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「誤解を招いた」の大半は不誠実の証


 全ての「誤解を招いた」が嘘だとは言わない。だが、政治家のそれは99%嘘である。この数年、政治家が発言を問題視されたり批判されたりした際に、かなりの高確率で用いられるのがこの「誤解を招いた」だ。あまりにも誤用が多く、もうこの表現は「私は不誠実である」と言っているにも等しいものに成り下がってしまった。

 例えば、4/19の投稿でも紹介したように、2018年7月、気象庁が大雨による災害発生を強く警告する中で、首相を始めとした自民党議員らが議員宿舎で飲み会を開いていたことを批判された際に、その様子をSNSへ投稿していた、現在新型ウイルス対策を担当する大臣の西村氏は、「大雨被害が出ている最中に会合をやっているかのような誤解を与えた」と、まるで宴会はやっていなかったがそう思われてしまった、という趣旨の言い逃れを画策している。


 あるアイドルがツイッターへ「HKT(48は)いつの間にこんなブスだらけになった…?」と投稿したことが話題になった。

SKE都築里佳が謝罪「不適切な投稿を行なった」 - AKB48 : 日刊スポーツ


 自分はこのアイドルのこともよく知らないし、当該グループのこともよく知らないが、この程度の投稿はSNS上には山ほど存在している。勿論決して褒められた投稿ではないが、果たしてここまで大騒ぎになる程問題視することだろうか、という風に感じている。
 投稿は褒められた内容ではなかったが、彼女は自分の行為を認めてSNSへ次のような投稿もしている。


 発言や行為の是非を問われた政治家のように、 「私がHKTはブスばかりと言ったかのような、誤解を招いたなら謝る」 などと言い逃れようとしなかっただけ彼女は大人でえらい。いや、えらくなくて普通か。今の政治家、特に副首相を始めとした自民党の面々はそんな普通のことすら出来ない人達ばかりだ。24歳のアイドルが出来ることなのに、政治家・国会議員・大臣という立場の人達がそれを出来ない。その普通のことすら出来ない政治家の大多数は、政府を構成する与党の政治家である。


 そんなことをツイートしたそばから、「誤解を招いた」と言う政治家がまた現れた。

広島知事、県職員の給付金10万円活用を撤回 「誤解与える表現だった」 - 毎日新聞


 新型コロナウイルス感染拡大によって経済的な悪影響を受けている国民への対応として、政府が支給することを検討している10万円について、県職員が受け取った分を県内事業者の休業支援などに活用する考えを示していた湯崎 広島県知事が(広島県職員への10万円給付、コロナ対策に活用 湯崎知事「財源足りず…」 - 毎日新聞)、批判を受けて「強制的に徴収するような誤解を与える表現だった」と言い出した、という内容である。
 だが、「「県職員の給付金、活用せず」批判受け一転、広島県の湯崎知事が発言撤回【新型コロナ】 | ハフポスト」には、
湯崎知事は「県として直接(県職員の給付金を)活用する考えはない」と明言。一方、財源確保のため、県職員に何らかの協力を要請することを選択肢の一つとして検討する方針という。
とある。つまりこの知事は何を批判されたかをよく理解していない。それなのに「誤解を招いた」という表現を用いればそれが謝罪になると勘違いし、お茶を濁しただけだ。
 県知事という立場で部下の県職員に対して「10万円を県予算に供出して欲しい」と言うのは、その体裁が要請であっても、実質的にはかなり強制に近い。それはパワハラのメカニズムを理解していれば容易に想像がつくことであり、たとえそれが10万円の供出でなかったとしても同じである。
 因みに湯崎氏は自民党所属の政治家ではない。無所属だが2017年の知事選で自公/民進の公認を受けて、共産公認候補を破り3選を果たした人物である。


 昨日「誤解を招いた」発言をしたのは広島県知事だけではない。首相が補佐官を使って同じ様なことをしている。

首相「高くない」と火消し 物議の「アサヒノマスク」大阪・泉大津市長が官邸に - 毎日新聞


 4/20の投稿でも触れた、会見で朝日新聞の記者に「布マスク(の各世帯2枚配布という施策)や星野源さんの動画でも批判を浴びているが、自身でどのように評価しているのか」と問われた首相が、「御社のネットでも、布マスク、3300円で販売しておられたということを承知しておりますが、つまりそのようなこの需要も十分にある中において、我々もこの2枚の配付をさせていただいたと、こういうことでございます」と述べたことで、一部の政権/首相支持者らが、朝日新聞はぼったくりマスクを売っているのに墓穴を掘った、かのようにSNS等で吹聴しており、また、そのネタ元が所謂ネトウヨ御用達のWebサイトだったのでは?という話もあり、その種のサイトの情報がネタ元でなかったとしても、安倍がその種のサイトと同種の主張を繰り広げたことには違いない、という件に関する記事である。
 この件で風評に晒された、朝日新聞のサイトでマスクを販売していた繊維メーカーのある、大阪府泉大津市長が官邸を訪れて泉大津製のマスクを手渡し、「日本のものづくりの技術が結集しているものだと認識している。ともに頑張りましょう」と述べた、という内容だが、実際には「いい加減なことを言ってくれるな」という抗議の為の官邸訪問でもあったのだろう。でなければわざわざ直線出向く必要性は低い。
 記事によれば、これに対応した木原 稔首相補佐官は
決して高いと言っているわけではなく、価値あるものだ
とする首相のメッセージを泉大津市長の南出氏に伝えたそうだ。つまり、安倍は自分が矢面に立つこともせず、補佐官に「誤解を招いた」と間接的に言わせて事態の収拾を図ろうとしている、ということだ。首相にその認識があるかは怪しいが、官邸内には、「誤解を招いた」は「私は不誠実である」と言っているにも等しいものに成り下がっており、印象が悪いと認識している人がいて、その表情を直接用いることを避けたのだろう。


 24歳のアイドルが出来る、自身の行いを認めて詫びる、ということが出来ない者が、知事や首相をやっている。そんな国の未来は明るいだろうか。若い人こそよく考えて行動し、参政権を積極的に行使しなければ、間違いなく不利益を被ることになる。人口構成を見ても、現在日本の有権者のボリュームゾーンは40代と60代であり、ただでさえ30代以下の声は反映され難いのだから。


  トップ画像は、Photo by Annie Spratt on Unsplash を使用した。

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