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パワハラといじめと劣悪な労働環境


 今年の3月頃、レスリング協会でのパワハラ、日大アメフト部での悪質タックルの指示が表面化した。その後ボクシング・体操・ウェイトリフティングなどの協会内でもパワハラがあったことが明るみになり、個人的にはセクハラ問題同様、スポーツ界パワハラ問題でもMeTooムーブメントと似た動きが起きていると感じている。これらの問題の大きな転機だったのは、監督に悪質タックルを命じられて、と言うか実質的には強要されて実行してしまった選手が、自分の行為を恥じつつも、あのプレーにどんな背景があったのかを記者会見で詳細に語ったことだと感じる。記者会見に臨むのにはかなり勇気がいることだっただろう。彼のあの行動があったから問題が有耶無耶になることもなかったのだろうし、それがその後、各スポーツ界で似たような話があることが明るみになることのきっかけになったのだろうし、また、体操の宮川選手にも会見に臨む勇気を与えたと思う。このような動きが、未だにスポーツ界に根強く残る我慢根性を必要以上に求める風潮が、少しでも改善することのきっかけになって欲しい。


 BuzzFeed Japanは9/13に「スポーツ界のハラスメント。トップ選手よりひどい暴力指導が、部活にはびこっている」という記事を掲載した。記事の内容の大部分は頷ける話で、特に大きな異論はない。しかし一つ残念なのは、この記事が部活・学校での話だけで終わってしまっている点だ。この記事で指摘しているようなことは部活動や学校に限った話ではなく、サービス残業を強要したり、パワーハラスメントが横行する所謂ブラック企業でも同じことだからだ。記事はスポーツという括りで書かれているのだろうか、部活・学校の話で完結していることは、論点をぼかさない為という点では適切かもしれないが、記事の最後に「このようなことがその後の社会生活でも続いているのかもしれない」程度の1文だけでも、付け加えられていても良かったのではないか。

 同じようなことが労働環境の中でも行われていることは、例を挙げて説明するまでもないかもしれないが、BuzzFeed Japanが前述の記事を掲載した翌日・9/4に「丸刈り・高圧洗浄機で水…パワハラ訴えた元社員が勝訴」(朝日新聞)という件が報じられた。記事を読んで貰えれば分かるが、もはやパワハラの範疇を大きく逸脱する傷害のような行為が行われていたという案件だ。業務上の不手際(記事の件が不手際だったのかどうかは判断が難しいが)を理由に丸刈りを強要するという発想が一体どこから生まれるのかと言えば、自分は高校野球、その他の部活等で今も残る丸刈り強要を思い出さずにいられない。高校野球を見れば参加する選手の多くが丸刈りで、勿論自発的に丸刈りにしている選手もいるのだろうが、高校野球=丸刈り という認識の、実質的には同調圧力があるだろうし、中には体裁だけ繕って実質的な強要をしている部もあるんだろう。
 勿論そのような状況の部活動を体験した者の全てがパワハラを犯したり、ブラックな
労働環境を容認・黙認するとは言えないかもしれないが、学校でそのような状況を体験、しかも中高6年もそのような環境に身を置いていれば、少なからず影響があると考えても何も不自然ではない。労働環境の問題は、労働現場だけの問題ではなく教育の問題でもあるだろうし、いじめの問題も子供だけの問題ではなく、子供社会で行われるのと同様のいじめが大人社会にも蔓延していることが、その問題性の本質なのだと思う。要するに、スポーツ界・部活動でのパワハラ行為が改善出来ないならば、労働環境も根本的に改善しないだろうし、いじめがなくなることもないだろう、と自分は思う。

 大人のいじめと言えば、ハフポスト・9/12の記事「1本に繋がった眉毛は勇気の証し。22歳モデルは、今日もバッシングに立ち向かう」を読んで、かなり残念な気持ちになった。この記事では見出しの通り、自分のアイデンティティの1つとして繋がった1本眉毛で活動しているモデルの女性に心無い言葉が投げかけられているという内容だが、残念だったのは記事に関してではなくそのコメント欄に投稿されたいくつかのコメントだ。


って‥w‥それでという感じの悶着騒動ですね‥ww‥。 これは⁇‥www‥呆れてlol(大笑い)するしか出来ませんよ(コメント表記内では通算2度目の)…lol(大笑い)!。

じゃあ鼻毛も伸ばし放題にしたらいいのに。  でもって、鼻くそほじくりながら、インタビューに答えれば、さらに大ウケ間違いなし。

彼らは冗談のつもりなのかもしれないが、このコメントを当該のモデル女性が見たらどんな気分になるかを考えているのだろうか。自分には考えているとは到底思えない。まず、左右の眉毛が繋がっていることは、欧米や日本では美しいと評価されにくいことは自分も知っているが、タジキスタンやウズベキスタンなどの中央アジア諸国では、繋がった眉こそが美の象徴とされている国もある。勿論それはそれらの国の価値観であり、欧米には欧米の、日本には日本の価値観があって当然で、繋がった眉を美の象徴として受け入れなくてはならないという話ではない。言い換えれば、繋がった眉を美しくないと考えることは個人の自由だ。
 だからと言って、その眉を中傷したり馬鹿にしたりしても良いということにはならない。例えば、当事者との間に相応の人間関係が成立してるのなら、コミュニケーションの為に多少の揶揄があってもいいかもしれないが、彼らのコメントは明らかに女性モデルを馬鹿にしているとしか思えない。

 なぜ馬鹿にしてはいけないのかと言えば、例えば十数年前までオタクは恥のように捉えられ、マンガやアニメが好きだと公言することは概ねはばかられた。マンガやアニメが好きだというだけで「気持ち悪い」と馬鹿にされるような時期があった。マンガやアニメが趣味の人とは話が合わないとか、友達になりたいとは思わないという話なら分かるが、マンガやアニメが好きというだけで「気持ち悪い」と言われたらどうだろうか。それは確実に偏見だし、いじめに繋がる発想だ。
 それと大差ないコメントを、自分と同じ日本語話者が恥ずかしげもなく堂々と主張していることはとても残念だし、彼らが既に成人しているのだとしたら、大人がこんな状態では子供のいじめなどなくなるはずがない。彼らのコメントは、太った子に「デブデブ」と言いながら笑っているのと何も変わらない。

 鶏と卵のような話なのだろうが、スポーツ界のパワハラといじめ、ブラック労働環境などには関連性があるし、大人社会のパワハラ・いじめが解消できなければ、子供にいじめは止めようなんて言ったところで、子供が説得力を感じてくれるはずはない。勿論誰かがやっているから他の人もやっていいという話ではない。しかし誰でも、親からダメだと言われたことを親もやっているじゃないか、と理不尽に感じたことが1回くらいはあるだろう。子供は大人を手本にして育つものだ。

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