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口だけ反省は聞き飽きた


 杉田議員のLGBT差別発言について、やっと自民党・安倍首相が昨日・8/2に所感を示した。BuzzFeed Japanの記事「自民党本部、杉田水脈議員に「指導」 LGBTめぐり「理解不足と配慮を欠いた」と指摘」によると、自民党は党として、杉田氏に”指導”をしたそうだし、同じくBuzzFeed Japanの記事「杉田氏のLGBT寄稿問題で安倍首相「多様性尊重は当然」 党本部も杉田氏に指導」によると安倍氏は、

 人権が尊重され、多様性が尊重される社会を目指すのは当然だ。これは政府、与党の方針でもある

と述べたそうだ。自民党や首相が杉田氏の主張に対して違和感を示したことは、好意的に受け止められることでもある。しかし、問題が表面化してからおよそ2週間も経つまで、また、先週末にデモが行なわれるまで、そして批判が止まないという状況を勘案すると、これまで一部の議員を除いて自民党の幹部や首相が沈黙してきたことで、また杉田氏以外にも、似たり寄ったりな主張をする者、彼女を擁護するような者が相応にいたことから、少なくとも自分は、自民党内の人権意識の低さに強い懸念を抱いている。そんな中で「指導」程度の処分がこのタイミングで、しかも杉田氏だけにされたとしても焼け石に水としか思えないし、自ら先頭を切って処分も対応もせず、懸念を示す程度のコメントしか出来ない安倍氏も、結局世論を窺っただけの、お得意の口だけの姿勢・単なるポーズ示したに過ぎないとしか思えない。


 また、同じく8/2に党幹事長である二階氏は、

 こういうことはそんなに大げさに騒がないほうがいいんです。この程度の発言があったからと言って、帰国してからどうだってそんな話じゃありません

と述べたそうだ(朝日新聞の記事)。どう読んでも「杉田氏の発言は大袈裟に騒ぐほどの大した問題ではない」と言っているようにしか見えない。党幹事長がこのようなことを言っているということは、デモに参加した人、異論を唱えている人は大袈裟に騒ぎ過ぎだと、自民党自体が言っているも同然だろう。他の自民党政治家から否定どころか二階氏の発言に違和感すら示されないということがそれを如実に物語っている。
 ということを勘案すれば、自民党が行ったという指導も、首相が示した違和感も、結局ポーズでしかないという懸念は更に強まる。

 自分が特に不思議に思うのは、これまで杉田氏を擁護していた議員や、ネット上で擁護する姿勢を示していた者は、なぜ安倍氏に対して「杉田氏の主張は党の方針とは違う? 安倍は何をいっているんだ!」と批判しないのか、ということだ。
 ハフポストが、雨宮処凛さんのブログ投稿を転載して掲載したの記事「「生産性」より「無条件の生存の肯定」」のコメント欄で、自分のコメントに対して、杉田氏を擁護する旨のリプライしてきた人がいたので、この疑問をぶつけてみた。すると彼は、


党の方針とは異なる、だが杉田議員に対して撤回せよとは言ってませんね?これこそ多様性の可能性なんです、何も間違っていませんよ?

 と返答してきた。細かいやりとりは記事で確認して欲しい。
 彼の解釈では、杉田議員の発言は行き過ぎだが、彼女の主張も多様性として受け止めるべき、と
安倍氏が言っていることになっているようだが、杉田氏の発言は、LGBTや、それ以外の子どもを産めない者、産まない者への差別・偏見としか言いようがない。言い換えれば、多様性の軽視であり、安倍氏が示した見解、人権の尊重・多様性の尊重を目指すという方針とは、確実に相反する内容である。そしてそれは安倍氏も党の方針とは異なるとして認めている。万が一杉田氏のような主張も多様性として尊重するべきなんて安倍氏が言っているのであれば、それこそ安倍氏は矛盾したことを言っていることになる。多様性を軽視する主張も多様性として尊重するべき、なんて矛盾を孕んだ話を安倍氏がしているとか、だから何も間違いはない、なんて複数の点でおかしな解釈をする者が、他人に対して「論理破綻」を指摘しているのはかなり滑稽だ。
 この人は愚かにもこのような馬鹿げた主張を堂々としたが、杉田氏を擁護していた議員・容認した議員が、安倍氏の「党の方針と異なる」という見解に異論を示さないということは、彼らもこの人と概ね同じ様な考え方なのだろう。もしそうでないなら、安倍氏の見解に少なくとも違和感は示しているだろうし、若しくは逆に自分は間違っていたという意思表示がされて当然ではないか? なぜなら安倍氏は党方針について言及しているからだ。それとも彼らは、自分の主張や考えなどない単なる腰巾着、若しくは誰かの操り人形なのだろうか。党側が杉田氏だけでなく、擁護・容認した議員にも「指導」をしたと発表しないのは何故だろうか。議員も党も、そして安倍氏ら幹部も兎に角やり過ごせばいいと思っているようにしか見えない。
 

 当本人の杉田氏は、昨日の「指導」報道を受けて、産経新聞の記事「自民・杉田水脈議員「真摯に受け止め研鑽につとめる」 LGBT寄稿で党の指導受けコメント」によると、見出し通りのコメントに留まり、謝罪の意思は全く示していないようだ。結局自民党が彼女に何をどう指導したのかと言えば、「世論がうるさいから、気をつけろ」という程度なのだろう。
 杉田氏が以前ツイートした、

  自民党に入って良かったなぁと思うこと。 「ネットで叩かれてるけど、大丈夫?」とか「間違ったこと言ってないんだから、胸張ってればいいよ」とか「杉田さんはそのままでいいからね」とか、大臣クラスの方を始め、先輩方が声をかけてくださること。 今回も他党の議員が私が雑誌に書いた記事を切り取り
 ネットに出したことで色々言われています。LGBTの理解促進を担当している先輩議員が「雑誌の記事を全部読んだら、きちんと理解しているし、党の立場も配慮して言葉も選んで書いている。言葉足らずで誤解される所はあるかもしれないけど問題ないから」と、仰ってくれました。自民党の懐の深さを感じます

で示唆された、大臣クラスの先輩方が彼女を「そのままでいい」と擁護している、ということをについて、「指導」云々の見解発表の中で否定していないことも、そう感じさせる理由の一つである。
 何度も書いていて自分でもウンザリしてくるが、これまで示した複数の根拠から、自民党や安倍氏が昨日示した姿勢は、単なるポーズでしかないとしか言いようがない。

 昨日来、特にテレビはボクシング協会の案件にご執心で、このままだと、政府与党の政治家の人権軽視、言い換えれば憲法軽視という、とても深刻な事態が、彼らの思惑通り単なる1つのニュースとして処理されかねないという懸念も感じる。幸いな事に、テレビ以外のメディアやSNSでは、直近の大きな懸案・ボクシング協会、東京医大の女性蔑視問題と、この件について相応にバランスの取れた扱いがされているように思う。テレビは他のメディアより扱える案件に制限があることは理解するが、それでも影響力の大きいメディアとしての責任を是非果たして欲しい。

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