NHKの記事「麻生氏 安倍首相の3選支持強調」によると、麻生氏は新潟県新発田市で行った講演の中で、「アメリカの大統領はトランプさんというユニークなおじさんで、北朝鮮もユニークな人だが、2人の間に入ってトランプ大統領に物が言えるのは、唯一、安倍晋三だけだ」「政権の安定が国際社会での日本の地位を高め、経済も伸ばしてきた。数字の上でもはっきりしている」など、首相への支持を強調したそうだ。そのような発言を彼がすることは何も不思議ではない。誰にでも想像がつく既定路線と言える。しかし、NHKの記事が取り上げているもう一つの発言については酷い違和感、というより強い懸念を感じさせられる。それは、
10代、20代、30代というのはいちばん新聞を読まない世代だ。新聞を読まない人は全部自民党であり、新聞を取るのに協力しないほうがよい。新聞販売店の人には悪いが、つくづくそう思った
という発言だ。
自分はこの講演の全てを聞いたわけでも読んだわけでもない。もし万が一文脈が全く別の意味になるような表現が、この発言以前にあったのなら、NHKや、その他の同じような取り上げ方をしているメディアに問題があるということになる。しかし、今年3月に麻生氏が「(TPP11の署名されたことについて)日本の新聞には1行も載っていなかった」(朝日新聞の記事)という、嘘までついて新聞を揶揄したことを考えれば、紹介された麻生氏の発言は、ほぼ額面通りの発言内容だったと考えても差し支えなさそうだ。
この記事を読んだ最初の自分の印象は、
麻生氏は政策で支持を得ようというより、自民支持者という従属的なロボット、もしくは奴隷のような存在を創り出したい、その為には新聞は邪魔だ、と言っているように見える。まるで独裁者のような発想。
というものだった。勿論受け止め方は人ぞれぞれ違うだろうし、自分の認識がその中で突出して正しいとも思っていない。 ただ、麻生氏が、新聞は自分・自分が属する政権にとって都合の悪い存在と思っている、ということは、3月の発言も併せて考えれば間違いないだろう。3月の発言の後、彼はTPP11について新聞が報道していた事実を突きつけられ、発言を撤回・謝罪しているが、一体彼は何について謝罪していたのだろうか。要するに彼は、口だけで謝罪していたとしか思えない。
また、彼が”新聞”と一括りにしているのにも強い違和感を覚える。自分には少なくとも産経新聞、場合によっては読売新聞なども、比較的政権に寄り添った、麻生氏にとって都合のよい記事を書いているように思える。なぜ麻生氏がそれらの新聞社まで一括りにして批判するのかと言えば、よく彼が記者に対して高圧的な態度を示す朝日新聞や、政権に批判的な記事の多い東京新聞などを名指しして批判すれば、「特定のメディアを弾圧するのか」という批判を強く受けることを理解しているからだろう。しかし、新聞は、という大きすぎる主語でのメディア批判は、「マスコミは偏向している」などと述べる者と大差ない批判、というか場合によっては単に「自分の主張に反する主張は気に食わない」と言っているだけの中傷にすらなり得る。
また、彼の言うように若い世代は新聞は読んでいないかもしれないが、彼らがネットで触れる記事の多くは新聞社の記者が書いて提供した記事が元になっており、紙は読んでいなくとも新聞社の報道は確実に目にしているはずだ。 そして、若い世代に自民支持者が多いということを誇張した表現なのだろうが、「新聞を読まない人は全部自民党(支持者)であり」という発言も確実に威勢が良すぎる。個人的にはまともな政治家がするべきではない扇動のようにすら思える。
たとえば新聞が日本から消滅したらどんなことが起きるだろう。北朝鮮のように政府の息のかかった報道機関だけが残り、政府に都合の良い話だけが垂れ流されることにもなりかねない。麻生氏はこの発言では新聞についてしか言及していないが、新聞社がテレビやネットに記事を多く提供している現状に鑑みれば、そして新聞という彼の表現は、実質的には新聞全てではなく「自分に都合の悪い記事を書く新聞」であろうことを勘案すれば、麻生氏はそんな状況を望んでいると言っているように見えてしまう。どう考えても、そんな発言をしてしまう麻生氏が、まともな感覚を持ち合わせているようには思えない。本当に彼が日本の副総理大臣で大丈夫なのだろうか。彼の主導で財務省の再建が出来るのだろうか。自分には全くそう思えない。