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不要不急の定義はない


 オリンピックの延期が決定した途端、東京での感染者数が急に増え、都知事が「この週末の不要不急の外出自粛要請」を始めた。都知事は3/23の会見でも「今後3週間がオーバーシュートが発生するか否かの大変重要な分かれ目」とも言っていた。その時思った。2/24に政府専門家会議が、そして2/29に首相が会見で「これからの1-2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際」などと言っていたが、その対応は失敗に終わったんだな、と(【新型コロナ】油断は禁物。日本の花見を海外メディアが報道「警告にも関わらず…」 | ハフポスト / 新型コロナ、瀬戸際いつまで? 政府の「1~2週間」曖昧:時事ドットコム / )。

【速報】東京都・小池知事、今週末の不要不急の外出自粛を要請 TBS NEWS

東京・小池都知事、今週末の外出自粛を要請 TBS NEWS

東京「重大局面」、1日で41人感染確認の意味とは? TBS NEWS


 昨日の都知事の会見にはツッコミたいことがいくつもある。
  • 週末の不要不急の外出自粛を都民に要請
北海道での要請の際にも同じことを感じたが、ウイルスには週末も平日もないのになぜ「週末の」なのか。都知事は「平日も仕事は出来るだけ自宅で」とも言っているし、週末に外出を控える為の準備をする期間も必要、ということも理解はできる。しかし、週末商店に営業自粛を求めているわけでもなく、あくまで「不要不急の」外出の自粛要請であり、ならば週末に限らず今日からすぐに「不要不急の外出を控えるように」とするべきなのではないか。
  • 夜間の外出も控えてほしい
これも同様で、ウイルスには昼夜は関係ない。なぜ夜間の外出を強調する必要があるのかよくわからない。単に「不要不急の外出」とすれば、当然昼夜関係なく、という意味で多くの人が理解するだろう。「夜間の」と強調すれば、「あれ?日中は控えなくていいの?」と感じる人も出るだろうから、間違ったニュアンスを醸す恐れがある。
  • 都内のライブハウスに対し、営業自粛の協力を求める
これも、なぜライブハウスだけを強調したのか理解に苦しむ。現在ライブハウスやクラブなどは新型ウイルスの影響によって経営が危機的状況に陥っているし、それは音楽やイベントを生業にしている人達も同様だ。自粛を求めるなら同時に損失に対する援助も行うべきだ。自粛を求める”だけ”でも無責任なのに、更にあたかもライブハウスだけが危険かのようなレッテル貼りをするのは、輪をかけて無責任としか言いようがない(都知事、週末の外出自粛要請 感染爆発「重大局面」―新たに41人確認・新型コロナ:時事ドットコム)。


 この都知事の会見を受けて、都内のスーパーマーケットなどでは既に、普段よりも多くの買い物をする客でごった返しているようだ。

都内スーパーに“買いだめ”客、「物流止まらないので慌てないで」 TBS NEWS


 それを伝えるこのTBS NEWSの記事では、東京都の
不要不急に関する定義はないが、必要な食料品を買いに行くことに自粛を求めるものではない
という見解を紹介している。都知事の言う「不要不急」が一体どんなことを想定したのかを明らかにせず、不要不急の外出やイベント自粛を求める、なんて矛盾に満ちていないだろうか。

 前述したように、ライブハウスやクラブ、その他イベントを生業にしている人達からは、かなり多くの悲鳴が上がっていて、 共産党の小池氏も


とツイートしている。
 このツイートを見るまでもなく、SNS上には芸能・演劇・音楽などに従事している人達、そして観光業関連の人達、日給/時給で働く非正規雇用の労働者などから、多くの悲鳴が上がっているのは、SNSを見ていれば一目瞭然だ。
 また、

新型コロナ 欧州、補償広がる 仏 観光従事者、時給の7割 /英 休業社員、上限月32万円 - 毎日新聞

英首相、ベーシックインカム検討 コロナ対策で一時的に (写真=ロイター) :日本経済新聞


など、他国での、外出禁止・自粛要請の負の影響の受け皿となる補償、に関することが報じられているが、日本政府や自治体からは聞こえてくるのは自粛要請だけで、セットで行う必要が確実にある補償の話が殆ど聞こえない。だから日本政府や自治体対応はかなり無責任に見える。無責任に見えるというか、無責任としか思えない。

 前述のように都知事はライブハウスに営業自粛を求めたが、この約2ヶ月新型ウイルス感染拡大の影響で既に、集客・収入が減っている業界は、すぐにでも少しでも利益を上げなければ、従事者たちが食うにも困ることになる。だから補償もなく自粛を求められても、自分たちが営業を行うことは「不要不急」ではなく「必要至急」だ、と考えるのではないだろうか。自分が当事者ならば間違いなくそう考える。


 この国は何時から困った人を見捨てる自己責任至上主義の国になってしまったのだろう。いや、自己責任至上主義の国になってしまったのではなく、昔からずっと変わらず自己責任至上主義で今もそれが続いている、というのが実情かもしれない。

 税金はヤクザの上納金ではない。ヤクザの上納金は上層部が末端から金を吸い上げる仕組みで、上層部がどう金を使おうが下々の者達は意見も批判も出来ない。勿論稀に不満を抱いた者によるクーデターが起きて組織が割れることもあるが、結局新たに支配者が生まれるだけで、上納金の意味が変わるわけじゃない。
 税金はヤクザの上納金とは性質が異なる。国や自治体がどう税金を使うかについて、有権者・納税者は意見し批判することが出来る。出来なければ、若しくはしなければ、税金はヤクザの上納金と一緒になってしまう。

 昨年末に現政権は「反社会勢力は定義できない」と閣議で確認した(社説:反社会的勢力の定義 禍根残すゆがんだ見解だ - 毎日新聞)。「不要不急の定義はない」という東京都との共通性も感じるし、国民への補償に消極的な姿勢を見ていると、政権や自治体自体が反社会勢力にも似た様相であるようにも思えてくる。
 反社会勢力を定義してしまうと、自分達が当てはまる恐れがあるから、現政権は「定義できない」としたのではないか?という気さえしてくる。


 トップ画像は、Photo by Louie Martinez on Unsplash を使用した。

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