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恋愛禁止は男尊女卑解消の足枷?


 現政権は、労働人口の減少・産業界の慢性的な人手不足などを背景に、外国人労働力の導入を進める為の入管法改正案を、現在かなり拙速に推し進めている。個人的に外国人労働者の受け入れには賛成なのだが、現政権が提案している改正案は、永住を基本的に認めていなかったり、「移民政策ではない」と言い張っていたり、外国人労働者を人としてではなく単なる労働力としか見ていないように思え、それでは問題点を国内外から指摘されている外国人技能実習制度や労働目的の偽装留学と差がなく、結果的に深刻な社会問題化するように思え、もっとまともな案を提案して欲しいし、現在の与野党平行線の状態で強行に採決をするようなことは控えて欲しいと考える。
 慢性的な人手不足の解消の為の対策として現政府が進める政策は、外国人労働者の受け入れだけではない。最近何故かあまりこのスローガンを使わなくなったが、現政権は「一億総活躍」というスローガンを掲げ、女性活躍・60歳以上の高齢者の労働推進(60歳定年の見直し)等の政策も進めている。政権が「一億総活躍」というスローガンを最近用いなくなったのには、一億とは日本の総人口を意味する表現で、新たな外国人労働者の積極的な受け入れの検討と齟齬が生じるからなのかもしれない。


 女性活躍に関しては、現政権は「すべての女性が輝く社会づくり」を唱え、女性活躍推進法を成立させ、2015年9月に公布・施行した。ただ、この法律は「 国・地方公共団体・事業者は女性の職業生活における活躍の推進に関する基本方針を定めなければならない」という趣旨であり、301人以上を雇用する企業には基本方針の制定や関連する調査等が義務付けられてはいるが、基本的には理念法の側面が強い。
 この制定・施行やそれ以外の運動・活動などによって、女性の就業者数は上向いているという話もあるが(日経ビジネスONLINEの記事)、女性活躍推進法が施行されても「何も変わっていない」という声もある(日経WOMANの記事産経新聞の記事)。また、男女の賃金格差もまだまだ解消されたとは言い難い(日経WOMANの記事)。女性の就業者数が増えているとは言っても、厚労省が7/20に発表した国民生活基礎調査によれば、男性の正規雇用率は78.7%なのに対して、女性のそれは未だに44.2%と半数以上は非正規雇用なのだそう(ガベージニュースの記事)。首相は、先月の新内閣発足の際に女性閣僚がたった一人だった事について問われた最に「女性活躍はまだ始まったばかり」と述べたが、では一体いつまでにどのような目標を想定して政策を行っているのかも明示して貰いたい。
 つまり、数十年前に比べれば明らかに状況は改善してはいるものの、諸外国と比べても日本の男尊女卑傾向は、まだまだ「先進国・現代的な国家」として誇れるような状態には程遠いことは誰の目にも明らかだ。

 NHKが放送しているろんぶ~んという番組がある。少し変わった、それでいて実生活と関わりがありそうな論文を取り上げて紹介・解説するという論文バラエティ番組だ。11/22の放送は「恋愛」に関する論文がテーマで、「恋愛はスポーツ選手にとって悪いもの?」という疑問を感じた現在は高校教員をしている西田 文香さんが、神戸大学 発達科学部で研究した論文「大学運動選手の恋愛経験が競技生活に及ぼす影響」を取り上げていた。
 ざっくり言えば、恋愛が運動競技等の成績に悪影響を及ぼす相関・因果関係があるという研究結果が殆どないのに、日本では恋愛を禁止している部活が多い事への疑問を解消する為の、果たして恋愛と運動競技に相関・因果関係があるのかという事に関する論文だ。自分が注目したのはこの研究内容ではないので、結果から言ってしまえば因果関係はない、相関関係があるかどうかは断定できないという事だった。つまり恋愛関係にあることによって競技の成績が伸びる人もいるし、逆に恋愛関係にあることによって成績が伸び悩む人もいるようだ、要するに「人それぞれ」、逆に言えば恋愛がマイナスに働くとは必ずしも言えない、ということだった。

 海外と比較してということではないが、日本では恋愛は運動競技・学業・仕事などに悪影響を及ぼすと言われがちである。流石に20歳を超えると男女共にこのような事を言われる機会はそれまでに比べて減るが、未成年時は誰もがこのような事を親や親以外の大人に言われた経験があるだろう。前述の論文でも示されていたように、恋愛がマイナスに働く場面・そのような性質の人もいるのだろうが、逆に言えばすべての人に恋愛がマイナスに働くわけではないのに、まるで誰もに当てはまる話かのように「恋愛は他の事にマイナスに働く」とするのは適切とは言えないだろう。
 個人的には、深刻な少子化と言われている状況にも「恋愛はマイナスに働く」というレッテル貼りが悪影響を及ぼしているようにも思う。また、恋愛=マイナスという観念が、恋愛の発展した状況である結婚・子育て等も運動競技・学業・仕事などに悪影響という認識を生み、結婚した女性や出産した女性を職場から排除しようという機運が生まれているのではないか?と番組を見ていて感じた。

