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政府・政権・行政機関・政治が信頼を失うと一体どんなことが起きるか


  共同通信は、12/28に「厚労省の勤労統計、ずさんな調査」という記事を掲載した。賃金や労働時間の動向を調査する統計調査に関して、決められたルールが守られていなかったという内容の記事だ。記事に指摘はないが、もし万が一実態よりも印象のよい結果を得る為にルールの逸脱が行われていたのだとしたら大問題である。厚労省は今年、裁量労働制拡大法案に関する捏造が疑われる統計を指摘され、精査の為に原票の提出を求められると隠蔽を計り大きく問題視されている。また、労働関連のデータという視点でみれば、入管難民法改正案に関する統計について、法務省の恣意的な解釈による統計データの作成が指摘された。最早少なくとも政府の労働関連のデータは全く信用できないと言ってもいいだろう。というか、労働関連データに限らず全ての政府・行政機関の公表・発表には信憑性を感じられない事態になってしまっていると感じる。


 なぜそう思うのか? 今年・2018年は、実際は今年だけでなく、少なくとも自衛隊の日報隠蔽が取り沙汰された始めた頃(2016年9月)からだろうから、既に足かけ3年なのだが、これまでの2年にも増して、兎に角政権・行政の不誠実な発表・姿勢が相次いだ年だったからだ。さっと思い当たるだけでも、
  • 裁量労働制拡大法案に関する捏造が強く懸念される統計調査の公表と、統計の元になった調査票の隠蔽未遂(2月)
  •  文科省が自民党議員の要請を受け、前事務次官が講演を行った公立校へ圧力をかけていたことが発覚(2月)
  • 森友学園問題に関する公文書が、財務省内で組織的に改ざんされていたことが発覚(3月)
  • マイナンバーを含む個人情報の入力業務を委託された業者が、禁止されている再委託を行っていたことが発覚、年金機構・厚労省の杜撰な管理が問われる事態に(3月)
  • 2016年に注目された南スーダン日報に次いで、自衛隊イラク派遣時の日報も隠蔽されていたことが発覚(4月)
  • 加計学園問題に関して政府説明と矛盾する文書を愛知県が公表したにもかかわらず、政府は合理的な説明を避ける(4月)
  • 財務省事務次官がテレビ朝日記者にセクハラ発言を繰り返したことが発覚し、それについて麻生氏が被害を訴えた女性に「名乗り出ろ」「嵌められた可能性は否定できない」「セクハラ罪という罪はない」などと述べ、政府は閣議で「現行法令において、セクハラ罪という罪は存在しない」とする答弁書を決定(4-5月)
  • 内閣府が運営する国政モニター というサイトへ、ヘイトスピーチが投稿されていたにも関わらず、放置していたことが話題に(5月)
  •  森友学園問題に関する公文書が、財務省内で組織的に改ざんされていたことについて、「理由は分からない」という調査結果を麻生財務大臣が公表(6月)
  • 議員定数削減を標榜して政権の座についたにも関わらず、参院定数6増案成立(7月)
  • 文科官僚が東京医科大から実質的な賄賂を受けて便宜を図っていたことが発覚(7月)
  • 複数の医学部入試不正に関する消極的な文科省の姿勢(8-11月)
  • 中央省庁全般で障害者雇用者数が恒常的に水増しされていたことが発覚(8月)
  • 沖縄で辺野古移設反対を標榜して玉城知事が選ばれ、初会談で「県民に寄り添う」と言いつつ 工事を強行する(9-12月)
  • 政治資金に関する不適切使用を問われた片山地方創生大臣の不誠実な説明(11月)
  • 入管難民法改正案に関する恣意的な統計の公表(11-12月)
  • 河野外務大臣が記者会見で質問を無視する事案が発生(12月)
これ程の事例を挙げる事ができるからだ。1つ1つの問題はそれぞれ何とかしないといけない事案であるが、それ以上に、これ程までに不誠実な発表・姿勢が常態化し、それによって政府・政権・行政機関・政治が信頼を失うと一体どんなことが起きるだろうか、という懸念は深刻だ。

