スキップしてメイン コンテンツに移動
 

外国人にアピールしたいなら日本語の名前に


 山手線・品川駅と田町駅の間に新駅を設置するという計画が発表されたのは2014年6月のことだった。昨年辺りから地元以外でも「新駅の駅名」が話題に上がり始め、様々な憶測・願望などがSNS上などで飛び交い始めた。JR東日本は2018年6月に新駅名の公募を催し6万4052件、1万3228種類の応募があったそうだ(Wikipedia)。
 自分は中央線の国立駅が「国分寺駅と立川駅の中間に位置すること」に由来して名付けられたという話を思い出し、品川と田町の間であることに由来する「品田」で応募した。3Boxes&4Boxesと教えれば外国人でも覚えやすいのではないか?なんて空想もしていたが、残念ながら「品田」は話題にすらならなかった。

 新駅の名称は「高輪ゲートウェイ駅」に決定したとJR東日本は12/4に発表した。その選定の理由は資料によると、
 この地域は、古来より街道が通じ江戸の玄関口として賑わいをみせた地であり、明治時代には地域をつなぐ鉄道が開通した由緒あるエリアという歴史的背景を持っています。
 新しい街は、世界中から先進的な企業と人材が集う国際交流拠点の形成を目指しており、新駅はこの地域の歴史を受け継ぎ、今後も交流拠点としての機能を担うことになります。
 新しい駅が、過去と未来、日本と世界、そして多くの人々をつなぐ結節点として、街全体の発展に寄与するよう選定しました。
だそう。しかし、公募の1位「高輪」の応募数が8398件あったのに対して、「高輪ゲートウェイ」はたった36件・130位だったこと、ゲートウェイという現地に馴染みのないカタカナ語が付いていることなどを理由に低評価が目立つ(ハフポストの記事)。エッセイスト/イラストレーターなどとして知られる能町みね子さんはオンライン署名/キャンペーンサイト・Change.orgで「高輪ゲートウェイ」という駅名を撤回してくださいという署名を集め始め、この投稿を書いている時点で既に4万人以上が署名している。

 90年代の事なのでうろ覚えだが、とあるインディーズパンクバンドが「海外ツアーで外国人に日本語でコールアンドレスポンスさせるのが快感だ」と言っていた。当時はまだ日本の漫画・アニメ・ゲーム文化が海外で注目を集め始めた黎明期で、恐らく今ほど日本語への理解はなかった時期だ。
 日本に来る外国人、特に欧米から来る者の殆どはアニメ・漫画・ゲームで日本に興味を持った人たちだ。アジアから日本に来る者も、欧米ほど比率は高くないかもしれないが、アジア諸国が経済的に成長した結果、日本の賃金的の魅力は相対的には低下しており、サブカル系を中心とした文化に興味を持って来日する人の率は確実に上がっている。彼らの多くはアニメ・漫画・ゲームの内容を理解したいという思いから、程度の差はあれど日本語に興味を持って独学を含めて学んでおり、ある程度理解できる者は決して少なくない。つまり、日本に来る者は日本の日本的な部分に魅力を感じているのであって、海外の文化に媚びるような態度を日本に期待してなどいないと言えるのではないだろうか。

 例えば、日本から海外へ輸出を考えているようなもの・商品名などであれば、ある程度日本語が分からない人にも配慮したネーミングにする必要はあるだろう。横文字の商品名で人気を博す場合も多く、日本車のモデル名は概ね横文字だし、家電製品も横文字を用いる場合が多い。ソニーの「ウォークマン」「トリニトロン」などはその典型例だ。
 しかし海外で定番化した商品の名前は日本語で「日本の商品」であることをアピールする場合も多い。メキシコではカップ麺が「マルちゃん」という名で親しまれているし、ブラジルでは「明星」が訛って「ミオジオー」と呼ばれているそうだ。西アフリカ諸国では、川商フーズがサバ缶詰(鯖のトマトソース煮)を「ゲイシャ」という名で50年以上も販売しており、食卓の定番になるほど人気なのだそう。そんな例は他にも複数ある。また、豆腐や味噌は世界中で現地語として通用する日本語だし、最近は日本酒がブームになったことで「サケ」が=日本酒として用いられている。どれも日本式のネーミングで日本由来であることをアピールしている。

 「古来より街道が通じ江戸の玄関口として賑わいをみせた地であり、明治時代には地域をつなぐ鉄道が開通した由緒あるエリアという歴史的背景」を重視した駅名に、ゲートウェイというカタカナ語を用いるのは説得力に欠ける。歴史的背景を重視して、尚且つ外国人にもアピールしたいのであれば、「大江戸線」ぐらいベタベタなネーミングの方が外国人ウケに繋がりそうだ。
 新駅付近が江戸の玄関口という話は、恐らく東海道に設けられていた大木戸に由来していると思われる(Wikiedia)。「ならば高輪大木戸でいいだろ!」という声はSNS上などでしばしば目にする。個人的には、外国人へのアピールを念頭に置くのであればもっと簡略化して、「江戸口」「江戸前」なんて圧倒的にベタなネーミングでもいいと思う。

 結論として何が言いたいのかと言えば、「ゲートウェイというネーミングは、外国人に媚びているようで実際には外国人にアピール出来ない、オッサン的発想のセンスの悪い、というか時代遅れのネーミング」ではないのか?という事だ。

このブログの人気の投稿

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

フランス人権宣言から230年、未だに続く搾取

 これは「 Karikatur Das Verhältnis Arbeiter Unternehmer 」、1896年ドイツの、 資本家が労働者を搾取する様子を描いた風刺画 である。労働者から搾り取った金を貯める容器には、Sammel becken des Kapitalismus / 資本主義の収集用盆 と書かれている。1700年代後半に英国で産業革命が起こり、それ以降労働者は低賃金/長時間労働を強いられることになる。1890年代は8時間労働制を求める動きが欧米で活発だった頃だ。因みに日本で初めて8時間労働制が導入されたのは1919年のことである( 八時間労働制 - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになる

 攻殻機動隊、特に押井 守監督の映画2本が好きで、これまでにも何度かこのブログでは台詞などを引用したり紹介したりしている( 攻殻機動隊 - 独見と偏談 )。今日触れるのはトップ画像の通り、「 戦闘単位としてどんなに優秀でも同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになるわ。組織も人も特殊化の果てにあるものは緩やかな死 」という台詞だ。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。