなかった。トラブルの少なさ・燃費の良さという評価を確立するまでは、当時欧米から見れば、日本車は安価なイミテーションに見えたことだろう。
また、未だに日本でも海外アーティストのPVを丸パクリしたようなPVが作られることはある。2015年には東京オリンピックのエンブレムデザインに盗用疑惑が浮上し、担当したデザイナーが他のデザインでもいくつか盗用ではないか?という指摘を受ける事態となり、結局採用が撤回されるということになった。更に昨日、あるデザイナーがワールドカップ日本代表応援Tシャツのデザインについて、こんなツイートをして話題になっている。そんな視点で考えれば「日本の民度も中韓同様にまだまだだ」ということになりそうだ。
植田直通後援会に依頼されて、何度も修正を重ねてつくった私のデザインは、入稿直前で「地元業者に頼むことにした」と断ってきた。その後になってできたTシャツは私のデザインに非常に酷似している。販売を辞めてほしい。 @Op3j0EuIxQZZK2x pic.twitter.com/PDj11dCWnn— marble (@marble) 2018年6月14日
何より、ヘイトスピーチが公然と行われるような国の民度が果たして高いと言えるだろうか。不適切なコピーを指摘することには何も問題はない。しかし、必要以上に批判の範囲を広げ、ナショナリズムを過剰に煽る為にそれを利用しようとするようでは、決して民度が高いとは言えないだろう。勿論ヘイトスピーチになり得るような言葉を選んで攻撃的な主張をすることは言うまでもない。
確かに、中国や韓国にも偏見による反日を声高に叫ぶ勢力が存在しているようだが、それを理由に同じスタンスで反応するならば、こちら側の民度も団栗の背比べということになってしまう。目には目を歯には歯をなんてのは、2000年以上も前に生まれた価値観だ。