オリンピックの猛暑対策として、実行委員会 会長の森 喜朗氏がサマータイムの導入なんてことと言いだし、安倍首相も「内閣としても検討する」という考えを示したそうだ(朝日新聞の記事)。しかし、官房長官の菅 義偉氏は「国民の日常生活に影響が生じ、大会までの期間が2年と限られている」と否定的な見解を示しているらしい(産経新聞の記事)。
東京オリンピックを機にサマータイム導入を、と森氏が言い出したのは今回が初めてではない。2014年にも提案し強い反発を招いている(ハフポストの記事)。当時から強い反発があったのに首相は、NHKの記事によると、
サマータイムの導入は国民の評価が高いと聞いている。内閣としても考えるが、まずは党のほうで先行して議論してもらいたい
と述べたそうで、彼の言う国民とは一体誰なのだろうか。高プロ導入についても、たった数人の聞き取りを根拠に「労働者側にも需要がある」などと言い張る政権だから、恐らく、彼の言う国民とは、彼の周りの数人のことなのだろう。また、首相と官房長官の言っていることが食い違っていることも心配だ。
また、昨日・8.7に毎日新聞が「天皇代替わり 公務員懲戒、免除を検討 佐川氏対象か」と報じた。来年に予定されている天皇陛下の退位・新天皇の即位に合わせて、政府が国家公務員が過去に受けた懲戒処分の免除を行うことを検討し始めたというのだ。自分が知っている天皇の代替わり・昭和から平成への代替わりの際にも所謂恩赦が行われた記憶があるし、このようなことは、中世以前から行われてきたわが国の伝統でもあるようだ。
ただ、伝統というだけで今回も実施するべきかと言えば、個人的には全くそうだとは思えない。そもそも、国家公務員への恩赦を行政機関が検討し始めるというのは妥当だろうか。記事での主語は”政府”とされており、必ずしも内閣が検討し始めたということではないのかもしれないが、この場合の「政府」が指しているのは、内閣・国会・裁判所などを含めた広義の政府ではなく、内閣と彼らが統括する役所を指した狭義での「政府」だろう。行政機関が身内への恩赦を主体的に検討するのは適切なのだろうか。少なくとも立法機関であり、国民の直接的な代表である国会議員が検討をするべきではないのか。要するに、検討の主体は建前上でも与党・自民党であるべきだ。
勿論毎日新聞の記事が100%適切ではなく、自民党総裁でもある首相が、自民党に検討を指示した可能性もある。サマータイムの検討に関しては政府が検討しているのか、自民党が検討しているのか、首相のコメントもメディアの記事も曖昧で、実際がどのような話なのかは分かり難い。ただ個人的には、与党・自民党は限りなく内閣と一体的な組織であり、自民党や公明党だけの賛成で国家公務員への恩赦を実施するのは不適切だと考える。しかし昨今の国会運営を見ていると、この話も結局は数の力で押し切るような気がしてならない。
この「国家公務員の懲戒処分免除」報道に関して、菅官房長官は「あり得ない。明快に否定する」と述べたそうだ(時事通信の記事)。このコメントが菅氏のコメントでなければ、毎日新聞の勇み足なのかな?と思えたかもしれない。しかし冒頭で紹介したように、サマータイム導入検討について、首相と官房長官の言っていることが食い違っていることを考えれば、菅氏の主張を額面通りに受け取ることは出来ない。本当に「国家公務員の懲戒処分免除」の検討自体がないのか、菅氏が知らないだけなのか、菅氏は知っているが認めないだけなのか、言い換えれば嘘をついているのか、いろいろな場合が考えられる。
この話があり得ない話ではないと思えてしまう理由は他にもある。財務省の公文書改ざんの問題を受けて、麻生財務大臣は職員20名の処分と地震の閣僚給与返納を6/4に発表した(ロイターの記事)。また、セクハラ問題で空席になっていた事務次官ポストを7/27に発表したが、麻生氏が任命したのは改ざん当時の官房長だった岡本 薫明氏で、彼は処分を受けた20名のうちの1人である。人選の理由を記者に記者から「大臣の認識としても今回の人事はベストか」と問われた麻生氏は、
思ったから私が任命した。人事権はあなたでなく俺にある
と述べたそうだ(朝日新聞の記事)。人選の理由は人事権を持つ俺が思ったから、では、麻生氏にとってだけ適切な人選であるという懸念を感じざるを得ない。このような恣意的な判断の恐れがあるコメントを、恥ずかしげもなく、しかも副首相が行うような政権であれば、毎日新聞が報じたように、佐川氏の救済?に動いているということもあり得ない話ではない。
例えば、森友・加計問題以前、少なくとも財務省の公文書改ざん、自衛隊の日報隠蔽、厚労省のデータねつ造がなければ、菅氏の「あり得ない」というコメントを信じることが出来たかもしれない。しかし、現政権の信頼性は、少なくとも自分の中ではちに落ちている。流石に中国共産党程ではないかもしれないが、その一歩手前くらいまでは間違いを認めない組織になっていると思っている。菅氏の「あり得ない」が本当ならそれでいいが、手放しで信じるわけにはいかない。これからも常に注目を止めてはならない。