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G20開催によって動かされたのは世界でなく日本の市民


 G20が始まった。テレビのニュースでも大阪は厳戒態勢、平時とは全く違う様相だと報じている。BuzzFeed Japanの記事「大阪がゴーストタウンに?! 誰もいない高速道路の写真が話題に」がまとめているのを見ると、まさに「異様な光景」という表現がよく似合う。このようなことを見ていて思ったことがある。それは、
 G20の開催によって市民が振り回されている、東京五輪でも同じことが起きるのだろう 
ということだ。

 そんな「G20で市民が振り回されている」という思いの前提には、6/25に野党が衆議院に内閣不信任決議案を提出し、それに関する本会議で自民・萩生田氏が行った演説での表現がある。
 現在、自公(+維新)ら与党の議席数は圧倒的で、日本の政党には軒並み所謂党議拘束が実質的に存在する為、余程の事がなければ与党の議員が造反することはない。ハッキリ言って内閣不信任決議案に関する本会議での審議自体が茶番だ。勿論野党側もそれを分かった上で決議案を提出している。ただ、「改竄/捏造/隠蔽/不適切廃棄/記録をそもそも取らない」が頻繁に発覚しているのが今の政権である、ということを勘案すれば、例え他にどんな成果が政権にあろうが、その成果とやらも誇張された恐れは否めないし、誇張されていなくとも、行政の長が行政機関に頻繁に不正を許してしまうという時点で、その資質に欠けていると言わざるを得ない。つまり、内閣不信任決議に反対するということは、「改竄/捏造/隠蔽/不適切廃棄/記録をそもそも取らない」が頻繁に起きてもいい、と言っているのも同然で、与党の議員であっても党議拘束があっても造反するべき緊急事態、つまり「余程の事」ではないのか?と自分は思う。


 6/25の衆院本会議で、自民・萩生田氏が野党が提出した内閣不信任決議案に反対する演説を行った。彼は、自分が所属する政党の総裁でもある安倍総理を積極的且つ一方的に賛美する演説を行い、その中でこう述べた。

 これだけ世界を動かした総理大臣が、かつていたでしょうか?


 この動画は当該部分から始まるようにしてあるが、彼がそう述べた理由はその直前に述べられている。安倍総理の外交手腕は枚挙に暇がないとし、G20の開催・TPPの成立への尽力・日米貿易交渉などを挙げている。まずTPPの成立に関して、安倍首相の成果なのかどうかは分からないが、現政権が他国を主導した側面は確かにありそうだ。しかし、元来米国も参加する筈だったのに、米国を交渉の場に引き留めることは出来なかったし、安倍氏は2012年の暮れに政権に返り咲く以前は「TPP交渉断固反対」を声高に叫んでいた人物だ。政権に返り咲くと「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉参加に反対する」と言っただけとして「TPP交渉の推進」に転じた。しかし「安倍 TPP 反対」等でGoogle画像検索をすれば、安倍氏率いる自民党が「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。」などのスローガンを掲げポスターを作成していたことが分かるだろう。
 また、日米貿易交渉に関しても、日本側はTPPの条件以上に譲歩するつもりはないとしているが、米国はTPPなど我々には関係ないという態度を示している。それの一体何が外交の成果なのだろうか。G20に先んじて行われた日米首脳会談の直後に、トランプ米大統領は「日米貿易合意は夏の参議院選挙後まで先送り」という旨のツイートをした(ブルームバーグ)。交渉内容が参院選に有利に働くのだとすれば、安部氏とトランプ氏は緊密な間柄だそうだから、安倍氏もトランプ氏も参院選前に内容を自ら誇りそうなものだ。しかしそれをしないということは…少し考えたらどういうことか分かる筈だ。
 萩生田氏が誇ったことは「安倍首相は任期だけは長く、そのおかげで各国首脳に名前だけは憶えて貰っている」程度のことで、それを「これだけ世界を動かした総理大臣が、かつていたでしょうか?」などと大袈裟に言ったに過ぎない。動物が威嚇する際に、自分を大きく見せる為に両手両足を広げて見せるのと同程度の話だ。

