4/1はエイプリルフールだ。今年・2019年のエイプリルフールには新元号が発表されることになっている。共同通信「新元号、11時半公表で調整 首相、自ら談話を発表へ」は、
政府は4月1日の新元号公表に合わせ、安倍晋三首相自らが記者会見で談話を発表する方向で調整に入った。新元号への思いを国民に直接伝える狙いがあるとみられると伝えている。首相が新元号を定めるわけでもないのに、首相が新元号を定め、それに何かしらの思いを込めたかのような形式で談話を発表するのは如何なものか? 一世一元という状況において、それをやるということは天皇の政治利用なのではないか、としか思えず、この記事が事実に即しているのならば、強く抗議をしなければならないと感じる。
しかし、NHKの記事「新元号 4月1日の午前11時半に発表」 には「新元号への思い」という表現はない。つまり「新元号への思い」という表現は共同通信の記事を書いた記者が、取材での受け止めを自らの言葉にした表現だ。NHKはすぐに記事を削除/非公開にするので例によってスクリーンショットを記録しておく。
その点に注目すれば、共同通信の記事が必ずしも事実に即した表現になっているとは言えないかもしれない。しかしNHKの記事にも、
正午すぎに安倍総理大臣みずからが記者会見し、新元号に込められた意義などを談話として発表することを決めました。とある。「新元号に込められた意義」という表現からは、首相が主体的に新元号を決定し個人的に何か思いを込めた訳ではなく、「元号選定手続検討会議で協議した、発表する新元号に込めた意義、つまりその元号を選んだ理由」のようなものを発表するというニュアンスに感じられる。NHKと共同通信のどちらのニュアンスが事実に即しているのかは定かでないから、必ずしも「首相が天皇の政治利用しようとしている」とは言えないかもしれない。
しかし、森友学園・加計学園の問題が浮上した頃から、現政府内では人事権を握る内閣官房に役人らが忖度して便宜を図る傾向があることが窺えるし、政府や各省庁が組織する有識者会議や委員会なんてのも、役所や政府の意向に忖度する人が選ばれているようにも思える。それらが示す見解・答申なども結局は政府の意向に忖度している、若しくは政府や役所が、恣意的に自分達に都合よく解釈する余地を作った内容である事がしばしばある為、「元号選定手続検討会議とやらが新元号に込めた意義」というのも、首相に忖度した内容である恐れが否めない。つまり共同通信の見解の方がより事実に近そうに見えるというのが個人的な感想だ。勿論そう思える背景には、昨年来指摘している、NHK報道があまりにも政府よりになっているという、募る不信感の所為もある。
しかも、首相が「天皇・元号を政治利用していない」 ことを明確化する意思があるならば、たとえ形式上にしても、元号選定手続検討会議の代表などが新元号に込めた意義を示すことが妥当だと考える。つまり新元号の発表に際して、首相が「新元号に込められた意義」だろうが「新元号への思い」だろうが、主体的にそれを発表すること自体が、「天皇・元号を政治利用している」ことを疑われかねない行為だろう。
軍歌研究者・近現代史研究者の辻田 真佐憲さんが
とツイートしているのがとても印象的だ。ちなみに、過去に「興国」という元号もありました。エイプリルフールの日に首相みずから「思い」を語るそうなので、何があってもおかしくないということで。— 辻田 真佐憲 (@reichsneet) 2019年3月29日
将来的に2019年4/1がブラック・エイプリルフールなどと呼ばれるようなことにならないかとても心配である。