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陰謀・共謀・結託・慣れ合い・談合


 トップ画像は、1990年代パンクブームを牽引したバンド・オフスプリングが、2000年にリリースしたアルバム・Conspiracy of One のジャケットだ。Conspiracy は「陰謀・共謀」「結託」「慣れ合い」「談合」などを意味する。このアルバムの13曲目には同タイトルの曲がある。「みんなの気付かないところで、誰かの陰謀が渦巻き何かが起きていて、誰もがその悪い影響を受けている」のような内容の歌詞だ。
 この曲の背景をよく知らないが、所謂陰謀論を茶化した内容にも見えるし、Red over White という星条旗を示唆するような歌詞や、サビに Nobody wins という歌詞もあるので、権力者が国民の知らない間に、国民が一切得をしない計画を進めている、のような事を歌った曲にも聞こえる。


 何故冒頭でこのアルバム・曲に触れたかは後で分かる。

 正月にYoutubeサーフィンをしていてミンナッチというチャンネルを見つけた。リサイクルショップで買ってきたジャンク品のデジタルカメラをレビューするチャンネルだ。初期はジャンクPCも扱っていたようだが、最近はカメラに特化している。
 レビュー動画はYoutuberのスタイルとしてスタンダード
なタイプの1つだ。人気が高いのはやはり最新の商品を扱った動画だ。以前はmonoマガジンのような雑誌が担っていた分野だが、最近はメーカーが登録者数の多い有力なYoutuberにサンプルを貸し出したり提供したりして、動画に取り上げてもらうことでも商品紹介・周知が行われている。寧ろ雑誌よりも比重は大きくなっているかもしれない。自分がよく見るこの手のYoutubeチャンネルは、日本のYoutuberの草分け的存在であるジェットダイスケさんのチャンネルだ。
 ジェットダイスケさんなどのように多数の登録者数を抱えていれば、サンプル貸与・提供が受けられるので、自分で商品を買わずとも新商品を多数動画で紹介することが可能だが、ミンナッチさんはチャンネル開設からまだ約1年半で、 登録者数もこの投稿を書いている時点で6000人強だ。既に収益化できる登録者数1000人は超えているものの、その数は決して多いとは言えない。何かしらのコネクションでもなければ新商品サンプル貸与・提供を頻繁に受けるのはまだ難しいのではないだろうか。

 ミンナッチさんは自分のスタイルを「ジャンク遊び」と称しており、恐らくYoutubeの為にジャンク品を買って紹介しているというよりも、元々お金をかけずに幾つもの商品を楽しむことが出来るジャンク品漁りが趣味で、それを動画化しているのだろう。自分もリサイクルショップ巡りが好きだ。しかし、ジャンクデジカメ売り場にあるのは5-10年、若しくはそれ以上に古い機種ばかりで、以前は「一体誰がこんな使い物にならないものを買うのか」と思っていたが、2010年代以降のスマートフォンの台頭によって、数年前からデジタルカメラは高スペック商品に傾倒しており、また、1990年代の黎明期、2000年代の普及機を経て、現在は成熟期にある状況なので、数年前の機種でもまだまだ実用に耐える製品も多い。そして最近また写ルンですなどが注目を浴びているように、古いカメラやレンズの写りの悪さは「風味」として肯定的に捉えることも出来る。
 プロが仕事用に使う等でなければ、数年前の中古価格の安いデジタルカメラでも充分に楽しむことが出来る、ということは、ミンナッチさんの動画からもよく分かる。特にこの、中古価格たった3300円のミラーレスレンズ交換式カメラの動画を見て、自分もジャンクカメラに手を出してみたくなった。


 ミンナッチさんが扱うカメラは中古価格数百円から数千円で、中には1円落札なんてのもある。これなら自分のような裕福ではない労働者階級でも気軽に楽しむことが出来るだろうから親近感も湧くし、誰でも無理せずに動画をコンスタントに投稿することが出来るだろう。勿論、誰でもミンナッチさんのような完成度の動画を簡単に投稿出来る、という意味ではない。
 先行する有力Youtuberのように、サンプル貸与・提供を受けて新製品をコンスタントに紹介出来なくても、面白いレビュー系動画をお金をかけずにコンスタントに投稿する術がある、というのは、他にも、例えば中古のバイクや車を買って整備・カスタムし、それを売って新たなジャンク車を買って動画にしているチャンネルなどからも感じている。


