自民党の総裁選が目前に迫り、出馬を表明した石破氏、安倍氏は共に支持集めに力を入れているようだ。NHKの報道によると、安倍首相は9/3に東京・立川で開かれた支援者集会にて「世界で台頭する保護主義に対抗するためにも、日本が主導して、国際社会における労働や環境などのルールづくりに取り組む考えを示した」そうだ。どうも彼は「日本主導」が好き、というか拘りすぎる傾向があるように思う。マレーシアやコスタリカが中心となって国連で提案した核禁止条約を反対票を投じ、核拡散防止条約を提案したり、今年のG7でも海洋プラスチック憲章に署名せず、国際的に批判を浴びると、2019年に大阪で開催予定のG20で、海洋プラスチックごみを世界全体で除去する戦略の構築を提案すると表明したり、全てが全て間違いではないのだろうが、「日本主導」が目的化しているのではないか。というか、杉田何某かの言葉を借りれば「日本主導の政治利用の度が過ぎる」のではないだろうか。
NHKは、視聴料で運営されている公共放送にもかかわらず、かなり短い期間で記事を非公開にするので全文引用させてもらう。記事の見出しは「首相「日本主導で労働や環境などの国際的ルールづくりを」」で、
自民党総裁選挙で3選を目指す安倍総理大臣は、東京 立川市で開かれた支援者の集会で講演し、世界で台頭する保護主義に対抗するためにも、日本が主導して、国際社会における労働や環境などのルールづくりに取り組む考えを示しました。
この中で、安倍総理大臣は、世界経済や貿易問題などをめぐって、「いま世界は大きく変わろうとしている。世界で台頭している保護主義に対抗するためには、労働、環境などさまざまな分野できちんとしたルールをつくり、人々の不安や不満の解消に取り組んでいかなければならない」と指摘しました。
そのうえで、安倍総理大臣は「日本はいままで引っ込み思案で、ほかの国々にルールをつくってもらい、一生懸命に優等生で頑張ってきた。ルールづくりが勝負であり、日本が率先して世界のルールづくりにリーダーシップを発揮していきたい」と述べ、日本が主導して、国際社会における労働や環境などのルールづくりに取り組む考えを示しました。
という内容だ。経済や貿易などをめぐって保護主義が台頭しているのは事実だろうし、経済・貿易面で日本は、確かにある意味で優等生だったろうし、今まで他国の作ったルールに従い、と言うか翻弄されてきたと側面もあるのはその通りだと思う。しかし「一生けん命優等生に頑張ってきた」に労働分野も含まれていると彼が認識しているのだとしたら、それは大きな間違いではないだろうか。
はっきり言って日本は労働環境に関して全く優等生とは思えない。寧ろ平均点以下の劣等生だろう。サービス残業や過労死という、他国では概念すら存在しないようなことがしばしば起る、というより常態化・蔓延していた、いまもブラックな労働環境が解消したとは言えない国の、一体どこが優等生だろうか。
確かに現政権は「働き方改革」というスローガンを掲げ、労働環境改善に努めている立場ではあるが、その一方で裁量労働制の導入に関して、データの実質的な捏造が発覚して撤回に追い込まれているし、結局成立させてしまった高度プロフェッショナル制度についても、かなり杜撰な話が制度が必要だとする根拠に用いられていたし、 制度自体も抜け穴が指摘されており、現政権の労働環境改善案・姿勢は手放しで褒められるようなものではない。
そんな政権が「日本主導で世界的な労働に関するルールづくりを目指す」なんて全然支持出来ないし、寧ろ世界に悪い影響を及ぼす恐れもあるし、恐らく受け入れて貰えず、裁量労働制・高プロの根拠のように、不備を指摘されて評価を落とすだけだろうから止めてくれと思ってしまう。
支持者には現首相のこのような「お言葉」はとても素晴らしく聞こえるのだろうが、自分には全く素晴らしく聞こえない。なぜなら具体的な話が全く含まれていないからだ。
石破氏がこの総裁選で表明している所謂石破ビジョンについて、具体性が欠けているという指摘があるし、そのような批判について自分も一部頷く部分もある。しかし、安倍氏の話に具体性があるかと言えば、今回の総裁選に限らず、いつも具体性が殆どない話に終始しているように思う。自民党内では彼のこれまでの経済政策を支持している議員が多いようだし、国民にもそれを「他よりマシ」と指示の理由に挙げる者は少なくない。しかし、掲げた物価上昇率2%は一向に達成できないし、一般的な国民の実質賃金は寧ろさがっているのに、具体的な今後の方策も示されないのに、なぜそれを評価できるのか自分には理解出来ない。