2015年に拉致された疑惑が浮上し、2016年にシリアで武装勢力によって拘束されたことが明らかになったジャーナリストの安田純平さん。銃を突き付けられながら彼が助けを求める姿が撮影された映像が7/31に公開されたことを受けて、これまで安田さんの救出活動への悪影響を避ける為に表立った主張を控えていた彼の妻が、8/7に会見を開いたそうで、ハフポストは「安田純平さんの妻Myuさん、3年の沈黙を破って会見 「一刻も早く帰ってきて」という見出しでこれを報じた。
この記事に、
会見はちゃんと本名でやれ。なんだよmyuて。ばかにしてるのかというコメントが付いている。安田さんの件に関しては、2016年当時から所謂自己責任論を振りかざし、過剰に批判する声、中には誹謗中傷としか言えないような声も決して少なくなかった。彼の妻がこれまで表に出なかった理由は、記事では「救出活動への悪影響を避ける為」とされているが、恐らくこの手の誹謗中傷を避ける為という側面もあっただろう。だから今回の会見もMyuという名義を使わざるを得なかったのだろうと推測するが、短絡的な人にはどうもそれすら察することが出来ないようだ。
自分もこの記事のコメント欄に受け止めを書いた。それは、
> 菅官房長官が、会見でおっしゃったことを信じてきましたし、これからも家族として信じたいと思いますという内容だった。2016年以来既に約2年以上経つのに、安田さんに件には進展がみられない。また、北朝鮮の拉致問題に関しても政府は同じような姿勢なのに進展はみられないし、昨年来現政府はいくつかの不祥事に関して「真摯な受け止め」とか「丁寧な説明」などと言いつつ、具体的なことは殆ど何もしないし、それどころか次々に似たような不祥事が頻発している。このようなことから判断すると、菅官房長官が8/1の記者会見で示したという、
昨年来の政権の姿勢を見ても同じ思いなのかな。 と言っても、他にすがることの出来るような話でもないし、 信じる以外にどうすることも出来ないだろう。 あまりにも不憫でしかたない。
政府として邦人の安全確保は最大の責務だ。さまざまな情報網を駆使して全力で対応に努めているという姿勢も、結局のところは建前で、本当は大したことはしていないのではないか?と思えてしまい、しかしそれでも藁にも縋る思いでその言葉を信じるしかない、安田さんの妻や親族らは不憫だという思いを込めてそう書いた。
この自分のコメントに対して、似たようなリプライが3件あった。
ならば、あなたが身代金(の一部でも)を出してさしあげればよろしいのでは? 政府を馬鹿にしていた安田氏の行為に共鳴するあなたのような人達が助けてあげるのが筋でしょう。
そもそも政府が行くなと言っているのに、何故行くのか。
彼は「自己責任だから行く!!」と言って無理やり行ったのだから、自己責任ということで政府が動く必要は無い
取材がうまくいって富や名声が手に入れば個人のもの…失敗した場合は血税を使って助けてくれですか。あなたがた有志が身代金を負担すればいいのでは。彼らの言っていることは総じて、自己責任論を根拠にした「政府は積極的に安田氏救出に動く必要はない」という主張であり、その理由は必要のない余計なリソース、特に税金が原資である国家予算を身代金に投じるべきではなく、安田さんを助けたいなら民間有志で身代金を工面しろ、ということのようだ。
そもそも彼らは記事も私のコメントもちゃんと読んでいない様である。何故なら記事には、安田さんの妻が、
身代金については、一切わたしの方にはまったく(情報が)入ってきていません。コンタクトもなければ、そのような身代金という言葉も来ていないのが事実ですと言っているという記述がある。また自分は、身代金を政府が出すべきだなんてことを一切元のコメントに書いていない。菅氏の「全力で対応」という言葉には信憑性がないと書いただけだ。なのに何故か彼らのなかでは、それは「身代金を政府が出さないのはおかしい」という話に飛躍してしまうようだ。
また、彼らが「政府は積極的に安田氏救出に動く必要はない」とか、「安田氏救出に国家や予算(要するに税収の一部)を投じる必要はない」と考えているのなら、批判すべきは菅氏の示した、言い換えれば政府の方針でもある「さまざまな情報網を駆使して全力で対応に努めている」という姿勢ではないだろうか。身代金を政府が払うか否かは別として、情報網を駆使して全力で対応するには、当然予算も人的コストもかかる。そのコストも結局のところ国家予算から支出されるわけだし、税収を無駄に使うなというのであれば、菅氏や政府に対して「安田氏の件については、全力どころか一切対応する必要などないのに、何を言っているのか」となるのが自然だろうが、そう指摘しても彼らからは、少なくともこの投稿を書いている時点では、全く返答はない。
そのようなことを考慮すると、彼らの主張は行き当たりばったりだとしか評価できない。中には所謂逆ギレのようなリプライを返してくる者もいたが、馬鹿馬鹿しいのでここでは割愛する。気になったなら当該記事のコメント欄を確認して欲しい。
この記事には、彼ら以外にも似たような自己責任論を主張するコメントが多数寄せられている。その多く主張は、安田さんが以前政府に対して批判的なコメントを表明していたことなども理由の一つとしているようだ。全てがそう言っているわけではないが、政府批判をした者に政府は一切手を差し伸べる必要がないのだとしたら、社会福祉政策の恩恵を少なからず受けている全ての国民は、一切政府批判が出来なくなるということにもなりかねない。彼らは、中国共産党が支配する中国や北朝鮮労働党と金一族が支配する北朝鮮のように、国民がそれらを批判すればたちまち口をふさがれるような国を望んでいるのだろうか。「発想が余りにも短絡過ぎる」という以外の評価が見当たらない。