ハフポストが7/12に掲載した記事「学校プール全廃の自治体も。スイミングスクールや市民プールでの授業が広まる」によると、高度成長期に作られたプールの老朽化が進むなか、限られた資源・予算の有効活用・コスト削減の為、プールを撤去して校外の市営・民間プールを使う学校が増えているそうだ。
確かに小中学校の屋外プールの稼働はおよそ6-9月に限られる。言い換えれば一年間のうち1/3程度しか稼働しておらず、維持コストを考えれば予算を有効活用しているとは言えないかもしれない。そんな観点で考えれば、学校プールを廃して市営プールや民間のスイミングスクールを活用して授業を行うのはとて合理的なように思う。記事で指摘しているように、屋内プールであれば梅雨時期の授業計画も予定通りに進むだろうし、スイミングスクールのインストラクターに指導を委託すれば、より質の高い教育内容にも繋がるだろう。ただ個人的には、記事ではこの動きに関して肯定的な側面ばかりを伝えているが、マイナス面もあるように思う。
自分の小中学生時代、夏休みの過ごし方の定番は自治会・子供会が運営する学校プール開放で水遊びをすることだった。小学校の頃は朝のラジオ体操以上に、殆ど毎日のように通っていたし、中学校に入ってからも時間さえ合えば、部活が終わってからプールへ行っていた。また、大学1年生の頃には監視員になって運営する側にもなった。自分が住んでいた地域には、小学生が徒歩・自転車で毎日のように通えるような公営プールもなかったし、水遊びしたり泳いだりできるような川もなかった。もし夏休み期間の学校プール開放がなかったら、泳ぎは今より全然できなかったかもしれない。大袈裟に言えば、水に親しむ機会が減り、水の怖さを知る機会も充分に得られなかったかもしれない。
学校プールが廃止されたら当然学校プール開放もなくなる。徒歩自転車移動圏内に代わりになる場所があるような環境ならそれでもいいかもしれないが、そうでなければ子どもたちが水に親しむ機会を奪うことにもなりかねない。記事によると、神奈川県海老名市は2011年度にすべての小中学校のプールを廃し、その代わりに市内に3カ所ある公共屋内プールを使っているそうだ。海老名市の状況を詳しくは知らないが、おそらく学校プールがあった頃よりも子供たちが気軽にプールを利用できる機会は減っているだろう。
記事では水泳の授業をスイミングスクールに委託し、専門のインストラクターが指導に携わることで、飛び込みなどの事故が減るというメリットにも触れているが、もし学校プールが廃止されることによって、子どもたちが授業以外で水に親しむ機会が減るようであれば、水の怖さを知る機会が減ってしまうという側面もあるようにも思う。専門性の高い指導である程度はカバーできるかもしれないが、子どもは論理的な説明ではなく、不意に足をつって溺れそうになったり、友達がそうなるのを目の当たりにするなどの実体験を通して、感覚的に危険性を学ぶという側面が確実にあるだろう。ならば水に触れる機会、泳ぐ機会が減ることは好ましいとは言えない。
記事は、兎に角コストの面から学校プール廃止のメリットを強調しているように自分には見える。確かに稼働期間の長いとは言えない屋外プールを維持するコストは決して安いとは言えないし、その分の予算が他の教育に関する施策に割けるのならば、それは合理的なのかもしれない。しかし、学校にかかるコストを削減しようという動きを否定する訳ではないが、必要性のあるコストならそれを支払うのは何も問題はなく、コスト削減が必ずしも正しいわけではないだろう。勿論全ての学校にプールを維持しなくてもいいかもしれないが、せめて小学校低学年の子どもでも、徒歩・自転車で通える範囲に1つくらいはプールを残すほうがいいのではないか?とこの記事を読んで感じた。