 ジェットダイスケさんは以前から、
  1. 動画に商品を取り上げることでメーカーから収益を受け取っているであろう、タイアップで紹介をする動画には、冒頭に予め「この動画は○○の提供でお送りします」というカットを入れている
  2. 収益は発生しないが、自分で購入したわけではなくサンプル貸与・提供を受けて作成した動画では、その旨をキッチリ表現している
  3. 自分で買ったものは買ったと宣言して動画にしている
しかし少し前まで、ジェットダイスケさんのようにこの3つのどれに該当するのかを明確にせず、曖昧なまま動画を投稿するチャンネルは決して少なくなかった。2000年代後半から所謂ステルスマーケティングの問題がしばしば指摘されてきたにもかかわらず(ステルスマーケティング - Wikipedia)。
 しかし2019年の秋に、お笑い芸人・ミキが1ツイート25万円でPR表記なしの宣伝ツイートをしていたことが話題になってからは状況が変わりつつあり(吉本興業「ミキ」が1ツイート25万円でPR表記なしの宣伝ツイート 依頼した京都市は「誤認させる投稿ではない」とステマ認めず - ねとらぼ)、


他のSNSの傾向はよく分からないが、この件以降Youtubeでは、タイアップやサンプル貸与/提供を受けた動画投稿であることを明示した動画が増えたように思う。何人かのYoutuberは「明確にしないといけなくなった」という旨のことを言っていたので、恐らく提供する側も「提供を受けたと明示して」と注釈した上で提供するようになったのではないだろうか。

 提供を受けた商品だろうが、自分で購入した商品だろうが、いいと思ったモノを良いと紹介することには何の問題もないのだが、「いいと思った」というのはあくまでも主観なので、タダで手に入れたから「いいと思った」のかどうかが分かり難い。だから誤解を生まないように、商品提供を受けた旨を明確化するのは大事なことだろう。無償で提供を受けた商品の短所に触れず長所だけを紹介すれば、それはある意味での「癒着」であり、「結託」「慣れ合い」とも言えそうだ。これがこの投稿の冒頭で Conspiracy of one を取り上げた理由である。


 癒着・結託・慣れ合いと言えば、1/10の首相動静が話題になっている。「首相動静(1月10日):時事ドットコム」によると、
午後6時45分、東京・京橋の日本料理店「京都つゆしゃぶCHIRIRI 銀座京橋店」着。曽我豪朝日新聞編集委員、山田孝男毎日新聞政治部特別編集委員、小田尚読売新聞東京本社調査研究本部客員研究員、島田敏男NHK名古屋放送局長、粕谷賢之日本テレビ報道局解説委員長、石川一郎テレビ東京ホールディングス専務、政治ジャーナリストの田崎史郎氏と会食。
とある。恥ずかしいことだが、日本の大手メディアの人間が首相と会食するのは決して珍しいことではない。自分もこれを取り上げたツイートがタイムラインに流れてきても、「またか…」としか思わなかった。
 この会食の翌日、安倍氏は中東訪問へ出発した(安倍首相、中東歴訪に出発 イラン問題で仲介外交:時事ドットコム)。TBSは今日の昼のニュースで「安倍首相 中東歴訪、サウジ国王・皇太子と会談 TBS NEWS

安倍総理にとって、中東地域で最も影響力を持つリーダーらと地域情勢について率直な意見交換を行ったこの日が、中東歴訪のハイライトと言える1日となりました。サウジアラビアとイランは中東地域の覇権を争う対立関係にあります。こうしたなか、12日の会談ではサウジアラビア・イラン両国と友好関係にある日本が中東の緊張緩和に向けた「橋渡し役」を果たすことができるかが注目点となりました。
と、まるで、現在の中東情勢を改善するという重大な期待が世界中から安倍氏に寄せられている、とでも言いたげに、安倍氏の中東訪問を伝えている。TBS NEWSのサイトには、今朝のワイドショーの中で報じた「サウジ皇太子「粘り強く多角的」 日本評価 TBS NEWS」という記事も掲載されている。TBSは安倍氏の中東への出発に関する記事「安倍首相、サウジなど中東3か国歴訪へ出発 TBS NEWS」も掲載しており、1/11-13の3日間で計3本の関連記事を掲載した。

