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期待に欠ける2人の総裁候補


 実質的に総理大臣を選ぶ与党の総裁選が始まった。実際には「始まった」と言っても、数か月前から総裁選に向けた動きは公然と行われ、また報じられており、厳密には、公示を受けて「本格的に総裁選が始まった」と言うのが正確だ。立候補したのは現職の安倍氏と、対抗の石破氏だけだ。公示前から安倍氏を支持する国会議員は7割とも伝えられており、出来レースなんてことを言う人たちもいる。本人らは公示前から方針・姿勢を示しているのだし、総裁選がなかろうがどちらに考えが近いのかということは、国会議員なら意識もするだろうから、公示前に支持表明があってもおかしくはないのだろうだ、論戦も何もないのに支持が固まっているのも変だとも感じる。
 9/6に北海道で大きな地震が起きたことを受け、石破氏は総裁選の延期も検討するべきではないかと訴えていたが、結局延期ではなく、予定通り公示は行うものの最初の週末は震災対応の為選挙活動を自粛するということになり、昨日が公示後の本格的な選挙戦の初日で、二人の候補者が初めて揃う立ち会い演説会が行われた。


 自分はまずこの会の内容を、BuzzFeed Japanの記事「安倍VS石破 総裁選で二人が見せた5つの違い」で読んだ。記事を読んで受けた印象は、2人とも耳障りのいいことを言っているに過ぎないように感じられた。今後自分が総裁になった後のビジョンというか見通しというか、目指す目標は掲げている。しかし具体的にどうやってその目標を実現するのかについての説明は殆どなく、綺麗ごと・理想論を並べるだけで具体策に欠ける選挙戦を展開することが多い共産党の姿勢と大差ないように見えた。ただ、安倍氏がこれまでの成果を強調することを重視し「成果を見れば掲げた目標を実現できることが分かるでしょ?」と言いたげに見えたのに対して、石破氏は少なくとも安倍政権のこれまでの問題点にも触れ、一応問題点を直視する姿勢で話をしているようには見えた。
 安倍政権下で株価は上がり、雇用もある程度改善したことは事実だ。しかし石破氏が指摘したように可処分所得は寧ろ減っているし、政権当初から掲げている物価上昇率2%という目標は延期に次ぐ延期で、今では達成時期すら取り下げる状況にある。成果を誇るのは構わないが、問題点もあるのにそれには触れないような安倍氏の姿勢には、自分は誠実性を感じることが出来ない。彼の誠実性が疑わしい理由は勿論この他にもある。

 BuzzFeed Japanの記事だけを見て鵜呑みにするのはどうかと思い、比較的政権寄りの記事が多い産経新聞の記事にも目を通した。産経新聞は【自民党総裁選・共同記者会見詳報】として
と5つの記事に分けて、発言の全てなのかは定かでないが、かなりの分量で2人の発言(と記者の質問)をそのまま掲載している。これを読んでみると、BuzzFeed Japanの記事では削ぎ落されている部分も多く、BuzzFeed Japanの記事を読んで感じた印象よりは幾分話に具体性を感じることは出来るものの、実は具体性ではなく単に具体的な数字を列挙しているだけのような気もする。BuzzFeed Japanの記事から感じた2人絵のネガティブな印象は、産経新聞の記事によってやや緩和されたものの、安倍氏が成果の誇示に終始しているという印象は変わらないし、石破氏はこれまでの問題点に触れているという点には間違いはないと再確認もできた。
 要するに、詳細にやり取りが掛かれた産経新聞の記事を見ても、安倍氏の誠実性に疑問を感じるという点に変化はなかった。

 産経新聞はこの演説会に関して「所見演説会開始 安倍晋三首相、国土強靱化の緊急対策を3年かけて実施 「謙虚、丁寧に政権運営したい」」という記事を掲載し、安倍氏が
 さまざまな批判を真摯(しんし)に受け止めながら、改めるべきは改め、謙虚に丁寧に政権運営をしていきたい
と述べたことを取り上げている。産経新聞がこの発言をどのような理由で重視して、1つの記事として取り上げたのかは定かでないが、前述したような理由、自衛隊の日報問題や森友学園・加計学園問題、財務省の公文書改ざん問題などへの対応についても、同じような発言を再三再四繰り返したのに、大した説明もなく、今後の明確な防止策も示されていないのだから、彼が用いる

真摯・丁寧・謙虚・改めるべきは改める
なんて言葉は、「まさに口先だけの、いわば体裁を繕うだけの言葉に過ぎない」ということは、少なくともこの約2年だけで身に染みている。真摯だの丁寧だの謙虚だの言っているのに、世論調査を行うと軒並み6割以上の国民が「森友・加計問題の説明に納得できない」と回答するのは何故だろうか。
 にもかかわらず現政権への支持は大きくは下がらず、支持理由として最も多いのは「他より良さそう」だという結果が出ることは、自分には全く理解できない。成果は誇るが問題点には殆ど触れない姿勢を見れば、様々な批判を真摯に受け止めるつもりがないことは明らかだし、その他の理由でも産経新聞が注目したセリフに全く信憑性がないと受け止めることは、確実に不適切な見解とは言えないのではないだろうか。

 彼が「他よりマシ」なのだとしたら日本は極端な人材不足だと言わざるを得ない。言い換えれば、彼が「他よりマシ」なんて話は全然受け入れられないし、彼が「他よりマシ」と考えている人は、彼と同じで都合の悪いことに目を向けないタイプの人だとしか思えない。

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