スキップしてメイン コンテンツに移動
 

「優越的地位の乱用」をめぐる問題


 TBSニュース「「GAFA問題」 アマゾンなど本格調査へ」によると、公正取引委員会は2/27からインターネット通販を行う企業を対象にした本格的な調査を始めるそうだ。自分はこのニュースを見て違和感を覚えた。日産前会長のカルロス ゴーン氏は証拠隠滅の恐れなどを理由に今も勾留されたままだ。この公正な取引に関する調査についても、調査を行う前に「調査をします」と公言すれば、各企業で証拠隠滅が行われるかもしれないと思わないのだろうか。
 また「GAFA問題」と、Google、Apple、Facebook、Amazon だけが調査を受けるかのような表現も適切でない。今回の調査の標的がそれらの企業であることには違いはないのだろうが、記事でも触れているように、ヤフージャパンや楽天などに対しても調査が行われる。案件の名付け方が正確ではなく、恣意的だと思えてならない。自分には、記事の内容にそぐわない、若しくは事実と乖離したような、過激な見出しで読み手・受け手の興味を煽ろうとする、粗悪なまとめサイトが用いる手法と団栗の背比べに見えてしまった。例えば日経新聞は、「公取委、ネット通販大手を一斉調査 アマゾンや楽天 ポイント還元巡り」という見出しで報じている。


 この手の話は決してGAFAに限った話ではなく、楽天等はこれまでにも調査指摘を受けてきたし、ドン・キホーテが出入り業者に棚卸しの協力を強制していたことを指摘されるなど、小売り大手等が納入業者に対して、協力の名の下に自分達に都合のよい条件を飲ませる事はしばしばあった。つまり「優越的地位の乱用」に関する問題・指摘はネット通販に限った話でもない。ただ近年はアマゾンや楽天、ヤフーショッピング等のネット通販の規模が拡大し、それらの企業の優位性が強まっており、5月からネット通販の全商品に出品者負担で1%のポイント還元をする事を、アマゾンが2/20に発表したのが今回の調査のきっかけだったようだ。
 朝日新聞はアマゾンの発表(と、恐らくそれに対する不満の声)に対して、世耕経済産業大臣が
公正取引委員会が迅速な調査と必要な対応を進めることを強く期待したい
という見解を示したことを、「アマゾン、出品者負担のポイント還元 「公取委調査を」」という記事で伝えている。この記事で伝えられている世耕氏の懸念の内容について、自分はその通りだと共感する。記事によれば公取委の関係者は、
 アマゾン側が強い立場を利用して一方的に契約変更したために取引相手が損失を出した場合は、独禁法が禁じる「優越的な地位の乱用」に当たる可能性がある
という見解を示しているようだ。世耕氏が言っている事も同様、つまりこれは世耕氏の見解を端的にまとめた一文であるとも言えそうだ。

 しかし、世耕氏がこのような見解を示すのなら、自分が所属する組織・政府の中にも「優越的な地位の乱用」に当たる行為をしている者がいる事も指摘して欲しいと感じる。何がそれに当たるのか、枚挙に暇がなく全てを列記するのは控えるが、直近で言えば、「新聞はTPP11について書かない」とか、「(セクハラを訴えた)被害者に(次官は)嵌められた恐れもある」など、事実に基づかない発言を頻繁に繰り返し、その度に口先だけの反省の弁を述べる副首相や、「福島原発はアンダーコントロール」とか、「辺野古のサンゴは移している」など事実と異なる発言を度々行い、しかもその誤りすら認めないような首相には何も言わないのに、会見での記者の質問に対しては、都合が悪いと合理性のある根拠も示さずに「事実誤認」だと主張し、「事実誤認が拡散されるのは憂慮しなくてはならない」などと言い始め、更に会見の進行を担当する官邸報道室長が、都合の悪い質問をする記者に対してだけ「質問は簡潔に~」などと妨害を行うような状況はその典型例だろう。記者の質問に対して答えずに、「次の質問どうぞ」という発言を繰り返した河野外務大臣も同様だ。
 更に、沖縄の県民投票によって「辺野古移設反対」の民意が明確に示されたにも関わらず、移設工事を一旦止める事すらせずに、「これからもご理解いただけるよう、全力で対話を続けていきたい」などと述べる、二枚舌を使う首相や防衛大臣、官房長官の姿勢も「優位的地位の乱用」に他ならない。

 アマゾンに対して「優位的な地位の乱用」を適切に指摘できる世耕氏には、このような姿勢の首相や官房長官、外務大臣、官邸に対しても、「優位的な地位の乱用」を是非指摘してもらいたい。逆に言えば、世耕氏が自分が所属する組織・政府の身内に対して指摘が出来ないのなら、彼も「優位的な地位を乱用」して、指摘する先を恣意的に選んでいると言われかねないのではないだろうか。

このブログの人気の投稿

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになる

 攻殻機動隊、特に押井 守監督の映画2本が好きで、これまでにも何度かこのブログでは台詞などを引用したり紹介したりしている( 攻殻機動隊 - 独見と偏談 )。今日触れるのはトップ画像の通り、「 戦闘単位としてどんなに優秀でも同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになるわ。組織も人も特殊化の果てにあるものは緩やかな死 」という台詞だ。

フランス人権宣言から230年、未だに続く搾取

 これは「 Karikatur Das Verhältnis Arbeiter Unternehmer 」、1896年ドイツの、 資本家が労働者を搾取する様子を描いた風刺画 である。労働者から搾り取った金を貯める容器には、Sammel becken des Kapitalismus / 資本主義の収集用盆 と書かれている。1700年代後半に英国で産業革命が起こり、それ以降労働者は低賃金/長時間労働を強いられることになる。1890年代は8時間労働制を求める動きが欧米で活発だった頃だ。因みに日本で初めて8時間労働制が導入されたのは1919年のことである( 八時間労働制 - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

馬鹿に鋏は持たせるな

 日本語には「馬鹿と鋏は使いよう」という慣用表現がある。 その意味は、  切れない鋏でも、使い方によっては切れるように、愚かな者でも、仕事の与え方によっては役に立つ( コトバンク/大辞林 ) で、言い換えれば、能力のある人は、一見利用価値がないと切り捨てた方が良さそうなものや人でも上手く使いこなす、のようなニュアンスだ。「馬鹿と鋏は使いよう」ほど流通している表現ではないが、似たような慣用表現に「 馬鹿に鋏は持たせるな 」がある。これは「気違いに刃物」( コトバンク/大辞林 :非常に危険なことのたとえ)と同義なのだが、昨今「気違い」は差別表現に当たると指摘されることが多く、それを避ける為に「馬鹿と鋏は使いよう」をもじって使われ始めたのではないか?、と個人的に想像している。あくまで個人的な推測であって、その発祥等の詳細は分からない。