数日前から、韓国・済州島で行われる国際観艦式に参加する自衛隊の護衛艦が旭日旗掲げることについて、韓国内で否定的な声が上がっているという事が話題になっていた。これについて、Record Chinaの記事「「日本の方が礼儀に欠ける」国際観艦式の旭日旗問題、韓国から非難相次ぐ」よると、韓国海軍は海上パレード中は自国国旗以外の旗を掲げないよう通知したそうだ。記事では防衛省関係者が
国際ルールより国内事情を優先した非常識かつ礼儀を欠く行為と指摘したことも紹介している。また、時事通信は昨日・10/4に「旭日旗「絶対降ろさない」=韓国・観艦式参加で制服組トップ」という記事を掲載しており、自衛隊制服組トップの河野克俊統合幕僚長は4日の記者会見で、「自衛艦旗はわれわれの誇りであり、降ろしていくことは絶対ない」と述べたと伝えている。
旭日旗は、現在主に海上自衛隊が自衛艦旗として用いている。陸自でも旭日旗を用いてはいるが、現在旭日旗と言った際に多くの人が連想するデザインとは少し異なる意匠の旗を使っている。韓国や中国など東アジアの一部の人達が旭日旗を嫌悪する理由は、戦前・戦中それが主に軍旗として用いられており、旧日本軍の象徴として認識する為だろう。併合した朝鮮半島や満州国で、また日中戦争中に日本軍がどんな事をしてきたかを考えれば、嫌悪感を抱くのも無理はない。しかし一方で、旭日旗のデザインは戦前から広く一般的にも用いられてきた。例えば新聞の社旗などがいい例だ。また、この朝日・日の出をモチーフにしたデザインは旭日旗以外、日本以外でもしばしば用いられており、流石にナチスの鉤十字と同様に扱うのは如何なものかと個人的には感じる。
旭日旗に関しては、近年特にサッカー韓国戦(代表以外の、AFC等での韓国籍チームと日本籍チームの試合も含む)で日本側サポーターが応援の場に持ち込んで度々議論になっていた。前述のように、個人的には旭日旗に強い嫌悪感はないが、韓国や中国など、日本軍が不適切な行為を繰り返した地域の人達の感情もある程度尊重するべきだろうから、普通の日の丸でもいいのにわざわざ旭日旗を用いるのは、嫌がらせ行為にもなるだろうと思う。このように主張すると「旭日旗は国際的に自衛艦旗として認められている。それを掲揚することを否定・非難するのは認められない」というような反論をされる事があるが、自衛隊は確実に軍事的な組織であり、旭日旗は実質的に軍旗である。わざわざスポーツの現場に軍の象徴を持ち込む必要性があるのか、と言われれば「ない」言わざるを得ない。しかも相手側の国の一部に旭日旗に対する反感があるのだから、わざわざ油を注ぐ必要はない。
ただ、今回旭日旗の掲揚について問題になっている現場は、国際観艦式という明らかに軍事的な現場なので、そこで自衛艦旗の掲揚に難色が示されるというのは、ある意味では韓国海軍・政府の、自衛隊・日本を尊重する姿勢の欠如のようにも思える。海自・日本側からわざわざ必要以上に事を荒立てる必要はないが、主張するべきことは主張すればいいんだろうと思う。
自分が旭日旗に持つ印象に関して、20年前と今でその印象は確実に変わってしまった。いつからとは明確には言えないが、駅伝の応援などで振られる、旭日旗と似たデザインの朝日新聞の社旗の印象も強く、旭日旗に関して20年前は軍のあからさまな象徴という印象はそれ程なかった。強いて言えば、暴走族や不良が「全国制覇」などの文言と共に好むというような印象だっただろう。自分の記憶では15年前くらいから(多分日韓共同開催ワールドカップの頃)、韓国側の旭日旗嫌悪の声が聞こえ始めたように思う。しかしそれでも、前述したような旭日旗に関する自分の印象には大きく変わりはなかった。当時から2chなどで現在ネトウヨと言われるようなタイプの言説も既に聞こえてはいたが、当時はそれ程強い勢力でもなく、極端な韓国民と極端な日本人が局地的に罵りあっている程度の認識だった。
旭日旗に対する認識が徐々に変わり始めたのは2010年代以降、要するにSNSが流行り始めてからだ。それまでは2ch等で局地的な主張が繰り広げられていただけだったが、 2000
年代後半から所謂2chまとめサイトが出来始めて、SNSが流行り始めるとまとめサイト等がSNSを活用して宣伝をしはじめた。その影響なのか、同じ頃からSNS上にも所謂ネトウヨ的な言説が目立ち始めた。排外的・差別的な言説、偏見をあからさまに主張するアカウントは、旭日旗をアイコンやバナー等に好んで利用する傾向が強い。このような状況の影響で、自分は旭日旗=差別・排外主義・偏見の象徴でもあるように見え始めている。
これまでにも述べたように、旧日本軍の象徴であるという認識は否定できないが、自分には旭日旗自体への嫌悪感はほぼない。 しかし、今後も排外主義者や差別・偏見を厭わない者が旭日旗を好んで用いる傾向が続くようならば、旭日旗への嫌悪感は更に増してしまいそうだ。日本に住んでいる自分がこのように感じるということは、現在のような状況が続けば続くほど、韓国や中国の一部にある旭日旗への嫌悪感は更に増すことになるのだろうと思う。海上自衛隊も陸上自衛隊も決して旧日本軍と同じような組織ではないし、排外主義的な軍事組織でも、差別・偏見を容認する軍隊でもないのに、一部の排外的・差別的な日本人がその象徴である旭日旗を好むことで同一視されてしまいかねず、いい迷惑だろうと感じる。
最後に余談だが、差別的・排外的な所謂ネトウヨが旭日旗を好むことで、旭日旗自体の印象が悪くなるのならば、彼らがほぼ漏れなく強く嫌悪している、朝日新聞に対する世間一般の印象悪化を彼らが望むなら、彼らが率先して無条件に朝日新聞を褒め称えればいいのでは?と思った。彼らが旭日旗の地位向上を望むのなら、彼らがアイコンやバナーに旭日旗を用いないことが一番の近道だろう。