 G20の開催も、開催しただけでは誇るようなことでも何でもない。「G20を開催した=世界を動かした」なら、これまで17回も様々な国が世界を動かしてきたことになるし、毎年誰かが世界を動かしていることになる。ハッキリ言って、G20=世界を動かすではなく、大阪のG20で最も動かされているのは、余計な不便を強いられている市民である。それはこの投稿の冒頭の話からも分かることだ。


 冒頭の話だけでは、G20によって余計な不便を強いられているのは大阪の市民だけかのようにも見えるが、その余波は首都圏にも及んでいる日経新聞)。BuzzFeed Japanの記事「G20でトイレ個室のゴミ箱も撤去。生理用品はどこに捨てればいいの?という声が」によれば、大江戸線・六本木駅のトイレから、「サミット開催に伴う警戒」と称してサニタリーボックス(使用済み生理用品等を捨てる小型のゴミ箱)が撤去されたそうだ。記事では、その他の駅でも同様の対処がなされているケースがあり、西武線池袋駅では捨てられない使用済み生理用品が個室内にいくつも残されていた、とされるツイートも紹介している。
 この話に関して、次のようなツイートがタイムラインに回ってきた。


 そもそも、これ程までの厳戒態勢が本当に必要なのだろうか。テロを起こさせない為の予防策という意味合いは分かるのだが、その為に必要以上に市民に不便が強いられていないだろうか。これまで銃乱射事件や爆破事件が起きた都市は海外には複数あるが、地域によってはゴミ箱に爆破対策を講じる場合はあるようだが、 「テロ防止の為にゴミ箱を全て撤去」という話は聞いたことがない。まるで戒厳令か何かのように、道路を封鎖というのもやり過ぎに思える。まるで「市民はテロリスト」と疑っているような気さえしてくる。
 しかし百歩譲って考えてみれば、ロッカーやゴミ箱をG20期間内にだけ限定して使用中止にすることには全く妥当性がないとは言えない。しかし、主に使用済み生理用品を捨てるゴミ箱は、普通のゴミ箱やロッカーとは性質の異なる存在で、自分は、どちらかと言えばトイレそのもの近い存在だと感じる為に、前述のツイートには全く賛同できないし、その撤去はやり過ぎだと思う。

 排便の際には男女問わず尻を紙で拭く。女性は男性とは異なり排尿の際にも紙で股間を拭う。使用済み生理用品はこの股間や尻を拭った紙と同じ性質のものだろう。例えば、「テロ防止の為に使用済みの便所紙は各自持ち帰って下さい」という張り紙がトイレにあったとしたら、このツイートをした者は納得できるのだろうか。自分は全然納得できない。使用済み生理用品を捨てずに持ち帰れというのはそういうことだ。
 もっと大袈裟に言えば、「テロ防止の為に排泄物は流さずに各自で持ち帰ること」とするのと同じとも言えるかもしれない。街中の人が皆、鞄に自分の大便や尿を入れて持ち歩いているというのはかなり異常な状況だ。それが大便や尿等直接的な排泄物でなかったとしても、尿を拭った便所紙、ウンコを拭いた便所紙を持ち歩いているとしても確実に不衛生である。使用済み生理用品を捨てずに各自持ち帰れ、というのはそういうことだろう。

 やはり、G20開催は「=世界を動かした」ではなく、余計な不便を強いられた市民に「本来必要のない動きを強いた」側面の方が強いとしか思えない。そんなに厳戒態勢が必要なら、市民がなるべく外に出てこないように、「G20期間中みんな休みになる法」でも実施すれば良かったのではないか。そしてその東京オリンピック版「五輪期間中みんな休みになる法」と「チケット持ってない奴東京に来るな法」も検討した方がよいのではないだろうか。

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