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自民総裁選からに滲み出るキナ臭さ


 実質的に日本の総理大臣を決める事になる自民党総裁選が来月行われる。NHKの記事「安倍首相 きょう総裁選立候補表明 6年ぶり選挙戦」によると、安倍氏は今日正式に総裁選への立候補を表明するそうだ。正式表明などと言いつつ、既に数か月も前から自民党内では安倍氏を支持する勢力が優勢だと伝えられている。
 候補者が正式に立候補を表明する前から安倍氏支持の表明があるのは、勿論他薦という観点もあるから明確におかしいなどと言う話ではないが、不自然だと感じる。自民党内の派閥とは一体なんなのだろう。政治的な志向が異なるから派閥が分かれているのだろうに、自分たちの派閥から立候補者を立てるという選択に至らず、なぜ立候補を表明してもいない他派閥の人物への支持を表明するのかとても不思議だ。逆に言えば、水面下で既に駆け引き交渉等が蠢いているということなのだろうから、結局正式表明なんてのは単なる形式的な出来事に過ぎないのだろう。


 自民総裁選について、朝日新聞が8/22に「石破氏の首相批判、修正求める参院竹下派 しこりを懸念」という記事を掲載していた。石破氏は安倍氏よりも先に総裁選への立候補を表明しており「正直、公正、石破 茂」というスローガンを掲げていた。このスローガンは、石破氏が8/12に放送されたTBS・時事放談の中で
 政府は正直にものを言っているか、証拠を書き換えたりしていないか、すべての人に公正か、はっきり言えば、えこひいきがないかということだ
と述べたことからも分かるように、昨年来取り沙汰されている森友・加計問題などに関して、政府側の説明に納得できないと答える人の方が多いという世論調査の結果などを踏まえ、現政権の姿勢に疑問を呈し、それを改める姿勢を強調したものだろう。
 朝日新聞の記事が伝えているのは、石破氏支持の姿勢を表明している竹下派・参議院幹事長の吉田 博美氏が、この「正直、公正」という石破氏が掲げたスローガンや、前述の発言などについて、
 個人的なことで攻撃していくのは非常に嫌悪感がある
と述べたことだ。記事によると、吉田氏は石破氏を積極的に支持している訳ではなく、竹下派に影響力を持つ青木 幹雄氏や派閥の長である竹下氏の意を汲んで、石破氏の支持に回っている人物なのだそうだ。

 朝日新聞は8/25に、この件に関する続報「石破氏、キャッチフレーズ「正直、公正」を封印へ」を掲載した。記事のよれば、石破氏が掲げたキャッチフレーズ「正直、公正」を今後使わない考えを示し、その理由は「安倍首相への個人攻撃」との反発が党内に根強く、支持拡大の妨げになっているからなのだそう。
 前述のように森友加計問題への政府側の対応について、世論調査では軒並み半数以上が政府側の説明に納得できないと答え、場合によっては7割近くがそう答える場合もある。そのような国民の声も全て安倍氏への個人攻撃という認識が自民党内では有力だということなのか。また、石破氏が批判の中で主語に用いているのは”政府”である。政府とは組織であって、安倍氏個人を指す表現ではない。勿論他の大臣・閣僚も含まれるし、場合によっては政府側の答弁に立つ官僚も含まれるだろう。自民党内では、政府=安倍氏個人そのものという認識が有力ということなのだろうか。そんな考えはまるで独裁国家のようだし、昨年来不適切な答弁を行った政府関係者、政府の立場に有利に働くような不適切な行為に及んだ官僚が一体何人いただろう。石破氏のその手の批判を、安倍氏への個人攻撃と解釈するなんて勘違いも甚だしいとしか言いようがない。個人的には石破氏の足を引っ張りたいが為の言い掛かりとしか思えない。

 産経新聞は8/11に「覚悟問い圧勝目指す「現職に辞めろと迫るのと同じだ」 安倍晋三首相、党員票にも自信」という、安倍氏が自民党山口県連の会合で述べたスピーチに関する記事を掲載している。安倍氏はスピーチの中で総裁選を見据え、
 6年前は谷垣禎一総裁(当時)の出馬断念があったが、今回はよーいドンで新しく総裁を選ぶのとは違う。現職がいるのに総裁選に出るというのは、現職に辞めろと迫るのと同じだ
と述べたそうだ。まず、今日するとされる総裁選立候補の正式表明が形式的なものであることがよく分かる。しかし注目すべきは「現職がいるのに総裁選に出るというのは、現職に辞めろと迫るのと同じだ」という表現で。この記事を書いた産経新聞の記者の見立てでは「国政選挙で自民党を前例のない5連続勝利へと導き、各種経済指標も向上させてきたうえ、外交面でも成果を挙げている自分を、何のために代えようというのか」という思いの表れなのだそうだが、なんと安倍氏贔屓な見立てか。選挙というのは、現職よりも自分が相応しいと思う立候補者がいるから成立するのであって、「現職が続投の意思を示しているのに、他の者が水を差すな」と言いたげにも見える発言を、しかも現職本人がするのは如何なものだろうか。
 日本の隣に北朝鮮という国がある。この国にも一応選挙はあるようだが、適切にそれが機能しているとは到底言えない。ある一族が世襲で指導者を独占している。要するに現職が続投の意思を示しているから、他の者は水を差すなという体制だ。安倍氏の前述の発言は「北朝鮮のような体制をつくろうとしているのか?」とすら思えてしまう発言だ。

 石破氏の主張・スローガンを安倍氏の個人攻撃だとしたり、その安倍氏が「現職がいるのに総裁選に出るというのは、現職に辞めろと迫るのと同じだ」なんて言ってしまうのを見ていると、自民党は安倍氏を中心とした独裁国家をつくり、朝鮮労働党や中国共産党のような体制を目指しているのかも、なんて疑念すら抱いてしまう。勿論現時点では単なる取り越し苦労の可能性もなくはないが、そのような懸念が確信に変わってからでは何もかもが遅い。他にも自民議員の傍若無人な主張は多く、この件だけで疑念を抱いている訳でもない。
 勿論、日本には現状中国や北朝鮮にはない民主的な選挙がある。言い換えれば、国民は不適切な政治家に対して、今はまだノーを突き付けることが出来る。しかし、民主的な判断が必ずしも正しい判断に至るとは限らない。ナチス政権だって民主的な手法で選ばれた政権だし、日本でも民主的な政治体制の元で、優生保護法なんて馬鹿げた法律・制度がおよそ50年物間も続けられていた。国民一人ひとりには正しい判断を行う責任があるし、間違った判断をすればその影響は確実に自分たちにはね返ってくる。自分は関係ないなんて思っている人がいたとしたら、それこそ「平和ボケ」なんだと個人的に思っている。

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