スキップしてメイン コンテンツに移動
 

今の政権/与党は「ざんねんなせいじか図鑑」


 2016年に出版された、動物たちのちょっと残念な側面を魅力として伝え、動物たちがより愛おしく感じられる児童書「ざんねんないきもの事典」は大ヒットとなり、映像化もされている(ざんねんないきもの事典 | NHKアニメワールド)。
 ざんねんないきものは自然界だけでなく、人間の世界でもしばしば見つけることができる。トップ画像は言うまでもなくそのパロディであり、当該本の第3弾の表紙をイメージして作成した。ざんねんな人間、というか政治家は、特に現政権下には多数実在している。ネタ元の「ざんねんないきもの事典」はざんねんな側面から動物たちの愛くるしさを紹介するものだが、ざんねんな政治家たちには愛くるしさは微塵もない。彼らから感じられるのは邪悪さだ


 トップ画像のネタを思い付いたのは、昨日・12/9午前の官房長官記者会見で、桜を見る会について、各社の世論調査で「政府の説明に納得していない」という回答が大半を占めていることを記者から指摘され、菅氏が
残念ながら国民からまだ理解されていないことを承知しているので、今後とも懇切丁寧に政府として説明したい
と述べたからだ(菅長官「桜を見る会、残念ながら国民に理解されてない」:朝日新聞デジタル)。次の動画は、テレ東NEWSのYoutubeチャンネルが掲載した12/9午前の官房長官記者会見と、当該部分の抜粋である。



 彼は記者の「説明責任を果たしていると認識しているのか?」という旨の質問に対して、1日2度30分程度ずつ説明を出来る限り行っている、という認識を示し、その上で「残念ながら国民に理解されていない」と述べている。
 まず、12/4の投稿でも触れたことだが、どんなに会見の回数を重ねても、どんなに時間をかけても、合理性/整合性のある説明がなされなければ、決して責任を果たしたことにはならない。説明の回数や時間を前面に出して合理性を匂わすのは、説明内容の合理性に自信がないことの表れだろう。さらに、「説明の回数や時間を重ねているのに理解されなくて残念」と彼は言っているので、つまり彼は「私たちは説明する責任を果たしている。なのに国民が理解しないのは残念だ」のようなことを言っていると受け止めても、決して不自然ではないだろう。
 一体どの口でそんなことを言っているのだろうか。「理解されていない事は承知している」というニュアンスによって、謙虚な受け止めを演出したかったのだろうが、自分の目には、「お前ら国民が理解しなくて本当に残念だよ」という皮肉たっぷりの横柄な態度にしか思えない。残念なのは、提出すれば一発で潔白を証明できる名簿を破棄したとし、前夜祭の明細や領収書も提出しない首相や官房長官、そして全体の奉仕者であるにもかかわらず、抗うこともせずに彼らの手先になっている内閣府などの官僚や、首相や官邸の話の合理性のなさを批判も指摘もせずに、一体となって注目逸らし/証拠隠しに躍起になっている与党議員たちだ。
 つまり残念な当本人から「残念ながら国民に理解されない」なんて言われる筋合いはこれっぽっちもない。

 因みにあの産経新聞でさえ、直近の菅氏の記者会見での答弁を前提に、「「桜を見る会」菅氏の鉄壁答弁崩れ、危機管理に綻び - 産経ニュース」という記事を掲載している。しかしである。果たしてこれまでの菅氏の答弁は鉄壁だっただろうか。これまでも彼は
  • 指摘は当たらない
  • 適切に対応している
  • 承知していない
を念仏のように繰り返すだけで、都合の悪い質問に対してはまともに応答していなかった。最近やっと一部の記者たちがそのような応答をスルーしなくなっただけであり、これまでも決して鉄壁答弁などではなかった。