 例えば、入管難民法改正案に関する恣意的な解釈での統計を国会に提出したことが指摘されたにもかかわらず、相応の法案修正もせずに政府・与党は法案を可決・成立させた。これに対して、野党やメディアは勿論のこと、自民党内の一部からも充分な議論がなされていないという指摘があった。この法案を主体的に国会へ提出して可決成立に努めたのは誰か、それは紛れもなく山下法務大臣である。
 法務省は12/27、2人の死刑囚の刑を執行したと発表した(TBSニュースの記事)。これについての会見で山下法務大臣は、


慎重なうえにも慎重な検討を加えたうえで死刑の執行を命令した」と述べている。入管難民法改正案について、杜撰な統計と共に法案を国会に提出し、杜撰な説明しかしなかった大臣に「慎重なうえにも慎重な検討」なんて言われて、手放しで信用する者が一体どれ程いるだろうか。

 
 12/20に能登半島沖で、海上自衛隊哨戒機が韓国海軍駆逐艦から火器管制レーダーを照射されたと防衛省が12/21に発表し韓国に抗議した。これについて韓国側は「事実と異なる」として反論し、両国間の主張に矛盾が生じる事態になっている。この件に関して、防衛上は12/28に現場で撮影したとされる映像を公開した(ハフポストの記事)。



自分は、この映像が日本側の主張の決定的な、若しくは説得力のある証拠になる理由がよく分からない。前述のハフポストの記事を含めていくつかの記事・ニュースを見たが、それでも判断がつかない。
 「日本側がこの映像を公開したのは決定的な証拠としてでなく、あくまで状況証拠の1つを公開したに過ぎない」という見解も多い。確かに、
現在の日韓関係を取り巻く状況におけるかけひきとして、それは全く合理性に欠ける対応とは言い切れない。状況証拠を積み重ねる事が必要だという話は理解出来る。しかし自分には、日本政府は説得力の薄い状況証拠を小出しにする方針、のように思え、日韓以外の第3国からの視点でどのように見えるかを勘案すると、日韓は「五十歩百歩・団栗の背比べ」をしているように思われかないと感じる。
 機密云々という話であっても、勿論韓国や米国当局には既に一般公開した以上の証左を示しているのかもしれない。ならば第3国当局には「日韓は五十歩百歩」とは思われないかもしれないが、第3国の視点とは当局の視点だけでなく、第3国の国民の視点も含まれている。第3国国民は機密に関する情報を当然知る事など出来ないので、報道される情報だけで判断すれだろうから、やはり「日韓は五十歩百歩」に見えかねない。ならば誰が見ても、概ね日本側の主張の方が合理性が高い、と説得力の感じられる、言い換えれば決定的な証拠をさっさと提示して、事態の早期収束を計るべきではないのか、と考える。
 逆に言えば、決して説得力が高いとは言えない映像にも関わらず、何故このタイミングで公開したのか理解に苦しむとも言える。前述のように現政権は、今年だけでも公文書の改ざん、不自然な解釈による、というか捏造の疑いすらある統計、存在する日報・文書を「ない」と隠蔽するなど、不誠実な調査結果を複数公表してきたことを直近頻繁に指摘されている。前年、前々年からその傾向が続いている。当然そんなニュースは国内だけでなく他国にも伝わっている。そんな日本政府が説得力の高いとは言えない映像を公開すれば、どう見えるかは言わずもがなだ。日本人の多くが、中国政府などの強引な説明を目の当たりにしてどう感じるかを勘案すれば、説明する必要すらないのではないだろうか。

 
政府・政権・行政機関・政治が信頼を失うような事案が頻発すれば、国民からの信頼を失い社会秩序にも悪影響を与えることは勿論の事、悪影響は国内に留まらず、外交にも大きく影響しかねない。また、今はまだ日本を好意的に受け止めて観光等の目的で訪れてくれる外国人が増えているが、政府や政権が信頼できないような国である状況が今後も続けば、その傾向も陰る筈だ。日本人にとって最も身近な「政府が信用出来ない国」と言えば北朝鮮だろう。北朝鮮に行ってみたいと気軽に思う日本人が果たしてどれだけいるか? を考えたらそれがよく分かる筈だ。

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