3/8は国連の定める「国際女性デー」だった。Wikipediaの当該ページによると、
1904年3月8日にアメリカ合衆国のニューヨークで、女性労働者が婦人参政権を要求してデモを起こした。これを受けドイツの社会主義者クララ・ツェトキンが、1910年にコペンハーゲンで行なわれた国際社会主義者会議で「女性の政治的自由と平等のためにたたかう」記念の日とするよう提唱したことがその起源で、国連が正式に3/8を「国際女性デー(国際婦人デー/International Women's Day)」と定めたのは1975年なのだそうだ。国によっては祝日とされている場合もあるようだ。
自分の知る限り、この国際女性デーについて取り上げていた日本語のメディアは、#わたしを勝手に決めないで というハッシュタグを掲げ特集し、関連記事を複数掲載したハフポストと、「日本の女性議員の割合は世界最低レベル 下から数えると…」などを掲載したBuzzFeed Japanくらいだ。自分が見ていた限り、キー局のTVニュースで触れられたケースはなかった。勿論全てのメディアの全ての記事・番組・放送をチェックした訳ではないので、小規模メディアや、もしかしたら大手のメディアでも国際女性デーに触れた程度の記事くらいは掲載しているかもしれない。しかしもしそうであったとしても、日本国内の、特に大手メディアの関心が高いとは間違っても言えない状況だ。
なぜ国際女性デーという日が必要なのか。それは未だに男女平等が実現しているとは言えない状況が、日本だけでなく世界中に見られるからだろう。場合によっては女性が国のトップを務めていたり、女性の政治家が相応に存在していたり、就職や出世に関して性別で差をつけられないような国・地域もしばしば見られるようになったし、とても数少ない例外的なケースではあるものの、近代以前から女性の優位性が高い地域なんてのも一部にはある。しかし世界的に見れば、未だに男性優位の男女格差が支配的な状況で、間違っても「概ね男女平等が実現している」とは言い難い状況である。
そんなことは、首相が「女性活躍」というスローガンを掲げてもう約6年にもなるのに、国会議員や大臣の女性の割合が、彼がそのスローガンを掲げる以前と変わっていない、若しくは逆に減少しているような日本の状況だけを見ても、誰の目にも明らかだ。
Wikipediaの当該ページでも、国際女性デーの趣旨のひとつに、
反差別の日(Anti-Discrimination Day)を挙げている。 にもかかわらず、ハフポストの「働く人の男女平等度、日本はG7最下位。世銀の調査で判明」という記事のコメント欄には、
- 順番をつければどこかが最下位になるのは必定。だからといって、何も示したことにはならない。愚かな見出しだ。
- だって、「(将来の夢は)お嫁さんになりたーい❤」て女の子がわんさかいる国だものwww
- 白人が集計したから、日本が低いんだろ。
- 女性の割合が増えたらなんかいいことがあるの?こんなどうでもいい数字に拘泥する気持ちが理解できない。バカバカしすぎる。
「お嫁さんになりたいという女の子がわんさかいる国」という話も、それ自体どんなデータを根拠にしているのかも定かでなく、その時点で誤認と斬り捨ててもよいが、1万歩譲ったとして、なぜお嫁さんになりたい、専業主婦になりたいという女性が少なくないのかという事に目を向けないのは、やはり女性蔑視に基いているからだとしか言えない。男性と同様の能力があっても、若しくは同様の仕事をこなしても、男性以下の評価しかされない社会なら、女性が消極的になり「外で働いても適切に評価して貰えないなら、外で努力する・仕事をすることに価値を見出せない」などと感じ、その結果専業主婦を選択する場合も確実にあるはずだ。つまり「お嫁さんになりたいという女の子が多い社会」というのは、女性を適切に評価しない社会の裏返しである恐れがある。
「白人が集計云々」という話については、台湾の指数はアメリカの指数よりも上である。その1点だけで考えても単なる言い掛かりでしかない。決して全ての日本人、大部分の日本人が差別的・女性蔑視容認とは言えないだろうが、こんな風に女性蔑視・差別的なコメントが、反差別を訴える記事に寄せられるのが、日本の現状だ。
トヨタパキスタンは、国際女性デーに因んでこんな動画を公開している。
動画のタイトル「Happy Women's Day! #DriventoEmpower」を訳すと、女性の日を祝おう! #運転は力を示す というニュアンスだろうか。中東/イスラム圏の大国・サウジアラビアで、これまで禁じられていた女性の免許取得・運転行為が昨年解禁されて話題になった。パキスタンなど他の中東/イスラム圏の国では既にそんな規制はなかったようだが、それでも、宗教的な理由などから女性の社会進出が遅れているイスラム教の国、特に経済的に豊かではない地域では、まだまだ女性ドライバーが少ない、女性は男性に比べてクルマを運転する機会が少ないことを感じさせる内容だ。
自動車メーカーにとっては、女性ドライバーが増える・女性ドライバーを増やすことは、市場規模を拡大させる為にも重要で、それらの地域での女性の権利拡大については商売上の目論見も含めた上でキャンペーンをしているという側面もあるだろう。しかし、理由はどうあれ企業が社会的な責任・役割(CSR:corporate social responsibility)を果たしているという側面も確実にある。
また、国際女性デーに関する動画は
- ヒーロー(インドのバイクブランド)
- ジャガー(グローバルサイト以外に各国のチャンネルでも同じムービーを公開)
- ヒュンダイトルコ
- フィアットジャパン (リンク先はその1、他に5本/計6本を公開)
- トヨタアメリカ
昨年・2018年の国会では「政治分野における男女共同参画推進法」(候補者男女均等法)」が成立した(朝日新聞の記事)。しかしこの法律に強制力はなく、各党に女性候補を増やす努力を求めるという内容にとどまっている。今年の夏には参院選がある。共同通信の記事「自公、女性擁立の数値目標見送り」によると、首相が「女性活躍・すべての女性が輝く社会づくり」というスローガンを掲げ、2015年に「女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)」を成立させているのに、与党の自民党・公明党は、女性候補者擁立の数値目標設定を見送るそうだ。代表的な野党の設定数値も決して高いとは言えないが、それでも自公の「数値目標の設定すら見送る」という姿勢と、擁立される見通しの女性候補の比率を見れば、候補者男女均等法を、成立後初の国政選挙から既に形骸化させる気満々にしか見えない。しかも数値目標設定を見送る理由は「現職男性が多く、対応が難しい」からだそう。つまり実現出来ない、というか実現するつもりのない目標は掲げない、ということなのだろう。如何に、与党・自民党の総裁でもある首相が掲げるスローガンが羊頭狗肉であるか、美辞麗句でしかないかがよく分かる。そんな政党が再び与党に選ばれるのだとしたら、日本人全体もまだまだ男女平等に対しての意識が低いということになりそうだ。
実態がどうなのかは定かでないが、日本の現状は、結局日本では企業も行政も本気で「女性活躍」を推進するつもりなどないのではないかと思わされるような事ばかりであまりにも残念だ。