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政府の入管難民法改正案に関する複数の矛盾


 政府は11/2、外国人労働者の受け入れに関する法律・入管難民法の改正案を閣議決定した(西日本新聞の記事)。団塊世代の引退や少子化等を背景に深刻化する人手不足への対応、数々の問題点が指摘されている外国人技能実習制度、それが実質的には外国人労働者の確保の為に用いられている状況の正常化などがその主な目的だろう。
 前述の西日本新聞の記事によれば、安倍首相は11/2の衆院予算委員会で
 人手不足が成長を阻害する大きな要因になり始めている。しっかり制度をつくる
と述べたそうだ。 政府としては来年4月の施行を目指しているらしい。しかし、これについては各方面から批判があり、不備も数々指摘されている。自分が最も違和感を覚えたのは、対象となる業種等を、改正法成立後に法務省令で定めるとする法案が閣議決定されている点だ。制度の詳細については法でしっかりと定めるべきなのに、重要な部分を行政機関に預けろという法案を内閣が示すというのは、行政機関が立法機関の機能を浸食するような事態だと言わざるを得ない。これでは三権分立など絵に描いた餅ではないのか。


 西日本新聞は8/23、24に、「菅官房長官単独インタビュー詳報 「外国人労働者なしに日本経済は回らない」」と「菅官房長官単独インタビュー 留学生、卒業後の就労拡大 在留資格見直しへ」いう見出しで、菅官房長官へ外国人の就労拡大に関して単独インタビューを行い記事化している。
 菅氏は政府が外国人の就労拡大を図る理由は?と問われ、見出しにもあるよう、
  外国人材の働きなくして日本経済は回らないところまで来ている。高齢者施設をつくった私の知人も、施設で働く介護人材が集まらないと言っていた。(外国人労働者問題についての連載を書籍化した)西日本新聞の『新 移民時代』(2017年11月に明石書店から出版)を読んで、私の感覚と同じだったため、いろんな方に相談したら『みんなやってくれなければ成り立たない』というのが現状だった
と述べている。 しかし一方で、
 今回の新在留資格は一定の専門性と技能を有する外国人材を、在留期限に上限を設け、家族帯同を認めない前提で受け入れるのが基本的な考え方だ。移民とは違う
とも述べている。菅氏の話、そして政府が検討している外国人労働者受け入れ策に、自分は大きな矛盾を感じる。日本経済は外国人材なくして回らないところに来ているのに、なぜ在留期限に上限のある、家族帯同を認めない政策を検討しているのか。まるで「私たちは付け焼刃的な対応を検討しています」といっているようなものではないだろうか。外国人の労働力がなければ日本経済が回らないところにきたのであれば、一時的に外国人労働者を受け入れても、日本に来た外国人労働者が仕事を辞めて帰国してしまったら、経済はまた回らなくなるだろう。少子化が解消するまでのつなぎに外国人労働者を、という話なのかもしれないが、少子化が5年10年で劇的に改善するとは思えないし、そんなに都合の良く外国人労働者が単身赴任を率先して受けてくれるとも思えない。
 このインタビューは8月に行われたものだが、政府の方針が今も変わっていないことは、政府が閣議決定した入管難民法改正案の骨子(東京新聞の記事)を見れば明らかだ。

 恐らく政府は、政権の積極的な支持層である人達が「移民」「外国人の受け入れ」に否定的な考えを持つ人が多いことに配慮して「移民とは違う」などとし、しかしその一方で外国人技能実習制度の不備への指摘に対して一応対処している姿勢を示す為に、こんな中途半端なことを言っているのだろう。自分には、政府が示した改正案は基本的に外国人技能実習制度から看板をかけ替えただけで内容は殆ど変わっていないように思える。
 以前は外国人技能実習生といえば、中国やインドネシア・マレーシアの人が多かったが、今はベトナムの人が多いようだ。傾向が変わった理由の一つには、中国やインドネシア・マレーシアが経済的に成長したこともあるようだが、それらの地域に外国人技能実習制度の好ましくない実態が伝わり、なり手が減ったからだという話もある。現在実習生が多いベトナムでも都市部では悪評が既に広まっており、貧しい農村部でないと人を集められないなんて話もある。そのような話の真偽は定かでないが、日本以上にSNSの影響力が大きいそれらの地域では悪評は瞬く間に広まるだろうし、外国人を「お人好しの日本人労働者」のように騙し続けることは出来ないだろう。

 今の日本にとって外国人労働者の受け入れは必要なことだろうが、今後の日本社会の為にも、そして日本は労働力を搾取する国だと思われないようにする為にも、今の政府の改正案では全く不十分であると自分は思う。 各方面への配慮に欠ける、外国人労働者の受け入れ政策を行えば、外国人労働者が不満を募らせることで様々な悪影響が出かねない。日本人が「仕方ない」で泣き寝入りするような労働環境を、外国人労働者にも「郷に入れば郷に従え」で強制できるというのは大きな間違いだ。つまり外国人労働者の受け入れの為には、日本の労働環境そのものも改善する必要がある。そんな重要な政策・法案について「詳細は省令で」なんて話は確実に愚の骨頂である。

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