スキップしてメイン コンテンツに移動
 

労働者派遣法と外国人技能実習制度の類似点


 「ベテランを中心に派遣切りが横行」、今朝のMXテレビ・モーニングCROSSで取り上げられた、”関東が注目したニュースランキング”・5位の見出しである。


 言いたい事は2つある。まず”関東が注目した”ではなく、”関東で注目されたニュースランキング”がより適切な表現だろう。勿論”関東の人たちが注目した”という意味で”関東が注目したニュースランキング”としているのだろうが、バラエティ番組ならまだしも、報道番組ではもう少し適切な表現を心掛けて欲しい。
 また、このニュースの見出し・読み上げられた原稿から推測するに、このニュースは確実に、西日本新聞の掲載記事「ベテラン派遣切り横行 「3年超せば正社員」回避か 9月「義務化」前に“雇い止め”相次ぐ」、若しくはその記事をライブドアニュースが転載した記事「ベテランを中心に派遣切りが横行「3年を越せば正社員」を回避か」を引用している。にもかかわらず、番組ではその出典の掲載は一切なかった。いつもは取り上げる記事の殆どで出典の掲載があるので、単にケアレスミスか、若しくは相応の理由があるのかもしれないが、もし前者ならば気を引き締めて欲しい。


 モーニングCROSSの問題点はこれぐらいにして記事の内容について考えたい。派遣労働者を同じ組織に派遣できる上限を3年と定め、それを超える場合は直接雇用契約に切り替えなくてはいけない、要するに正社員待遇しなくてはいけないということを、2015年に定めた改正労働者派遣法に関する話で、2018年9月末にこの規定が適用されてから3年が経つのを目前に、該当する派遣労働者の雇止め、要するに正社員待遇を与えることを避ける為とみられる派遣労働者の首切りが増えているという内容だ。
 このような懸念は、2015年当時、改正労働者派遣法が成立する以前から指摘されていた。要するに懸念が現実になりつつあるだけの話である。この法案を充分な対策だと胸を張って成立させた人達はどのように受け止めているのだろう。同じ人達が、やれ裁量労働制の拡大だとか高プロの必要性だとかを声高に叫び、高プロについては成立させてしまったことは大変に不安で仕方ない。労働者の立場をほぼ経験したことがない人が政権を握っているのだから、こうなるのも自然の成り行きなのかもしれないが、素晴らしい政治家とは、直接的な経験がなくても様々な人の立場に立って政策を行える人だろうから、決して仕方のないこととは言えないだろう。

 朝日新聞の記事「建設業を学ぶはずが…福島で除染 憤るベトナム人実習生」などが伝えているように、昨今、外国人技能実習制度の問題点が様々指摘されている。この記事では、外国人技能実習生の意思に反して除染作業をさせたという件が紹介されているが、そもそも技能実習とは名ばかりで、安い働き手の調達法として制度が利用されているという話はかなり前から指摘されている。
 制度を利用する企業や団体や外国人ら全てに関して、そのような側面が強いという認識は誤りかもしれないが、前述の派遣切り・雇止めの話を目の当たりにすると、技能実習制度も労働者派遣法も、結局のところ安い労働力の調達手段として利用、というか悪用されているんだな、と感じてしまう。勿論日本人だろうが外国人だろうが労働環境は守られるべきだが、国内の労働者すら買い叩こうということなら、外国人労働者などを更に買い叩こうとするのは当然の事かもしれない。

 財務省や日銀・政府などは景気がよくなっているという印象を醸し出すことに躍起になっている。景気は病同様”気の持ちよう”である部分も多く、景気が良いという印象を作り消費につなげることの必要性がないとは言えないが、労働者層の実質賃金は下がっているのに、やれ株価があがったとか物価が上昇傾向だとか、輸出が堅調だとか言われたところで、景気の上向き傾向など実感できるはずもなく、個人的には財務省や日銀・政府に騙されているような気さえする。
 このような事を言うと、「それでも旧民主党政権よりは確実にマシ」「安倍首相以外は消費増税に積極的で、首相が変われば確実に状況は悪化する」のような反論が返ってくる。ある意味では、そのような主張も一理あると思いつつも、そんな主張をしている人達を見る度に自分は、映画「マトリックス」で、機械が人間を飼いならす為に作り出した幻想の世界を選び、機械による支配からの脱却を目指すのは愚かだとして、キアヌ リーブス演じる主人公たちを裏切ったキャラクター・サイファーみたいだ、と感じてしまう。

このブログの人気の投稿

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになる

 攻殻機動隊、特に押井 守監督の映画2本が好きで、これまでにも何度かこのブログでは台詞などを引用したり紹介したりしている( 攻殻機動隊 - 独見と偏談 )。今日触れるのはトップ画像の通り、「 戦闘単位としてどんなに優秀でも同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになるわ。組織も人も特殊化の果てにあるものは緩やかな死 」という台詞だ。

フランス人権宣言から230年、未だに続く搾取

 これは「 Karikatur Das Verhältnis Arbeiter Unternehmer 」、1896年ドイツの、 資本家が労働者を搾取する様子を描いた風刺画 である。労働者から搾り取った金を貯める容器には、Sammel becken des Kapitalismus / 資本主義の収集用盆 と書かれている。1700年代後半に英国で産業革命が起こり、それ以降労働者は低賃金/長時間労働を強いられることになる。1890年代は8時間労働制を求める動きが欧米で活発だった頃だ。因みに日本で初めて8時間労働制が導入されたのは1919年のことである( 八時間労働制 - Wikipedia )。

馬鹿に鋏は持たせるな

 日本語には「馬鹿と鋏は使いよう」という慣用表現がある。 その意味は、  切れない鋏でも、使い方によっては切れるように、愚かな者でも、仕事の与え方によっては役に立つ( コトバンク/大辞林 ) で、言い換えれば、能力のある人は、一見利用価値がないと切り捨てた方が良さそうなものや人でも上手く使いこなす、のようなニュアンスだ。「馬鹿と鋏は使いよう」ほど流通している表現ではないが、似たような慣用表現に「 馬鹿に鋏は持たせるな 」がある。これは「気違いに刃物」( コトバンク/大辞林 :非常に危険なことのたとえ)と同義なのだが、昨今「気違い」は差別表現に当たると指摘されることが多く、それを避ける為に「馬鹿と鋏は使いよう」をもじって使われ始めたのではないか?、と個人的に想像している。あくまで個人的な推測であって、その発祥等の詳細は分からない。