フジテレビが10/6に放送した特番「タイキョの瞬間」がにわかに注目を浴びている。自分はこの番組を見ておらず、話題になっていることはツイッターのタイムラインやBuzzFeed Japanの記事「フジテレビ「タイキョの瞬間」に批判殺到 入管行政の「闇」には触れず」で知った。「不法滞在者や、不法占拠など、違法行為や迷惑行為を許さないプロフェッショナルたちの姿」を描く、などとして外国人の強制退去を担う入国警備官と入国審査官に密着した番組だったようだ。記事の内容が番組内容に即しているのならば、外国人差別に繋がりかねないという懸念も理解できるが、前述のように番組自体を見ていないので、番組内容に関しては敢えて触れないでおくことにする。
この番組については朝日新聞も「フジ「タイキョの瞬間!」に批判 「外国人差別を助長」」という見出しで記事化しており、その記事によれば、フジテレビは朝日新聞の取材に対して、
この番組では、さまざまな退去の瞬間にスポットを当て、その様子を放送いたしました。東京入国管理局が、不法滞在・不法就労の外国人を摘発するシーンもございましたが、取材に基づいた事実を放送しており、決して外国人を差別する意図はございません。番組に対して、いただいたご意見は真摯(しんし)に受け止め、今後の番組制作に生かして参りたいと考えています。とコメントしたそうだ。近年の労働者不足を背景にして、外国人技能実習制度を隠れ蓑にした外国人労働者に対する搾取のような状況も起こっており、その状況から逃れた外国人が不法就労に至ってしまう場合や、最近では大阪の観光系専門学校で、ベトナム人留学生らおよそ160人が一方的に退学させられるというケースがあり、似たようなケースの結果、意思に反して不法滞在状態になってしまう場合もあるのだろうと想像する。そのようなケースとの関連性は定かでないが、昨年あたりから入管の収容者への扱いに関する問題性がしばしば指摘されている。例えばBuzzFeed Japanは
- 入国管理局で収容者による集団ハンスト 100人規模に膨らんだ理由(2017/5/25)
- 「ここは刑務所よりもひどい」彼女たちから奪われた希望。入管収容者の叫び(2018/8/5)
- 「パパはいつ帰ってくるの?」 日本でバラバラにされた難民一家、妻の叫び (2018/9/1)
差別やいじめの加害者側が、差別する意図・いじめる意図を明確に持っている場合はかなり稀だし、大概、指摘を受けても差別やいじめの意図はないと主張する。いじめの結果、いじめられた側が自殺に追い込まれるような事になっても、いじめた側は「からかいはしたが、いじめのつもりは全くなかった」などと述べる場合が殆どだ。これについては、春名 風化さんは似たような事を、いじめを題材にした絵本「いじめているきみへ」に込めて訴えている。
また、現在世界で最もあからさまな差別の1つである白人至上主義に関しても、白人至上主義者らは「有色人種より白人が優れているのだから、白人には優位性が認められて当然」なんて、差別を差別で正当化しようとするような主張をしたり、実際には自分たちが優位な状況にあり、有色人種を抑圧している立場にも関わらず「有色人種によって白人の権利が脅かされているのだから、対抗するのは当然」などと、差別の加害者であるにも関わらず被害者ぶって正当化しようとしたりする。また、ナチスだってユダヤ人や障害者の虐殺を優生思想で正当化しており、差別ではないというスタンスであのような行為に至っているはずだ。
兵庫県 たつの市は、職員が業務中に身に着ける名札ケースを正職員と非正規職員で色分けし、採用条件によって差をつけていたそうで(読売新聞の記事)、たつの市はこれについて「正職員の自覚を促すことなどが目的で、差別する意図はない」という見解を示したそうだ。実際に名札の差によって市の職員の間で差別的な状況が生まれていたのか定かでないが、これでは、たとえば市民が名札で非正規職員を軽視するような状況も起きかねない。差別する意図がなかったとしても、差別を誘発しかねない状況を市側がわざわざ作ったことには変わりないだろう。
大事な事だから最後にもう一度書く。
差別やいじめの加害者側が、差別する意図・いじめる意図を明確に持っている場合はかなり稀で、大概、指摘を受けても差別やいじめの意図はないと主張する。