コロンバイン高校銃乱射事件が起きてから今年で20年。この週末にBuzzFeed Japanは事件に関連する記事2本を掲載した。事件が起きたのは1999年4/20なので、節目という意味でなら先月に掲載した方がタイミング的に自然だっただろう。共に英語版からの翻訳記事なので何かしらの制約があってこの週末というタイミングで記事が掲載されたのかもしれない。コロンバイン高校銃乱射事件とは、詳しくはWikipedia等で確認して貰った方がよさそうだが、同校の生徒2人が銃を乱射し、12人の生徒と1人の教師を射殺、その生徒2人も自殺したという事件だ。重軽傷者24人が出た。2人は同校でいじめにあっていたと報じられている。
アメリカではそれ以降も銃乱射事件が度々起きており、中には同事件と同様に学校や生徒・学生が標的にされる事件もしばしば起きている。学校が標的にされた事件ではないが、 2017年に発生した、ホテル32階の部屋からカントリーミュージックフェスティバル会場に向けて銃が乱射され、58人死亡、546人負傷という、アメリカ史上でも1、2を争う規模の甚大な被害を出したラスベガス銃乱射事件はまだ記憶に新しい。
昨日BuzzFeed Japanが掲載した記事2つの内の1つは「FBIが追っていた「銃乱射事件の熱狂的ファン」 散弾銃で自殺」という見出しの記事だ。
コロンバイン高校銃乱射事件の「熱狂的なファン」である18歳の女性が、コロラド州で遺体となって発見された。女性は銃で自殺したとみられる。という内容の記事だ。 この部分だけでは、単に精神状態に問題のある女性が自殺したという話にも見えるだろうが、記事では「当局は彼女を「非常に危険」とみなしており、彼女を拘束して精神状態を検査するべきという勧告も出ていた」「パイス(当該女性)がデンバー市内で事件を起こす可能性があるとみたコロラド州のFBIはデンバー中心地の全ての公立学校を閉鎖。パイスを拘束するため、36時間に及ぶ大規模な捜索を開始した」ともある。しかも「同日パイスはマイアミからデンバーに移動し、すぐに連射式の散弾銃と弾薬を購入した」ともある。つまり、当局から危険視され、公立校を閉鎖するような緊急措置の原因にもなる人物が、連射式の散弾銃と弾を購入できるのがアメリカの実状だ。
コロンバイン高校の事件は、事件自体の規模は特質して大きいわけではないようだが、学校が標的にされたことで大きな注目を浴びた。その後他にも銃乱射事件は起きているのに、20年後という節目というタイミングもあるが、関連記事が未だに報じられることも当時の衝撃の大きさを物語っている。そんな衝撃的な事件から20年も経て、しかもその間も度々乱射事件が起き、毎度決して少なくない犠牲者が出ているのに、アメリカでは遅々として銃規制が進まないという、アメリカ国外から見れば信じられない状況が続いている。
今年の3/15には、ニュージーランドでもイスラム教の教会にあたるモスク2か所が銃撃され、50人が死亡するという凄惨な事件が起こった。ニュージーランドもアメリカと同様に銃の入手が比較的容易な国なのだそうだが、ニュージーランドのアーダーン首相は、事件後即座に銃規制強化を表明した。一方アメリカでは、2018年2月にフロリダ・パークランドの高校乱射事件後にトランプ大統領は「銃器を上手に扱える教師がいれば、攻撃をたちまち終わらせられるかもしれない」と述べた。しかしその後1か月も経たない内に「教員が教室で発砲、生徒締め出し立てこもる 米ジョージア州」(CNN)という事件が起きている。トランプの主張が如何に的外れだったかはすぐに証明されてしまった。
このように書くとニュージーランドは素晴らしく、アメリカは愚かだと言っているように見えるかもしれないが、決してニュージーランドも素晴らしいとは言えない。何故なら、アメリカなどで銃乱射事件が度々起きていたにもかかわらず、対岸の火事として受け止め反面教師にせず、銃規制の強化を起こったっていたからだ。勿論銃規制強化が事前になされていればモスクでの乱射事件が起きなっかったとは言えないが、それでも予防措置が充分でなかったとは言えるだろう。
BuzzFeed Japanが掲載したもう1つの記事は「コロンバイン高校銃乱射事件から20年 「歴史のため」元教師が明かす真実」という見出しである。この記事は、当時同校の教員だったジュディス ケリーさんの手記だ。彼女は英語教師(つまり日本で言う国語教師)で、事件の直前に犯人生徒の片方が書いた異様な作文を目の当たりにし、それをスクールカウンセラーや彼の両親に直接伝えて懸念を示していたという。しかし犯人生徒の母親は事件後に受けたインタビュー記事や、出版された手記の中で彼女とは異なる見解を示し、懸念が充分に伝えられなかったという主張をしているそうだ。つまり、ケリーさんは母親が事実と異なる主張をしていると、この記事で訴えている。
記事を読んだだけでは、母親がどんな意図でケリーさんと異なる主張をしているのかも判断がつかないし、さらに言えば、ケリーさんの主張と母親の主張のどちらが事実に即しているのかも、記事を読んだだけでは判断し難い。この事件は大きな注目を浴びた事件なので、警察の捜査記録等を丹念に当たればどちらの主張が事実に即しているのかが分かりそうだが、それをこの記事から読み解くことは出来ない。なぜなら記事に書かれているのはケリーさんの主張だけだからだ。
この記事でケリーさんが訴えているのは、事件を風化させてはならないということと、どちらが事実に即しているかは別としても、事実に反する主張で事実を捻じ曲げてはならないということだろう。しかし、読み手は更に、事実がなんであるかを後世に伝える為に必要なのは公的な記録だということも感じ取るべきではないだろうか。昨今日本では公文書が改ざんされ、不正な統計がまかり通りデータが捏造され、更に後世に残すべき文書が不適当に廃棄されるようなことが横行している。敗戦直前、当時の日本政府は不都合な書類を焼き捨てたそうだが、戦後70年以上も経ち、元号も2度変わっているにもかかわらず、ある意味この国は進歩がないとも言えるだろう。
しかし間違ってはいけない。そんな国にしてしまっているのは決して日本の政府だけではない。そんな政府を、つまり与党を、選挙の度に選んでいる有権者こそが日本の進歩を止めているというのが現状だ。
5/17に台湾でアジア初の同性婚を認める法律が可決されたそうだ(BuzzFeed Japan)。ということはつまり、台湾よりも先に日本で同性婚の法整備が行われていれば、日本がアジア発になり得たということだ。本当に日本はアジアNo.1の先進国ではなくなってしまった。バブル以後の日本は経済的にも文化的にも足踏み状態で、近隣諸国にどんどん追い抜かれている。