昨日・2018年10/6、東京都中央卸売市場の一つ・築地市場が83年の歴史に幕を下ろした。老朽化を理由に豊洲新市場への移転が2000年代後半から本格的に進められていたが、様々な理由から、当初の予定より移転が大幅に延期になり、昨日やっと閉場・移転が実行されたという背景がある。それは最早説明不要であるくらい各メディアで擦られ続けた話題だが、現在も豊洲市場の地盤沈下問題などは解決には至っていないようなのに、あまり報じられていないのが気になる。この問題をきっかけに都知事になったと言っても過言ではない小池氏も、これまで散々擦り続けていたメディアも、単に騒ぎたかっただけで豊洲の話題には飽きてしまったのかもしれない。騒ぐだけ騒いだだけでは、単に移転先の豊洲新市場の印象を悪くしたに過ぎないとも言えそうで、これから新市場が、そして築地というブランドがどうなっていくのか少し心配だ。
そんなタイミングで、BuzzFeed Japanは「忘れられた「原爆マグロ」 築地市場に埋められた、負の遺産とは」という見出しの記事を掲載した。端的に言えば、
1954年3/1に太平洋上で行われたアメリカの水爆実験によって、日本のマグロ漁船・第五福竜丸の乗員が被爆したこと、また水爆実験の影響で放射能に汚染された魚が多く水揚げされたこと、原爆マグロなどと呼ばれた、汚染されたマグロが築地の敷地内のどこかに埋められて廃棄されたことに関する記事だ。
記事の内容は見出しの通り、概ね汚染されたマグロが築地の敷地内のどこかに埋められて廃棄されたことはあまり知られていないという話なのだが、この記事を読んで自分は、そもそも第五福竜丸が水爆実験で被爆したことすらあまり知られていないのではないかと感じた。自分は第五福竜丸の事件当時まだ生まれておらずリアルタイム世代ではないが、学校で習ったから事件のことや第五福竜丸のことは知っている。だから全く知られていないと言えば語弊があるかもしれない。しかし、広島に原爆が投下されて多くの人が被爆した8/6、長崎の8/9については日付もすぐに言える程強く認識しているのに対して、もう一つの核兵器による日本の被爆事案・第五福竜丸が被爆した3/1は、調べなければ分からない程度の認識だし、毎年3/1にそれを意識することもない。また、8/6・8/9には、8/15の終戦・敗戦とも相まって、毎年メディアがこぞって原爆について取り扱うにも関わらず、3/1に第五福竜丸についてメディアが取扱っているのを見た記憶は殆どない。そのような意味で言えば、原爆マグロが忘れられているのではなく、第五福竜丸の被爆事件自体が忘れられていると言っても過言ではないように思う。
確かに、第五福竜丸の被爆事件は戦争によるものでもないし、広島・長崎が被った被害に比べたら被害の程度はとても少ない。しかし戦争でなくても核兵器があれば事故は起こり得るという事は、第五福竜丸の事件の方が象徴的だし、水爆実験によって汚染された魚が多く水揚げされたという点は、戦争でなくても核兵器でなくても、例えば原発事故が一度起これば甚大な影響が出るという点でも、確実に広島・長崎以上に教訓になる話だ。そのような観点で考えれば、被爆事件が起きた3/1に第五福竜丸の事を、8月に広島や長崎の原爆を扱う規模の1/5程度でもいいので、毎年コンスタントにメディアには扱って欲しい。学校の教科書で第五福竜丸の事を扱うだけでは足りないと自分は思う。
3/11の前後には東日本大震災のことをメディアが扱うのは既に恒例になりつつあるし、その中では福島第一原発事故も当然扱われる。その際に合わせて第五福竜丸の事件に触れるような形式でもいいので、是非検討をお願いしたい。