 恋愛と結婚・出産は別ものと感じる人もいるだろうし、結婚した女性や出産した女性の排除の背景に恋愛=マイナスという認識があるのだとしたら、結婚した男性や子供が出来た男性も排除されるのでは?と考える人もいるだろう。ただ「恋愛禁止」を明示している運動部やチームは、男性の場合でもない事はないが女性チーム・競技者の方が多い。また、子育てが運動・学業・仕事に悪影響を与えるという認識は、身体的な問題があるので女性の運動は仕方ないとしても、例えば出産を理由に高校退学を迫られるなどの例を考えれば、勿論男子生徒に対しても女性を妊娠させたことを理由に退学を迫る場合はあるかもしれないが、女性にしろ男性にしろ子育て・出産が学業に悪影響を与えるという偏見に基づいていることには変わりない。そんな観点から自分は
恋愛排除・禁止=恋愛ネガティブ視誘発=結婚・出産・子育てネガティブ視
という関連性があるのではないか?と推測する。
 最近のアイドルグループは猫も杓子も「恋愛禁止」を掲げているようだが、確かにグループのウリの一つでもあるのだろうから全否定するつもりはない。ただ、恋愛は他の活動にマイナスというネガティブな考えを誘発しかねないので、部活動や社会人競技チームと同様に一律の「恋愛禁止」ルールを掲げるべきではないとも感じる。確かに恋愛が他の活動にマイナスに働く性質の人もいるが、そのような人がいる事だけに注目し、グループ・チーム全体を一律「恋愛禁止」にして強制するのは、「俺も我慢しているんだから、仲間のお前も我慢しろ」という理不尽な連帯責任のようなもの、言い換えればブラック校則と似たようなものにも思え、決して好ましいとは言えないと考える。

 BuzzFeed Japanは11/22に「「きちんと管理していることで叩かれるなんて…」ルナルナの“中の人”が思うこと」という記事を掲載しているが、記事によると
 ある女性声優が、生理周期などを予測する健康管理アプリ「ルナルナ」をスマートフォンに入れていることが、「悲報」「炎上」などのタイトルで、複数のまとめサイトや掲示板で話題になった
 一部のコメントの中には、生理とセックスを安易に結びつけ、「ルナルナを使っている=頻繁にセックスをしている」「避妊せずにセックスするために、生理日を管理しているに違いない」と、声優を非難するような書き込みもあった。
という事があったそうだ。生理を管理するアプリの使用=避妊なしのセックス目的というレッテル貼りも酷いが、そもそもセックスを娯楽目的ですることは何も悪い事ではない恋愛の延長線上の行為だ。セックスを意欲的に行う事=恥、はしたない、かのような歪んだ認識に基づかなければ、このような揶揄は生まれるはずがない。
 また、BuzzFeed Japanは11/23に「「歴史に残らないセックスワーカー」 戦争中に重要な役割を担った女性たち」という、第1次世界大戦時の娼婦に関する記事を掲載している。当時多くの兵士が利用したにも関わらず、売春は恥ずべき行為という認識の所為で記録があまり残っていないという記事だ。記事中にこんな一文がある。
 売春という仕事は、単に忘れられたのではなく、恥ずべきものとして歴史から消されてきたのです。
男性の多くは風俗嬢やAV女優などのセックスワーカーを見下すくせに、風俗を利用しなかったとしても、少なくともAVやグラビア等ポルノの世話になる。世話にならない人の方が珍しい。性産業を嫌悪したりセックスワーカーを見下すなら、風俗もAVやグラビア等のポルノも一切利用するべきでないし、それを使った自慰・射精なんて以ての外だ。だから自分は、性産業を嫌悪したり中傷したり、セックスワーカーを見下したりする人を心底軽蔑する。セックスを恥と考え、女性が生理管理することを揶揄する者達には、一切AVもエロ画像も見るなよ?お前ら一生オナ禁な?と言ってやりたい。

 結局のところ、恋愛・性に関する事をタブー視することは、「百外あって一利なし」とまでは言えないかもしれないが(100の内1くらいは利があるかもしれない)、弊害がかなり大きい。しかも何故かこの風潮は今も続いており、この投稿で書いた事を勘案すれば、男尊女卑傾向が解消しない要因の1つになっているとも言えそうだ。確かに21世紀になってからは、20世紀以前より状況はマシにはなっているだろうが、では自体が大きく改善したか?と言えば、決して改善したとは言えない。自分は、男尊女卑傾向の解消の為には恋愛・性に関する話・教育のタブー視を止める事が不可欠だと考える。

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