オリンピックを見据えて羽田空港の発着枠を増やす為に、国土交通省は来年2020年3月から東京都心の上空を通過する新たな飛行ルートの運用を始めることを決めたそうだ。テレ朝ニュース「羽田新ルートは来年3月から 安全・騒音対策は?」によると、当該地域住民らから騒音や落下物への懸念が示されているそうで、それに対して国交省は「飛行高度の引き上げなどで対応したい」としたらしい。もしテレ朝ニュースが伝えたニュアンスが実際と大きく乖離していないのであれば、
本当に大丈夫か?国交省。いや、確実に大丈夫じゃないだろ?としか思えない。次のムービーは実際に放送された映像だ。
大きな疑問は「飛行高度を引き上げると落下物は落ちてこないのか?」という点である。地球には重力があるので飛行高度を引き上げても、落下物は最終的には地表に落ちてくる。ジェット機の飛行高度はおよそ10km程度であり、どんなに高く飛ぼうがそこからの落下物は確実に地上に降ってくる。つまりどんなに高く飛ぼうが落下物対策にはならない。
しかも、懸案になっているのは離発着に関する話だ。離発着時の高度を上げるとは一体どういうことか。あまりにも現実的でない話だが、国交省が言うように、飛行高度を上げると落下物対策になると仮定する。しかし、離着陸の際にはどうしても飛行高度を下げなくてはならない。高度を下げなくては離発着できない。例えば、ヘリコプターのようにジェット機も垂直に離発着できるのであれば、飛行場の上空まで高高度で到達し、飛行場上空で高度を下げて離着陸することも出来るだろうが、誰もが知るようにそんなことは出来ない。
このように、どんな風に考えようが国交省の説明は支離滅裂と言っていいレベルだ。そんな組織に、航空機に限らず交通インフラの、交通インフラに限らず建築物等も含めて安全対策を任せて大丈夫だろうか。自分には大丈夫だとは全く思えない。
前述のニュースは昨日・8/8の昼に放送されたものだ。テレビ朝日は夜のニュース番組・報道ステーションでも、同案件を取り上げていた。
こちらでは、実際に新飛行ルートの運用が始まった場合のシミュレーション、国交省の言う騒音対策に実効性があるのかを検証する内容になっている。しかしなぜか落下物対策への言及は、地域住民が不安がる声を取り上げただけで、国交省の言う「飛行高度を引き上げる」に実効性があるのかは検証もしていないし、前段で自分が指摘したような不合理さにも触れられていない。
昼のニュースのニュアンスが実際と乖離していたか、若しくは報道ステーションが国交省の整合性の低い見解に忖度し、整合性の低さが目立たないように配慮したかのどちらかとしか思えない。どちらにせよ違和感があるのは同じことだ。
テレビ朝日の姿勢もどうも不可解だが、何よりも石井国交大臣が「地元の理解を得られた」としているのも、落下物への対策がいい加減な話ではぐらかされていることを考えれば、合理性のある見解とは到底考え難い。2020年3月からの新ルート運用開始ありきで示しただけの強引な見解と受け止めるのは、決して不自然ではないだろう。今の政府には、辺野古基地移設、秋田県へのイージスアショア配備などに関して、結果ありきで強引な見解を複数示してきた前歴もある。
自分の実家は厚木基地から直線でおよそ10kmの場所にある為、上空を米軍機が飛ぶのは日常的な光景だった。1977年に、厚木飛行場を離陸した米軍の偵察機が横浜市内の住宅地に墜落するという事件(Wikipedia:横浜米軍機墜落事件)が起きてはいるものの、その後は、墜落・落下物による死傷者が出る事件が起きたという記憶はない。しかし、報道ステーションの報道でも示されているし、取り上げられた事案以外にも複数、飛行機から部品等が落下する事案は確実に起きている。
自分達の頭の上を頻繁に飛行機が飛ぶようになるのであれば、その被害に遭う確率は低くても、万が一被害に遭えば深刻な結果になる恐れが高い為、周辺の住民が落下物による事故を懸念するのは当然だ。国交省がそれに対するケアを充分に行っていない、そしてそれをはぐらかすようなことを言っているのであれば、その不安は余計に大きくなる。
落下物は事案が生じれば深刻な被害になるが、前述のように、被害に遭う確率は高いとは言えない。そんな観点で考えれば、新ルートの運用が始まれば、確実に多数の住民が影響を被る騒音の方が、ある意味で深刻な問題なのかもしれない。
今朝ある番組で福岡県出身者が「街中に空港がある福岡県民からしたら、それ程騒ぐべきこととも思えない」というニュアンスのコメントをしていた。次の画像はGoogleマップをキャプチャーしたものだが、確かに福岡空港は市街地の中にあり、どうやっても市街地上空を飛行しないと離発着できない。
これは、調布飛行場や厚木基地でも同じことだ。しかし、どの飛行場でも騒音問題はある。
前述のように、自分の実家は厚木基地からおよそ10kmの場所にあり、米軍機の音が聞こえてくるのは日常的な光景だった。だが、自分の実家は飛行場からおよそ10km離れた場所にあった為、そして生まれてからずっとその環境にいたので、我慢できない程の騒音という認識はなかった。但し、それでも低空飛行する米軍機がたまに飛んできた。閉めきったた部屋の中でも隣の人と会話ができなくなり、窓がガタガタと震え、大型トラックが家の前を猛スピードで走ったかのような振動が起きることもあった。
恐らく、前述の福岡出身者も自分の実家のと似たような環境の場所に住んでいたのだろう。着陸寸前、離陸直後の飛行機が頭上を飛ぶような場所に住んでいたのではなかったのだろう。「飛行機の騒音は、利便性の為には仕方ない」のようなことを言う人の多くは、ハッキリ言って飛行機の騒音がどれ程のものかを正確に理解していないと思う。恐らく暴走族が近所の幹線道路を走るくらいの感覚なのだと思う。暴走族は毎日は走らないし、騒音も飛行機のそれには到底及ばない。その程度の認識で軽はずみに「利便性の為なら仕方ない」なんて言わないで欲しい。そのような人達の中には、いざ運用が始まったら、今度は「嫌ならお前が引っ越せ」のようなことを言い始める人もいるだろう。普天間基地の問題同様にあまりにも無責任だ。
前にも書いたが、羽田空港のすぐ対岸にある城南島公園にはキャンプ場がある。そこでキャンプをすると、頭のすぐ上を飛ぶ飛行機の轟音が半端でないことを体験できる。飛行機が頭上を飛ぶ生活を想像するのに充分な体験ができる筈だ。「飛行機の騒音は、利便性の為には仕方ない」等と言う人には、是非とも1か月くらい連泊してみて欲しい。