 昨日の昼のニュースはテレビ朝日を見ていたが、テレビ朝日も同じ様な報じ方をしていた

中東緊張緩和に対話を…安倍総理サウジアラビア訪問

訪問先にサウジアラビアを選んだ理由の一つがバランスです。安倍総理はイランとの関係強化に力を注いできたからこそ、イランと対峙(たいじ)するサウジアラビアへの訪問が欠かせないのです。安倍総理は昨年6月、日本の総理大臣として41年ぶりにイランを訪問し、最高指導者のハメネイ師とも会談しています。さらに、12月にはロウハニ大統領が来日するなど、太いパイプを築いています。
テレビ朝日はTBSよりも更に多く、7本もの安倍氏中東訪問関連記事を掲載している。

安倍総理、中東3カ国へ 自衛隊派遣に理解求める

安倍総理がリヤドに到着 中東情勢安定化に向けて

サウジアラビア国王と会談へ 安倍総理“対話”強調

安倍総理がサウジアラビアでサルマン国王と会談

安倍総理がサウジ皇太子と会談 外交努力を訴え

総理とサウジ皇太子、中東安定へ「対話重視」で一致


どれも内容は殆ど変わりがない。会談の相手が異なったりはしているが、強調しているのは
  • 安倍総理はアメリカにもイランにもくみしない立場
  • 日本はイランとサウジアラビア双方と友好関係にあり、安倍総理は中立的な立場からイランとの対話を促した
  • 安倍氏が中東情勢の安定化に向けた外交に努めた
ということだ。複数のサウジの王族と会談をしたと個別に報じているのは、安倍氏がそれだけ影響力がある・認められている人物だ、と強調したいようにしか見えない。中東情勢安定化を訴えたと強調しているが、そんなのはどこ国の指導者も訴えていることだし、今回の対立の当事者はイランと米国なのに、なぜ安倍氏は当事者ではなくサウジに訴えているのか。アメリカに近くイランとは対立する立場のサウジに訴えることが全く無意味とは言わないが、的外れ感は否めない。それをテレビ朝日がこんなにも強調しているのを見ると、まるで金 正恩氏を褒め称える朝鮮中央テレビかのような印象すら感じられる。
 安倍氏の中東訪問は1/15までの予定なので、この手の報道は更に増えるだろう。

 他の局の傾向は調べていないし、直前の安倍氏とメディア関係者の会食にテレビ朝日やTBS人間が直接出席はしていないが、同社らと強いつながりのある朝日新聞と毎日新聞の幹部が出席していることから、会食で安倍氏がメディア関係者に「中東訪問の妥当性を強調してね」と、明確にか暗示的にかは定かでないが、お願いしたんだろうと想像してしまう。今もTV各社が桜を見る会の問題なども積極的に報じていれば、そんな印象は持たなかったかもしれないが、年明け以降TV各社は殆どそれに触れないので、そのような癒着や結託、共謀を感じずにはいられない。
 ツイッターを見ていると、自分は見ていないが、1/12のNHK・日曜討論では90分の放送時間の内、他の党はおよそ10分程度がそれ以下にも関わらず、安倍氏に30分もの発言時間を与えていたそうで、「討論」なんて名ばかりだ、という指摘が多く見られる。


 もしかしたら、自分が感じている大手メディアと首相・政府の癒着や結託、共謀は、思い過ごしかもしれない。しかし「李下に冠を正さず」ということわざがあるし、安倍氏自身も2017年7月の衆院予算委員会にて、
『李下に冠を正さず』という言葉がある。私の友人が関わることだから疑念の目が向けられるのはもっともなことだ。常に国民目線に立ち、丁寧な上にも丁寧に説明を続けたい
と述べている(【閉会中審査】〈速報〉衆院で集中審議始まる 安倍晋三首相「李下に冠を正さず」「疑念の目が向けられるのはもっともなことだ」 - 産経ニュース)。にも関わらず、なぜ首相も大手メディア幹部も、癒着を疑われかねない会食を続けるのか。


 安倍氏の口から出まかせはもうウンザリするくらい目の当たりにしているので、特に大きな驚きはない。しかし大手メディアがそれに迎合しているとしか思えない状況は、かなり深刻だ。今やYoutuberですら李下に冠を正さずを実践しているのに、首相や大手メディアがそれを解さずに、会食を続けているのはかなり深刻な状況だ。

 日本は先進国でないどころか、近代国家・民主主義国家とすら言えないような領域に足を踏み入れているのではないだろうか。

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