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やりがい搾取の典型例


 アニメやゲーム、マンガ等の所謂オタク系業界に関する求人サイト等を運営する企業・ビ・ハイアの元従業員女性が自殺し、女性の遺族と元従業員2人が「社長から凄惨なパワハラを受けた」として、社長と会社を相手取って慰謝料など約9000万円を求める裁判を10/17に東京地裁に起こしたという件が、10/18頃メディア各社によって報じられた。ハフポストはこれについて原告側が会見を行ったことを取り上げ、「「これは現代の奴隷契約だ」と弁護士 「パワハラで自殺」女性の遺族らが社長ら提訴」という見出しで記事を掲載している。
 自分はこの記事を読んで、この数日前に報じられた「大本萌景さんの自死、「真実」求め遺族が裁判へ なぜ16歳のアイドルは追い込まれたのか」をすぐに思い出し、両方の案件に類似性があると感じた。適切な判断能力があるとは言えない未成年者に対してだけでなく、大人に対しても奴隷のような扱いをする企業や経営者が日本にはまだまだあるし、いるのだろうと思った。


 ハフポストの記事の見出しにもあるように、原告側の代理人弁護士はこの件を「現代の奴隷契約」と評したそうだが、そこまで当該企業と社長を酷評した理由はしっかり記事に示されている。詳しくは記事を参照して欲しいが、
  • ペットボトルの水をかける等の暴力行為、複数の人格否定の暴言
  • 不当に高額な損害賠償の請求
  • 損害賠償と給与を一方的に相殺することで家賃すら払えない状況に追い込む
  • 到底妥当とは思えない環境下の事務所に住まわせ、食事も満足に与えず強制的に労働を強いる
等の行為が行われたというのが原告側の主張だ。ビ・ハイア側は「こうした主張や記述は、事実とはまったくかけ離れた虚偽であることを強く申し上げたいと思います」としているそうだし裁判はこれからなので、原告側の訴えが全て事実なのかはまだ確定してはいないが、もし訴えが概ね事実に反しないのであれば、まさに奴隷契約、奴隷制以外の何ものでもない。

 ハフポストはこの件に関する続報を、昨日・10/24に「「君らが欲しいのは金か?そう言って、社長は1万円札を破った」パワハラ訴訟の企業、会社説明会の参加者が証言」という記事で掲載した。2012-13年のビ・ハイアの新卒採用説明会中で、社長が優勝賞金1万円としたクイズ大会を催し、優勝者が決まると社長が
 「君らが欲しいのは金か?そうじゃない、やり甲斐だろ」
と言って財布から出した1万円を破って見せたという内容の記事だ。この件についてビ・ハイア側からの反応はまだないようだが、証言者が全くの嘘をついているとは自分には思えず、全体的なニュアンスは概ね正しいのではないか?と推測する。
 1万円札を故意に破る行為が法に反するかどうかという視点もあるようだが、個人的にはそんなことより彼の「金よりやりがいが重要だ」という話に強い違和感を感じる。違和感ではなく不快感と言った方が適切かもしれない。例えば、就活する者同士の間で「高額給与と自分のしたい内容の仕事のどちらを重視するか」という話をしており、その中でこの台詞が出てくるのであれば違和感はない。しかし、新たに社員を募る企業の社長という強い立場を利用し、就活生に対して、言い換えればこれから被雇用者になるかもしれない者に対して、こんな事を言うのは果たして適切だろうか。個人的にはパワハラ以外の何ものでもないとしか思えない。

 もし日本が既にベーシックインカムを導入しており、企業から充分な手当が貰えなくてもとりあえず衣食住に困らないような状況なのであれば、千歩くらい譲れば容認も出来るかもしれない。しかし現状はやりがいだけでは食べていけないし住むところも確保できない。要するに
 やりがいも金も欲しいに決まってるだろ? おまえはバカか? 
が自然な反応ではないだろうか。これを勘案した上で、最初の記事を読み直すと、
 ビ・ハイアの社長は、不当に給与を奪い事務所に住まわせ、というか軟禁して、奴隷的な扱いをし満足に食事すら与えず、強制的に働かせる為に「君らが欲しいのは金か?そうじゃない、やり甲斐だろ」と言っていたのだろう。
としか思えない。

 このままでは「日本は労働環境後進国」という認識が世界的に一般化する日もそう遠くはない。何故なら外国人技能実習が名ばかりの、奴隷制まがいの仕組みである事は既に東南アジア諸国にも知れ渡っているようだからだ。また、労働基準監督局が充分に機能しているとも到底思えないし、厚生労働省も労働に関するデータを改ざんして企業側に利する組織だし、全く明るい兆しが感じられない。

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