最近はやや下火になったが、2018年の夏頃以降、トップ画像の吹き出しの中にセリフを入れる大喜利的なSNS投稿が流行った。この画像の元ネタは、「心の病と精神医学」(ナツメ社/影山 任佐 著)に掲載されている統合失調症の症状を紹介するイラストで、元ネタには「今日は晴れですね。晴れといえば、僕の誕生日は来月だけど君はお肉が好き?」というセリフが添えられている。
風刺の効いたセリフを添えて投稿される場合もあったが、支離滅裂な思考・発言ジェネレーターなるWebサービスが登場した結果、画像作成のハードルが下がり、SNS上で口論になった相手の主張を添えて投稿するような、相手に対してマウントを取る為だけに利用される場合も多かった。元ネタが掲載されている本を出版しているナツメ社は、そのような利用は控えて欲しいという旨の声明を2018年9月に示している。
そんなこともあって、「支離滅裂な」出来事や主張などを目の当たりにすると、トップ画像がどうしても頭に思い浮かぶ。昨日、共同通信の最新の世論調査結果が公表されたのだが、その結果が自分にはどうにも支離滅裂に見えたので、この画像をまた思い出したのだ。支離滅裂だなと感じたのは、消費増税に反対と答えた人と、現政権下での憲法改正に反対と答えた人が共に50%を超えたにもかかわらず、現政権の支持率も50%を超えており、政党別の支持率でも、それらと正反対の方針を示す与党・自民が40%で支持率トップであるという点だ。
更に、自衛隊の中東派遣に関しても反対が50%を超えているが、それも政権与党の支持率が高いことと矛盾しているように思える。まだ現政権は自衛隊のホルムズ海峡派遣・有志国連合参加を名言したわけではないが、現首相がトランプ氏の太鼓持ち化していることを考えれば、現政権と与党が今後どのような方針を示すか、若しくは何故明確に派遣・参加を否定しないのかは容易に想像がつくだろう。
共同通信の世論調査について、グラフにしてより把握しやすくしている記事や報道が見当たらなかったので、東京新聞の記事を元にしてグラフを作成してみた。
共同通信社 全国電話世論調査
調査日2019.8.17-18 設問・数値は東京新聞「自衛隊中東派遣57%反対 共同世論調査 有志連合構想巡り」より中東・ホルムズ海峡の安全確保に向けた米主導の有志連合構想を巡り、日本が自衛隊を
- 派遣すべきではない 57.1%
- 派遣すべき 28.2%
今後の日韓関係を
- 懸念している 62.4%
- 懸念していない 32.4%
安倍内閣の支持率
- 支持 50.3%
- 不支持 34.6%
10月に消費税率を10%へ引き上げる政府方針に
- 反対 51.3%
- 賛成 34.6%
外食・酒類を除く飲食料品などの税率を8%に据え置く軽減税率制度を
- よく理解している 7.1%
- ある程度理解している 48.3%
- あまり理解していない 32.4%
- ほとんど理解していない 11.5%
輸出管理上のホワイト国(優遇対象国)から韓国を除外した対応を
- 評価する 68.1%
- 評価しない 20.1%
立憲民主党が国民民主党などに要請した衆院会派合流構想を
- 評価しない 50.3%
- 評価する 30.2%
野党の在り方に関して
- それぞれの党を維持し、国会や選挙で協力して与党に対抗する 36.7%
- 政策課題ごとに是々非々で対応する 32.9%
- できるだけ多くの野党が一緒になり、政権交代を目指す政党をつくる 21.0%
安倍晋三首相の下での憲法改正に
- 反対 52.2%
- 賛成 35.5%
政党支持率
- 自民 40.9%
- 立民 10.0%
- 国民 1.4%
- 公明 5.1%
- 共産 4.3%
- 維新 3.8%
- N国 1.3%
- れいわ 4.3%
- 支持政党なし 26.6%
疑問に感じるのは、共同通信の世論調査に限ったことではないが、「安倍政権の経済政策を、評価する/しない」という種の設問が用意されていないことだ。現政権が成立、というか継続決定した2017年衆院選の際には、多くの人が政権の支持理由に「経済政策」を挙げていた。しかし、実質賃金は6ヶ月連続で低下する(ロイター「6月実質賃金は前年比0.5%減、物価高止まり響く=毎月勤労統計」)など、今年・2019年に入って明らかに日本の経済は停滞、というか寧ろ後退している。なのになぜ、今こそ現政権の経済政策に関する設問を用意しないのか、不思議でならない。
そもそも前述の厚労省発表の毎月勤労統計調査だって、2018年12月に不正が発覚しており、果たして真に受けてよいのか定かでない。但し、真に受けてはいけないデータだったとしても、その場合は更に悪いことが隠されている恐れが高く、良い数値を悪くする方向で改竄しているとは考え難い。何故なら、現政権下ではこれまでいくつもデータの改竄・捏造・隠蔽が発覚しているが、どれも全て政府に利する方向性で行われてきたからだ。
そんな状況であるにもかかわらず、通信社や新聞・テレビ等が、世論調査の設問として「現政権の経済政策を、評価する/しない」を設けていないのを見ると、政府に対して何らかの忖度をしているように見えてしまう。政府が都合の悪いデータを隠し、メディアが適切に追及する姿勢を見せないことを勘案すると、この世論調査の結果も果たして信憑性があるのかどうか分からなくなってくる。
世論調査に応じた市民が支離滅裂なのか、調査を行う側が何らかの操作をしているから支離滅裂な結果になっているのかは定かでない。この自分が覚える違和感は、考えすぎという場合もあるかもしれないし、自分の読み解きが不十分である恐れもないとは言えない。しかし率直に言って、自分には何かがおかしいように思えて仕方がない。