 昨日・12/9で今年度の臨時国会が閉会した。野党は延長を求めていたものの、前述のように政権擁護に躍起な与党がこれを認めず、首相不在の閉会中審査でお茶を濁す形になった。個人的には、内閣不信任決議案の提出を見送った野党の姿勢には納得がいかない部分もある。だがしかし、戦略的な視点が必要なことも理解はできる。
 安倍氏は国会の閉会に際して行った記者会見の中で、
憲法改正はたやすいことではないが、私の手で成し遂げていきたい
と述べた(首相記者会見 憲法改正「私の手で成し遂げていきたい」 - 産経ニュース)。次の動画はSankeiNewsのYoutubeチャンネルが掲載した会見のノーカット版と、当該部分の抜粋である。



 彼は以前
憲法はこの国のかたち、理想の姿を示すもの
という珍説を披露したことがあるが(「自衛隊の違憲論争に終止符を」 安倍晋三首相、ビデオメッセージ全文 - 産経ニュース)、近代以降の民主主義国家における憲法は、国民がそれによって国家権力を制限するもの、つまり権力の暴走を抑止する為のシステムである(憲法 - Wikipedia)。
 日本の総理大臣は日本における国家権力の最たる存在で、彼こそが最も憲法に縛られるべき、また憲法を最も遵守しなければならない立場であり、彼は前述の珍説を披露した時ですら、憲法に縛られるべき首相としてではなく、国民の代表の1人である自民党総裁として述べる、という体裁だった。しかし昨日の会見では、首相としての記者会見であるにもかかわらず、「憲法改正を私の手で成し遂げる」とハッキリと言っている。憲法に最も縛られるべき存在が、自ら憲法改正を主導するなどあり得ない話だ。
 この、以前は、憲法改正に言及する際は、建前上だけだが国民の代表としての立場・自民党総裁として述べていたのに、最近はなりふり構わず首相として発言するようになった、という彼の様子は、以前は北朝鮮当局が、ミサイルではなく衛星打ち上げ実験であるとか、核兵器開発ではなく原発の実験などという体裁を一応維持していたのに、最近はミサイル開発も核開発も公然と発表するようになっているのと似ている。

 また彼は、憲法改正について議論すべきという世論調査結果が出ていることを、憲法改正を推進する理由の1つとして挙げ、自民党は議論をする党、しかし野党は…という見解を示しているが、ならば前段で触れた、「桜を見る会について政府は妥当な説明をしていない」という世論調査結果も尊重し、自民党総裁として与党が予算委員会の開催や会期延長に応じるように指示するべきだし、この首相としての記者会見でも、これまでの「桜を見る会」が如何に妥当な会だったかを、自らの口で説明すべきなのに、その話題には殆ど触れていない。
 つまり安倍氏は、世論調査結果の自分にとって都合のよい部分だけをつまみ食いしているとしか言えない。


 彼らのような「ざんねんなせいじか」に国を委ねていたら、この国の社会はどんどん悪くなる。何故なら、彼らが都合の悪いことに目を向けない人達なのはもう誰の目にも明らかであり、都合の悪いことは隠し/放置することが目に見えているからだ。

このブログの人気の投稿

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになる

 攻殻機動隊、特に押井 守監督の映画2本が好きで、これまでにも何度かこのブログでは台詞などを引用したり紹介したりしている( 攻殻機動隊 - 独見と偏談 )。今日触れるのはトップ画像の通り、「 戦闘単位としてどんなに優秀でも同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになるわ。組織も人も特殊化の果てにあるものは緩やかな死 」という台詞だ。

フランス人権宣言から230年、未だに続く搾取

 これは「 Karikatur Das Verhältnis Arbeiter Unternehmer 」、1896年ドイツの、 資本家が労働者を搾取する様子を描いた風刺画 である。労働者から搾り取った金を貯める容器には、Sammel becken des Kapitalismus / 資本主義の収集用盆 と書かれている。1700年代後半に英国で産業革命が起こり、それ以降労働者は低賃金/長時間労働を強いられることになる。1890年代は8時間労働制を求める動きが欧米で活発だった頃だ。因みに日本で初めて8時間労働制が導入されたのは1919年のことである( 八時間労働制 - Wikipedia )。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。