日本では、何らかの罪の被疑者を捜査機関・警察が逮捕した場合、警察は逮捕した者の身柄を48時間以内に検察へ送致、つまり送検しなければならない。そして検察は送検から24時間以内に勾留/釈放/起訴を決定する必要がある。メディアで報じられるような事案の場合、そのほとんどは拘留が請求される。原則的に拘留できる期間は10日間だが、場合によって10日の延長が認められ、極めて重大な事件の場合、さらに5日延長が認められることもある。
しかし再逮捕することで拘留期間をどんどん伸ばしていくという手法を、警察や検察は頻繁に用いている。同一事件の逮捕・拘留は1度だけという原則があるのだが、実際には同じ事案なのに便宜上事件を切り分けることによって、原則以上の拘留期間延長を行っている。また、森友学園を巡る補助金詐欺の罪に問われた籠池夫妻の拘留期間は、およそ10カ月にも及んだ。本来は最大25日しか認められない筈の拘留期間が約10ヶ月にも及んだ理由は、「逃亡、証拠隠滅の恐れがある」からという話だった(神戸新聞NEXT|総合|籠池被告は10カ月 勾留期間に制限ってないの?)。
前述の神戸新聞の記事にもあるように現状では、基本的な拘留期間を超えて延長されるケースの方が寧ろ多く、1ヶ月以内に拘留を解かれるケースはおよそ2割程度でしかない。如何に規制が形骸化し原則と例外が逆転しているか、が次のグラフに表れている。
ただ、例えば2017年に発覚した、神奈川県座間市のアパートで9人の遺体が見つかった連続殺人事件(座間9遺体事件 - Wikipedia)のような事案であれば、捜査によって実態を明らかにする為には、それぞれの殺人について詳細を調べなければならず、全てをまとめて1つの事件として扱うと、25日では時間が足りないという状況も理解はできる。また、被疑者が捜査に協力的でない場合も、取調べの時間が足りなくなることが想像できる。しかし逆に言えば、捜査期間の思惑に沿った供述をしないと、「逃亡、証拠隠滅の恐れがある」とされ、拘留期間が不当に延長される恐れがあるとも言えそうだ。
昨日の投稿では、TBSの記事で紹介された自民党幹部が示したという
総理は十分に説明を果たしているという見解が、如何に合理性を欠いているかについて書いたのだが、「政権は自信「逃げ切った」 名簿流出なお警戒 桜を見る会 西日本新聞」によると、自民党幹部は
うまく逃げ切ったそして公明党幹部も
野党は弱い。首相が逃げ勝ったと述べたそうだ。 「逃げた」という表現が出てくるということは、自民党幹部も公明党幹部も、桜を見る会の問題は逃げなくてはならない問題と認識している、つまり政府や自分達の言い草は整合性に欠けているので、何とかやり過ごす/有耶無耶にしなければならない、と認識していると言えそうだ。自分達の説明に不備がないと自負しているならば「国民からの納得を得られた」などの表現になる筈だ。
今朝TBSで、自民党・森山国対委員長が
総理も本会議でも2回にわたって答えておられますし、国民の皆さんのご理解も頂きつつあるのではないかという風に理解していますと述べている場面が放送されていたのだが、TBS NEWS のサイトには何故か今もその件は掲載されていない。テレ朝ニュースをチェックすると、その映像を用いた記事が掲載されていたのだが、見出しは「閉会目前、政府与党は逃げ切る構え 野党手詰まりか」と、どこか他人事のようで残念さが漂う。
森山氏の主張は到底納得できるものではない。2回本会議で答弁すれば充分に説明を果たしたと言えるだろうか。重要なのは回数ではなくその中身だ。冒頭でも書いたように、民間人は逮捕勾留されると、整合性のある説明が出来なければ、場合によっては、整合性のある説明でも捜査機関の意に沿わない主張をすると、原則を無視して拘留期間が延長されるのに、首相の側近は説明の回数だけで「充分に説明を果たした」と主張する。勿論拘留期間の原則を超えた延長が適切か否かは、場合によって話が異なるだろうが、森山氏の話がまかり通るなら、また「上級国民と下級国民の扱いには差がある」なんて話が噴出するのではないか。
また、昨日の投稿でも紹介したように、先週末に行われた世論調査では「「桜を見る会」に反社会的勢力の関係者らが参加していたと指摘されていることについて、誰の推薦でどのような人物が招待されていたのか、政府は明らかにすべきだ」が64%と、「明らかにする必要はない」の21%を大きく上回っており、それまでの説明は不十分であるという結果が出ている。更に12/2の本会議での答弁についても、既に複数の矛盾・不審な点が指摘されている。森山氏は一体何を見て「国民の皆さんのご理解も頂きつつあるのではないか」と理解したのか、自分には到底理解できない。
にも関わらず、テレビ朝日はそう指摘するでもなく「野党手詰まりか」などと見出しに掲げているのである。これを他人事と言わずに何を他人事と言えばよいのか。
TBSもその後「与党側「対応に問題ない」 会期延長応じず TBS NEWS」という記事を掲載している。この記事では森山氏の
