スキップしてメイン コンテンツに移動
 

危険なのはヒグマをSNSに投稿する行為ではなく、接近して撮影する行為


 BuzzFeed Japanは8/11に「「熊はぬいぐるみじゃない」野生のヒグマをSNSにアップは危険、注意呼びかけ」という見出しの記事を掲載した。SNS投稿などの目的で、安易に熊に接近して撮影するのは危険、という注意喚起・啓蒙を目的とした内容である。また、本来人を怖がるはずの野生の熊が人に馴れてしまい、餌を貰えると思って人に近づいてくるようになってしまう恐れがあるので、餌を与えたりするのもしてはならない行為である、という注意もある。
 確かに昨今、様々な理由によって、熊に限らず野生動物が市街地にも現れるようになっているという話が度々報じられる。熊はその中でも人に危害を加える恐れが高い動物で、不意に遭遇すれば最悪命を落とす恐れもある。この記事の啓蒙している内容には全く異論はない。


 しかし、この記事の「「熊はぬいぐるみじゃない」野生のヒグマをSNSにアップは危険、注意呼びかけ」という見出しの付け方は雑だ。危険なのは接近して撮影することであって、SNSに写真をアップすることではない。内容を読めば、SNSに投稿する目的で接近して撮影するのは危険、と言いたいのは理解できるが、このような見出しを付けてしまうと、ヒグマを撮影することは全て危険という誤解を生みかねない。その結果、SNSにヒグマの写真が投稿されただけで嫌悪感を示す短絡的な人を助長しかねないと危惧する。

 こんな風に遠くからでも被写体を大きく撮影できるニコンのCOOLPIX P1000などを筆頭に、高倍率ズームレンズを搭載したデジタルカメラは決して珍しい存在でも、明らかにプロ仕様の高額な商品でもない(価格ドットコム:P1000)。2019年8/12現在、光学42倍ズーム(プログレッシブファインズームを使えば84倍)を搭載した、キヤノン PowerShot SX420 IS が1万7800円で手に入る(価格ドットコム調べ)。
 その種の高倍率ズームレンズを搭載したカメラを使えば、熊との間に安全な距離を保ちつつ、すぐそばまで接近したかのような写真を撮影することは、誰にでも出来ることだ。そのような高倍率ズーム機を用いて撮影された写真であれば、「ヒグマをSNSにアップは危険」とは言えない。つまり、BuzzFeed Japanの当該記事の見出しは、誤解を生みかねない表現だと言えるだろう。


 BuzzFeed Japanは、ファクトチェック記事にも力を入れているWebメディアだし、この記事を書いている籏智 広太さんは、その種の記事も多く執筆している記者/ライターだ。この記事の内容や見出しは流石にフェイクニュースに該当するようなものではないが、それでも、こんな的確とは言い難い見出しで記事を書いていたら、ファクトチェック記事の信憑性も下げることになってしまうのではないか。
 ファクトチェック記事を手掛けるメディアや記者/ライターには、そうではないメディアや記者/ライター以上に正確性が求められる。そうでないと、ファクトチェック記事でも実態に即した判断をしていないのではないか、実態と乖離した表現を用いているのではないか?という懸念を抱かれかねない。簡単に言えば信憑性に関わってくる。

 昨今SNSには、ただでさえ短絡的な揚げ足取りをする人がいるのに、BuzzFeed Japanがその種の行為を煽りかねない見出しを記事に付けたのは残念だ。勿論、そのような行為に及ぶ人がいたとして、その行為の主な責任は行為の主体となる者にあることには違いないが、当該記事の見出しは「「熊はぬいぐるみじゃない」野生のヒグマに接近して撮影するのは危険、注意呼びかけ」でいいのではないか。わざわざ誤解を生じさせる恐れのある表現を用いる必要はないだろう。

このブログの人気の投稿

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。