(名簿を)廃棄したというのは、ルールに基づいて廃棄をしている訳ですから、それは何ら問題はないと思っています
というコメントが紹介されている。BuzzFeed Japanが昨日「保存期間は”永久" 「桜を見る会」残されていた60年前の名簿が、教えてくれること」 という記事を掲載し、
「桜を見る会」の招待者名簿は、各省庁などの取りまとめをする内閣府が保存期限を2018年4月に、それまでの「1年」から「1年未満」へと変更したことと、見出しにもあるように、60年以上前の招待者名簿が国立公文書館に残されており、その保存期間は永久となっていることを紹介している。森山氏は「ルールに沿っているから問題ない」と言うが、果たしてそのルールは適切なのか。そのルールを決めたのは誰か。そんな視点が全く欠落しており、これ以上追求されたくない自分達にとって都合の良い解釈をし、それに基づいて示された見解と言わざるを得ない。
自分が見たTBSの12/4・朝の番組では森山氏だけでなく、自民党の参院幹事長で前経産大臣である世耕氏が、森山氏と同様の趣旨の発言をする映像もあったのだが、前述の記事の映像にはそれは含まれていなかった。「自分の見間違いか」とも思ったが調べてみると、自民党公式サイト「役員会後 二階幹事長記者会見 | 幹事長記者会見 | 記者会見 | ニュース | 自由民主党(2019年12月2日(月)17:43~17:53)」には、世耕氏の
本日の本会議で、安倍総理は桜を見る会の質問に対してしっかりと答弁していた。前回の本会議でも同様に説明しており、国会に対して十分な説明をしていると思う。という発言が紹介されており、間違いではないことを確認した。
世耕氏については、NHKが11/14に「「桜を見る会」 動画に「招待枠」などの会話 安倍首相と世耕氏 | NHKニュース / インターネットアーカイブ」で、官邸Webサイトで公開されている2年前の「桜を見る会」の動画に、安倍首相と世耕参議院幹事長の会話する様子があり、「招待枠」ということばや世耕氏の地元支持団体名が会話の中にでてくることを報じている。
同記事では、世耕氏が取材に対して、
『ひまわり』(支持団体)の人を推薦したことはあるが、記録に残っていないので、いつ推薦したのかはわからない。推薦したのは、地元でボランティア活動をしたり、自治会婦人部の活動をしたりと、地元に貢献した人で、基本的には事務所と地元の後援会などが相談して厳選して推薦していると述べたともある。つまり世耕氏自身も、桜を見る会の問題の追求を好ましくないと考える立場なのだろう。だから「説明はもう充分」などと言って、幕引きを促しているのだろう。
これは世耕氏に限った話ではなく、現政権になってから倍増していた招待者数の内、自民党関係者の推薦枠が6000人にも上っていたことが既に明らかになっており(桜を見る会 首相推薦枠は1千人、自民は6千人 - 産経ニュース)、つまり、自民党議員らは凡そ誰もが桜を見る会の問題の追求を好ましくないと考える立場だろう。「野党「首相は立てこもり」批判 国会会期延長要求で一致 - 毎日新聞」なんて話もあるが、自民党が予算委員会開催に応じない理由は首相の立てこもりだけでなく、首相が追求されると自分達にも火の粉がかかる恐れがあるから、だろう。首相を擁護する体裁で自分達も責任から逃れようという魂胆なのだろう。
「桜を見る会名簿、電子データの復元調査を菅長官が否定:朝日新聞デジタル」菅官房長官も昨日の会見で、
削除された今年の招待者名簿の電子データについて、復元できるかどうか第三者の専門業者に調査を依頼する可能性を問われ、「それはない」と否定したそうだ。また記事には、
「予備データを使えば、(共産党の)宮本徹氏の資料要求に応えられたのではないか」と問われると、「それは承知していない」と述べるだけだったともある。つまり菅氏は「私たちの政権は、これまでの桜を見る会の妥当性を説明するつもりはない」宣言したにも等しい。そして都合が悪いと「承知していない」「発言は控える」だ。菅氏は政権のスポークスマンである。この彼の姿勢を見ても、自民党の議員らが「十分に説明を果たしており、これ以上説明の場は必要ない」と考えるなら、言葉は悪いが、目と耳が腐っているか思考力が著しく低下している、つまりボケている、としか思えない。
今日の投稿の話とは少し異なる話題ではあるが、昨日報道された「桜を見る会の問題」関連の報道として、以下の3つも記録しておく。
「桜を見る会」“招待疑惑”、マルチ商法「被害者」国会に TBS NEWS
ジャパンライフ“内部文書”を野党追及 TBS NEWS
悪夢と否定しながら…安倍首相の「民主党だってやっていた」論法 - 毎日新聞
日ごろから旧民主党政権を「悪夢」と全否定しながら、安倍首相の支援者らを「首相枠」として会に招いたことがばれると「民主党もやっていた」と言い出す。民主党政権の「文書黒塗り」を批判しながら、自分たちは「黒塗り」にする。さすがに安倍さん、虫が良すぎやしませんか?